HiGH&LOW THE WORST X : インタビュー
中本悠太(NCT 127・YUTA)、映画初出演作「HiGH&LOW THE WORST X」で見せたストイックな生き様
人気バトルアクションシリーズ「HiGH&LOW」(通称ハイロー)と、不良漫画の金字塔「クローズ」「WORST」(原作:高橋ヒロシ氏 ※高は、はしごだかが正式表記)が、奇跡のクロスオーバーを果たした映画「HiGH&LOW THE WORST」(2019)。9月9日から公開されるシリーズの続編「HiGH&LOW THE WORST X」には、新たに、世界的に活躍するグローバルグループ「NCT 127」の中本悠太(YUTA)が参戦している。
本作で、映画初出演にして初演技に挑んだ中本悠太。演じたのは、川村壱馬(THE RAMPAGE)扮するメインキャラクター花岡楓士雄と対峙する、圧倒的な喧嘩の強さを誇る須嵜亮だ。アクション監督を務めた鈴村正樹は、「役者トレーニングを1回もしていないのに、初対面のときから須嵜のアクションがほぼ身体に入っていて驚がくしました。パンチや蹴りの打ち方も、短期間でみるみる上達していった。多くの俳優さんと仕事をしてきましたが、正直あそこまでの人は見たことがありません」と、そのストイックな役づくりを絶賛している。
このほど実施したインタビューでは、中本悠太の「HiGH&LOW」シリーズにかける思い、役と向き合う真摯な姿勢、本シリーズの魅力とも通じる、アーティストとしての熱い生き様が見えてきた。(取材・文/編集部)
「HiGH&LOW」シリーズの舞台・SWORD地区の鬼邪(おや)高校の頭をはる楓士雄は、数々の伝説を持つ最強の男・ラオウ(三上ヘンリー大智)に会うため、鈴蘭男子高校を訪れる。その頃、えんじ色の学ランを着た“血の門”と呼ばれる瀬ノ門工業高校の頭・天下井公平(三山凌輝/BE:FIRST・RYOKI)は、最強の男・須嵜亮の力を手に入れ、さらには鎌坂高校(通称カマ高)と江罵羅商業高校(通称バラ商)を傘下に加え、三校連合を結成。鬼邪高の高城司(吉野北人/THE RAMPAGE)と轟洋介(前田公輝)は、連合の怪しい動きをいち早く察知するが、連合による“鬼邪高狩り”が突如始まる。急襲され、圧倒的不利な状況に立たされた楓士雄はやがて、須嵜との頂上決戦に身を投じる。
――出演が決まったときの思いと、「NCT 127」のメンバーの皆さんからの反応を教えてください。
「男なら誰でも泥臭くて、拳を交えるような映画や漫画に憧れがあると思います。『HiGH&LOW THE WORST』は、そういうジャンルのなかで、いま一番熱いじゃないですか。ですから、このお話を頂いたときに、ふたつ返事で『やりますらせてください』と言いました。僕が映画に出ることを、メンバーには恥ずかしくて言っていなかったんですが(笑)。ビジュアルや映像が解禁されていくなかで、『楽しみにしてるよ』『良い感じだね』という言葉は頂きました。皆一言ずつ言ってくれたんですが、そのなかでもMARKとJUNGWOOは、情報解禁があるたびに、いじってきている感じですね(笑)」
――「HiGH&LOW」シリーズや前作に、どのようなイメージがありましたか。
「シリーズを全部見て、譲れないもののために拳を交えるという熱い部分は変わらず、現代の雰囲気も取り入れている印象があります。ヤンキー同士の戦いにはおさまりきらないくらい豪華で壮大なイメージがあって、『HiGH&LOW』でしか作れない世界観だと思いました。そもそもNCT 127・YUTAとしてではなく、中本悠太として、こんなに大きい作品に参加させて頂くことが初めてだったので、やっぱりプレッシャーや緊張感はありましたね」
――悠太さんのおっしゃる通り、初めての映画で、演技やアクションにも挑戦されましたが、やってみていかがでしたか。
「めちゃくちゃ楽しかったです!撮影に際して、ふたつ言われたことがありました。ひとつは、感情の表現や言葉について。例えば、怒らなければならないセリフで、顔を歪めてしまったり、強く言ってしまったりするんです。ただ(平沼紀久)監督に、『そういう演技をしなくても、本当にそう思っていたら、言葉に正直なニュアンスが出てくる』と教えて頂きました」
「もうひとつは、僕らはダンスをやっているので、アクションも動画を見て、『これくらいなら、見て動きを覚えられるな』と思っていたんです。ですがいざやってみると、ダンスよりもさらに、相手と息を合わせないといけない。僕らはダンスのなかで、止まる動きをすることもあるんですが、本当に倒したい相手にパンチをするときは、(動きが止まったりはしないので)『ダンスとは違うよ』と、アクション監督の鈴村さんに言われました」
――劇中では寡黙でクール、そして異次元の強さを誇る男・須嵜亮を演じられました。“瀬ノ門のナンバー2”として、天下井を支える役どころ。役づくりで意識されたポイントを教えてください。
「須嵜は、何かを抱えているキャラクター。監督にも言われたんですが、しゃべらないシーンも多いので、何かやろうとする自分をまずは一旦消して、『なぜこういう動きをしているのか』など、『なぜ』と考え続けて、演技をしました」
――劇中で須嵜と天下井は、深いつながりを感じさせるものの、主従関係のような、複雑な間柄にあります。天下井役の三山凌輝さんとの裏話があれば、教えてください。
「天下井と須嵜は、今回のキーパーソンですよね。監督が大切なシーンの前には入り時間を早めてくれて、『一緒に練習しよう』という時間をとってくださったんです。凌輝はそもそも『NCT 127』のファンでいてくれていて、最初に『すごいファンです』と声をかけてくれたんですよ。互いに音楽活動の話で盛り上がってから、仲良くなった気がしますね」
――川村壱馬さん演じる楓士雄とはライバルのような間柄で、終盤では壮絶な闘いを繰り広げました。何かお話されたことはありますか。
「『なぜ壱馬くんがこの映画のメインキャラクターを演じているか』ということが、すぐにわかりました。立ち振る舞いなど、壱馬くんに惹かれる要素や、ついていきたくなる魅力がたくさんありました。壱馬くんだけど楓士雄に見えるときもあるし、楓士雄だけど壱馬くんに見えるときもあるし……」
「最後のシーンでは、『互いに当たっても、カットがかかるまでやろう』という話はしました。『ガチでやる』ということを僕も受け入れて、壱馬くんも受け止めてくれて。やっぱり前作から出演されている役者の皆さんが、行動で見せてくださる場面が多かったので、自分も大切なことを吸収するために、ついていきました」
――出演が発表された際に、「男なら熱い気持ちをぶつけ合うことへの憧れがあると思います」とおっしゃっていました。実際に熱い思いをぶつけ合った経験はありますか。
「いま一緒にいる(『NCT 127』の)メンバーとの間で、めちゃくちゃありますよ。自分の夢のために集まって、価値観や曲げられないものがそれぞれあって、言葉が通じないなかでも、作品を一緒に作る環境があって。練習生の頃には互いに、ケンカや言い合いもしました。ただ、そのケンカはただのエゴじゃなくて、本当に熱い思いをぶつけ合った、必要なものだったと思います」
――須嵜は、過去の葛藤を抱えながら生きています。悠太さんのこれまでの人生のなかで、悲しみや怒りなど、マイナスな感情を乗り越えたエピソードを教えてください。
「実際に『自分って、ほかの人より強いのかな』と思っていた時期もあるんですが、いまになって思えば、自分を理解してくれて、自分のわがままを受け止めてくれる人が、絶対にそばにいたんですよね。『一緒に戦う仲間がいれば、それで十分じゃねぇか』という楓士雄のセリフがあります。僕も何かを乗り越えられた理由やきっかけは、大切な人や仲間やファンがそばにいてくれたからだと思うんですよ。やっぱり、周囲の人の力が1番強いんじゃないかなと思いますね」
――今後の俳優業への思いや、挑戦してみたいジャンルや役があれば、教えてください。また、本作を通して、俳優としての強みは見つけられましたか。
「ずっと言っているんですが、めちゃくちゃサイコパスな役をやってみたいです。もちろん王道な作品も良いなと思うんですが、アクションも入りつつ、サイコパスが出てくるようなストーリーをやってみたいですね。俳優としての強みは、まだ見つけられていないです。今回演じた須嵜は、どこか自分とリンクする部分があって、めちゃくちゃ似ていないタイプではなかったので、入りやすかったんです。本当の意味で、自分とは真反対の役を演じたときに、役者としての何かが感じられると思います。今回は、現場の雰囲気や皆に助けられた部分が大きかったです」
――最後に、夢を叶える秘訣を教えてください。以前は、「経験してみること」とおっしゃっていました。
「夢を好きでいることが、1番良いのかもしれないですね。これまで、ファンや周囲の方が助けてくださるなかでやってこられたんですが、『やめたいな』と思うこともあったんです。でも、なぜやってこられたか考えてみると、ファンの皆さんからの応援があり、歌うことや、ステージに立っている自分が好きだったんです」
「根本的に『努力したのに、頑張っているのに……』と思っていると、すごくネガティブになりやすいし、1番自分がダメな状態に陥ってしまう。ただ夢を好きでいることは、めちゃくちゃ難しいことでもあると思います。全ての仕事が、好きになれるわけではないじゃないですから。逆に言うと、僕はすごく恵まれて、いまSMエンタテインメントという事務所に入って活動させて頂いています。夢を叶える秘訣は、自分で見つけていくしかないですね。やっぱり、いろいろなことを経験することが大事だと思います」