「信友家の軌跡 老いと死を真正面から捉えた愛に溢れた作品」ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん あささんの映画レビュー(感想・評価)

5.0信友家の軌跡 老いと死を真正面から捉えた愛に溢れた作品

2022年4月12日
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映画に多くの人が求めるような粋な演出や洒落っ気な映像があるわけでもない。広島呉市に暮らす、年老いた両親と一人娘の3人家族の記録がフィルムに収められている。正直直視したくない作品かもしれない、だけどきちんと見なくてはいけない作品なんだ。
なぜだろう、本作には生きる本質が描かれて、とびきり美しく、生きる希望が詰まった力強い作品だ。これほどまでにこの作品に惹きつけられるのは、ひとえに信友一家の家族の人柄と監督の思いがそうさせているのだろう。
想像していた以上に素晴らしい作品だった。
監督・撮影・語りの信友直子監督のご両親の老老介護を描いた作品だが、監督の「お父さん」「お母さん」とカメラ越しから呼びかける優しい声、映像から伝わる両親への愛と感謝の気持ちが溢れ出していて、見ている私は涙が止まらなかった。

本作に映し出された夫婦の姿は他人事ではない。「老いと死」人間誰しもが通る道。きっとみんな、自分自身や両親のことを重ね合わせて見るのではないのだろうか。

どれだけ年老いても、どれだけ辛い現実に直面しても、お母さんに寄り添うお父さんの姿、お父さんに労りの言葉をかけ続けるお母さんの姿に心が震える。夫婦の互いに敬う姿に切なくって、温かい気持ちに包まれる。

そう、本作は信友家の夫婦の生きた証、信友家の軌跡と愛の物語なんだと。

お父さん、120才まで生きてください。直子さん、ご両親を撮り続け素晴らしい作品を世に送り出してくれてありがとう。
信友家に幸あれ!

マキ