恋は光のレビュー・感想・評価
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これも恋なのですね
恋する女性の発する“光”が見えてしまう特異体質の大学生西条はある日一冊のノートを拾う。
そのノートの持ち主は美人だが、文明の利器に頼らず周りともあまり関わりを持たない文学少女の東雲だった。
彼女に一目惚れした西条は幼馴染の北代に協力を仰ぎ、東雲と「恋の定義」について交換日記を始める。
そんな中、人の恋人ばかり好きになる宿木まで参戦し、西条はさらに恋とは何かに悩まされていく。
「恋とは、誰しもが語れるが
誰しもが正しく語れないものである」
byシーロ・キータ
この映画はとある名言から始まる。
傑作マシーン小林啓一監督の最新作とあらば期待せざるを得ない。
結論から言うと、傑作だった。
正直小林監督じゃなかったらきっとキャラクターがここまで輝いていないし、話もこんなに面白くないはず。
監督、一生ついていきます。
文科系哲学恋愛映画。
恋とは何か?
その答えは確かにシーロ・キータ氏の言葉の通りだと思う。
これほど簡単で難しい問いはない。
恋に対する考え方も恋という存在の捉え方も人それぞれ違う。
個人的には宿木の「好きだと思ったらそれが恋」派だけど、人それぞれに自分の恋があってそれぞれが正しく解くことはできないだろう。
そんな答えの出ない問いを子供用の交換日記で探り続ける。
尊い。下手すればハピネット・ファントムのロゴが出た瞬間から尊い。
こんなに純粋さと優しさに溢れた世界を描ける人を私は小林監督以外知らない。
監督の力量はもちろんだけど、役者陣も素晴らしかった。
この4人、一時期はあまり好きではない役者の部類だった。
最近は普通に良い役者だと思うことも増えてきていたけれど、イマイチ乗り切れなかったのが西野七瀬。
ただ、今作の彼女は素晴らしいとしか言えない。
成長というか覚醒。完全に役を自分のものにしていた。
この手の作品、やはり誰派か分かれるところだけど、全員と言いたい。
みんな違ってみんないい。
この作品自体が恋。
この作品自体が光。
理屈じゃない。
好き。
客入り悪すぎ。
観ろ。
恋したい。
岡山行きたい。
以上。
間違いなく今年No1(2023/01/09配信開始後すぐ再見)
このような映画の存在を噛み締める事が出来る喜び。ここまで映画を見てきた上でまだかような作品と出会える喜び。完璧である。この作品を単なるアイドルによるおつむの弱い人向けの消化作品として処理したり無視したりする人がいるとしたら大変の損を人生の中で被ることになる。これほど恋愛映画セオリーに従順でこれほどまでに内容が深く重く、それでいてこれほど印象が軽やかで楽しく胸がときめく映画が他にあったであろうか?映像はあくまでも映画的で前衛的でかつ美しくセリフと演出は軽やかで見事である。少女漫画的恋愛の定石がきっちり踏まえられており、笑いと泣きと感動の嵐の中に放り込まれる。して間違いなくこのエンディングにこころの底からのカタルシスに襲われるのである。
もう一度言う。この映画を見ずして今年を終えてはいけない。
再見後の追記⇒この作品はスタンリー・クブリックの🎥2001年宇宙の旅と、小津安二郎の🎥晩春を凌ぐ傑作であるということを明記するだけで足りる。
文系が恋に落ちたので哲学してみた。
序盤、『リケ恋』みたいなこと言い出したと思ったら文系の話でした。
最初は西條の棒読みが“棒読み風”でない本当の棒読みで気になったが、中盤から良くなっていった。
それ以外は演者すべて素晴らしかったのですが、何といっても西野七瀬。あくまで友人を装いながら微妙に漏れ出る本心を、見事な表情芝居で観せてくれた。何度か出る「よっ」の温度感もグッド。
漫画原作だし、キャラ付けなどは全体的にアニメチックなのですが、絶妙なリアリティーラインで成り立たせてるのが凄い。宿木さんが中盤以降憎めなくなるのも、演技と演出の妙。
個人的には伊東蒼さん(気付かなくて、キャストみてビックリ)の先輩が気になるくらいのボブ好きなので、予告段階では東雲派だったのですが、それ以上に負け組幼馴染好きらしく、北代を応援していた。
風景や古民家、バスまで非常に魅力的で現地に行ってみたくなる。また、個人的には北代、東雲のファッションもツボ。なので、地味な話ながら飽きが来ませんでした。
ちなみに、宿木さんだけ方角が入ってないのは蚊帳の外ってことでしょうか。笑
平祐奈、西野七瀬、宮下咲など可愛い女優がいっぱい
恋をしている人が光って見える、という変わった男子大学生・西条(神尾楓珠)だが、自分は恋愛とは無縁だった。ある日、彼は講堂で読書感想ノートを拾い、その持ち主の東雲(平祐奈)に一目ぼれし、恋の定義について語り合う交換日記を始めた。一方、西条をずっと好きで幼なじみの北代(西野七瀬)は、2人の様子に応援すべきか複雑な心境だった。また、彼女がいる男性ばかりを好きになってしまう宿木(馬場ふみか)は、西条を北代の彼氏だと思い込み猛アプローチをかけていた。西条はある絵を見て、自分と同じように光の見える人が居るのではないかと、その作者を探す事にした。さてどうなる、という話。
面白い設定の恋愛物で、頭から氷入りのジュースをかけられるシーンで始まり、最後まで面白く観れた。
岡山がロケ地みたいだったが、東雲の家に行く時に乗ったボンネットバスを今でも持ってるのが凄い。ググってみたら岡山県高梁市で観光用に動態保存されてるようで、行ってみたくなった。
東雲役の平祐奈が可愛かった。
北代役の西野七瀬は最初はそうも思わなかったけど、西条を想う気持ちが伝わり、だんだんと可愛くみえてきて応援してた。
宿木役の馬場ふみかは嫌な女を上手く演じてた。
西条と同じように、恋してる人が光って見える女子高生役の伊東蒼は歯並びの悪さが気になってイマイチだった。歯科矯正すればいいのに、って思った。
その憧れの先輩役の宮下咲が一瞬しか出なかったが、可愛かった。
たくさん可愛い女優さんが登場し、ストーリーも面白くて良かった。
不自然な会話で心に響かない
哲学的なのは承知していますが、会話が不自然で、この作品の世界に入り込めませんでした。出演者のファンのための映画かなと思います。
冒頭にグラスの中身を頭にかける映像は何だったのでしょうか?
感じ方は人それぞれだと思いますが、こんなに高評価なのは疑問です。
恋とは何か
恋をしている女性が文字通り光って視える主人公西条とそれぞれ特徴が全く異なる3人の女性の恋愛模様をどこかおかしく描いた本作。
恋する女性が光って視える主人公の特徴に負けず劣らずの女性陣が本作を盛り上げた立役者だと感じた。西条が女性陣に振り回される様子は観ていて面白かった。
本作は恋とは何かを真正面から定義することに試みた映画で普通の恋愛映画とは一線を画していると思った。一口に恋と言っても人によって全く異なる認識だったり想いになるから難しいと感じた。
それぞれの個性的すぎる特徴があるからこそ普遍的な恋が際立っていたと感じた。
自然豊かな描写が多く、登場人物も明るく、鑑賞後は爽やかな気分になれる映画だった。
恋全肯定
公式様からありがたいことにムビチケを頂いたので仕事終わり久々にレイトショーへ直行しました。
なんて可愛い作品なんでしょう…!自分はくすぐられるようなあどけなさの残る作品が好きなんですが、そこにドンピシャぶっ刺さる作品でした。
ヒロイン3人の可愛さがそれぞれ表立っていてとても好きでした。東雲さんはザ・清純といった感じではありますがどこか浮世離れしていて、それでいて冗談を全部信じ込んじゃう素直さがとても良かったです。北代は幼馴染という美味しいけど成就しにくいポジションという独特な距離感ですが、こんな幼馴染がいたらきっと幸せだろうなと常々思えるフランクさが最高でした。宿木嬢はダメ女感が滲み出ていて清々しくて好きでした。人の彼氏を略奪することを恋として見立てているというイケナイ事を楽しんでいる姿がまた良い。遠目でぶりっ子しているのもシュールな絵面でしたが可愛かった〜。
恋をしている人が発する光が見えるという特異体質な主人公・西条の設定が変に浮いておらず、実写にする際にチープにもなっていないというのが表現としてとても上手だなと思いました。それまで発してなかった光を発した瞬間に恋をしたんだ!と視覚的に分かるのも良かったです。恋模様の様子もラブコメとしての王道を行きつつもそこにファンタジーが混ざって丁度いい塩梅になっていました。物語の終わりの瞬間も恋愛漫画の最終話をドキドキしながら見ているようでした。これは原作も読まないと…!
心の底から好きと思える恋、一目惚れに落ちた恋、憧れとしての恋、欲にまみれた恋、多くの形の恋をこの作品は語り合いますが、その全てを否定せず様々な形で肯定してくれるとても優しい作品でした。オチで1人が救われなくてちょっぴり残念って感じも茶目っ気があって非常に好きです。聖地巡礼に赴きたい…。
鑑賞日 6/18
鑑賞時間 21:15〜23:15
座席 G-8
キラキラしてた。
鑑賞前に原作のラストを検索してしまったので、
ずっとその結末前提で観てしまった。
出てくる女の子が皆んな可愛いらしく素直で、キラキラしていた。
北代さん役の西野さんもハマり役で今まで演じた役で1番好きかも。
岡山の町と昭和のノスタルジックなお家や衣装も懐かしい気持ちにさせられたし、漫画っぽい話口調もキャラクターを魅力的にさせてました。
よくある少女漫画原作のその辺の映画より
清々しい青春文学映画でほっこりしました。
西条君のキャラはナルシストでうーんですが
神尾さんの役の雰囲気がとても良かった。
あの絵の作者も可愛いかった。
ラストはまさかの結果で、もう1回観たいと思った。
恋をするって楽しいねぇー
最初の衝撃的な(?)シーンに流れるお洒落な(?)歌。あ、これいい映画だな、という予感。
北代のような幼なじみがいて、東雲さんのような人と恋について語り、宿木嬢のような女の子に誘惑されたい。
女の子がみんなかわいいし、魅力的。
岡山倉敷の美しい自然と街で育つとみんなあんなにいい子に育つんだろうなぁ。
健気な西野七瀬に何度も泣きそうになった。
光が見えてなくてもいいんだよ。だってそれは、
「北代よ、それは恋ではなく愛なんだよ。」
若者の恋愛ものに興味はなかった。ある作品を観るまで。
コロナ禍で新作の公開が少なくなってた頃、少し前の良作が上映されてて、その中に小林啓一監督の「殺したい彼と死にたい彼女」があった。面白かった。
「恋をするって、楽しいねぇー」by ドロンジョ
恋がなければ人間は絶滅してる?
独特なキャラで恋してる人の光が見えるという特殊能力を持つ西条(神尾楓珠)とその幼なじみの北代(西野七瀬)と文学少女の東雲(平祐奈)と略奪愛クセがある宿木(馬場ふみか)の面白くも切ない四画関係のお話。正直、西条はモテモテだ。宿木意外は恋愛経験がないが、恋とは何かをそれぞれのアプローチで追求していくとこが面白い。特に、東雲の考えは生物学的でさっぱりしている。恋は遺伝子を残す為のもので、本能として備わっている。それに加えて、子供を育てるには愛が必要だと言う。本の知識だけで考えるとこうなってしまうのだろうが、真剣に語ってる姿がなんとも可愛い。
最後まで、西条が誰と本当の恋仲になるのか分からなかった。3人の女性がそれぞれ魅力的に見えてくるんです。西条と同じ光が見える能力がある画家の女の子と出会い、北代が綺麗に光ってると告げられるシーンからラストに向かっていく。できれば、西条が光ってる北代を見れるシーンが欲しかったな。画家の女の子役の伊東蒼ちゃん、見たことあるなと思ったら「湯を沸かすほどの熱い愛」の寡黙な少女を演じてた子役さんでした。大きくなって立派な俳優さんになりましたね。
西野七瀬さんは、もはや元アイドルという肩書きを忘れて本格俳優としてどんどん成長しています。平祐奈さんは今回はかなりハマり役だったと思います。(生駒ちゃんに少し似てるなあ)神尾君は今回は独特なキャラでしたが、幅広い演技を今後も期待したい。馬場ふみかさんはヒールなのになにか憎めない役で、この作品のストーリーのテンポに欠かせない立ち位置にいて良い演技してましたよ。
哲学的恋愛は妄想
哲学は理屈。哲学者は理屈屋。
なるほど、恋愛は、哲学とは対局な情緒なんですね。主人公は理屈屋なのに、見えるのは情緒の光。この矛盾に翻弄される様が見応えありました。
結局、理屈は、情緒の大義名分の様な。それが、ラストシーンのセリフに現れている様な・・・
恋は本能と学習の化学反応?
久しぶりに良いラブストーリーを観せていただきました。恋する女の子が光って見えるという感性がこのテーマにピッタリでした。
3人の違うタイプの女子大生を演じた女優の皆さん、とても良かったです。好きなタイプの3人を同時に観れてサイコーでした。パジャマ飲みは特に萌えポイント!
なかでもさらに多彩な演技力に磨きがかかってきた西野七瀬ちゃん、素晴らしいと思います。ホントは好きでたまらない思いを秘めつつクールを装う感じは特筆すべきと感じました。
交換日記懐かしい題材でほのぼのしました。
元気になれる嬉しく楽しい恋の光、今期サイコーのラブストーリー❤️
是非映画館で🎦
59
漫画原作実写化映画の成功例
西野七瀬さん目当てで作品自体にはさほど期待せずに観に行きました。が、観終わった後、小林啓一監督に全力で土下座したくなる程面白ったです。
会話劇であるのに全体的に吃る台詞が多めなのが少し気になり星0.5マイナスしてますが、神尾楓珠さんの高い演技力がそれをあまり嫌な風に感じさせなかったのは流石の一言でした。喜怒哀楽が分かりづらく個性的な口調で何よりファンタジーな能力を持っている西条を、とても自然な形で演じていて本当に素晴らしい俳優さんだと思います。
平祐奈さんはピュアで浮世離れしてる東雲そのものでした。彼女が交換日記を書く事の高揚感を西条に伝えるシーンや、北代と縁側で酌み交わすシーンは東雲以上に東雲でした。
個人的に一番意外だったのが宿木扮する馬場ふみかさんです。原作よりも刺激的な彼女のキャラクターが本作にとても良いスパイスを与えていたのは間違い無いでしょう。冒頭の腕組みしながらのシーンは強烈に脳裏に残ってます。今後も気になる女優さんです。
最後に目当ての西野七瀬さん。最近は演劇、CM、TVドラマ、映画と幅広い舞台で様々な役を演じて活躍されていますが、中でも北代は屈指のハマり役だと感じました。彼女の自然体と時折見せる儚さは、アイドル時代の彼女らしさと卒業後に積み重ねてきた女優西野七瀬の双方を感じさせてくれました。
原作の物語を2時間に収めるのに最高の脚本だと思いました。会話の間の取り方や風景の見せ方も上手で、演出がとても良かったです。
上映会場が少ないのがネックですが、是非劇場で見て欲しい作品です。
恋は学習と本能で醸成される?
どんな作品なのか興味津々で観ました。西条が理屈っぽいということで、構えて観ていましたが、逆に分かりやすかったです。設定は大学のキャンパス、あるいは個人宅でストーリーは進んでいきます。西条は幼なじみの北代(西野)と友達のような関係を続けていますが、東雲(平)に一目惚れしたところから、話はどんどん進みます。西条の特技は、恋をしている人は光って見えるというものでした。本当は一番好きなのは北代だったのに、彼女が光って見えないから、恋心を持っていなかったと想像していましたから、二人の仲は深まりません。それでも東雲の存在が、彼の中に本当の恋のようなものを想起させたことによって、北代とハッピーエンドになります。個人的には東雲の方に、私は軍配をあげたかったのですが、北代に決めたということは、ある意味この作品のテーマである、恋は光ではなく、好きな人は光らなくても、光そのものなのだと示唆したかったのだと私は思います。光らなくても触れたい、会いたいという気持ちが一番の恋なのでしょう。この作品の白眉は、雨宿りしていたのに、天気になったので木陰から離れようとする時、「このままでいて」と東雲が西条に言うシーン。文字通りキュンキュンしました。いずれにしても、恋をテーマに深掘りして、観る人に恋の美しさをあらためて提示している秀作と言えるでしょう。
み、みんなこのしゃべり方
2022年劇場鑑賞144本目。
恋している女性を観ると光が見える特殊能力を持つ青年と、彼を取り巻く3人の女性の話。サバサバ系幼なじみ西野七瀬、キャラの濃い主人公と同等の変わった性格の平祐奈、他人の男を奪う事でしか恋が出来ない馬場ふみかと単独ヒロインクラスが揃っております。
恋というものを形として見える主人公が恋をしてストーリーが進んでいくのですが、平祐奈も、西野七瀬もどちらも応援したくなって、どういう結末になるのか、非常に楽しめた作品でした。
ただ一つ、どのメインキャラクターも「こ、こんな風に」しゃべるシーンがあり、主人公は吃音症なのかなと思っていましたがみんな台本にそう書いてあったから読みました感デちゃってました。主人公の影響でみんなうつっちゃったと解釈できなくもないのですが、やっぱり違和感でした。
岡山に行ってみたくなった
全編岡山県をロケ地にしており、作品全体を包む岡山の自然や街並みが心地良く、その中で展開される若者達の恋心を描いた良作。東雲の、「恋とは私が想像していたような美しいものではなく、こんなにも汚くて醜いもの」だということを告白するが、西条は「彼女の光はとても美しかった」と言う。それは彼女が、自分の醜さを自覚し、言葉にしてさらけ出したから、器が大きく美しく見えたのではないか、と思った。どの人物も個性があり、それぞれの本音が見え隠れする繊細な演技がどの役者も素晴らしかったし、女性3人が、お互い違うタイプだなと思いながらも本音で話している場面は、人の優しさを感じ、こういう関係っていいなと思った。
絵描きが女子高生だったことは、ややリアリティが薄く感じられた(もちろん、若くしてギャラリーで絵を販売している人がいてもおかしくはないのだが)。ギャップで驚かせる必要がない設定のように思ったのでそこは少し気になったが、全体的には論理的に考えたり感情を大事にしたりと、とても楽しめる作品でした。
重なり合うねじれの位置
馬場ふみかが唐突にアイスカフェオレを頭からぶっかけられる。カメラはスローモーションで飛沫の一粒一粒を捉え、背後では優雅なBGMが流れている。あまりにも突飛で唐突な演出で本編は幕を開ける。それはこれから始まる映画が並大抵のメロドラマとは一味も二味も違うことを予示している。
理屈っぽく話下手な西条くんの周りにはなぜだか多種多様な美女が集まってくる。それだけであれば萌えアニメにありがちなご都合主義ハーレムに過ぎないはずなのだが、全くそう見えない。
というのも4人の男女の間に流れる空気が、既存の人間関係の間に流れるそれと全く様相を異にしているからだ。現実であれば決して交わらないはずの人々が、ここでは当たり前のように融和している。
思えば小林啓一の作品では、オタクと非オタクがほとんど弁別されることなく混じり合っている。両者の間には明らかに思想的・嗜好的な差異があるというのに、小林作品の中の登場人物たちにとっては、それらは取るに足らない些事であるようだ。
本来であれば中学数学で言うところの「ねじれの位置」を成すはずの人々が縦横無尽に相互干渉し合う、という点では小林作品はある種のファンタジーだ。しかし映画の記述文法としては明らかにリアリズムの傾向がある。言うなればファンタジーとリアルの不安定な綱引き状態。このなんともいえない浮遊感こそが小林作品の真骨頂だといえる。
受け手を突き放すアートともヘコヘコと盲目的に頭を下げるエンターテイメントとも異なった摩訶不思議な映画空間を作り上げるのがこの人は本当にうまい。
ズラしの文法を駆使することで物語が平凡なメロドラマに堕してしまうことを冷笑的に回避する一方で、本当に重要なところでは登場人物に「ちょっと待って、今なんか言われたら茶化しちゃいそうだから」と判断を留保させるだけの良識がある。この良識ってやつが大事なんですよね、軽んじがられがちですけど。
それにしても西野七瀬の演技がよかった。ともすれば痛々しい負けヒロインに転じてしまいかねない場面でも、薄っぺらい激情や強がりに逃げ込むことなく、真正面から落ち込む。なおかつオタク的な「萌え」に接収されないだけの自律性と高潔性をも有している。もっと演技が見てみたいと思える名女優だと思う。
「恋は光」というタイトルも素敵だ。なぜ「恋の光」ではなく「恋は光」なのか、そのあたりの意味やら意図は是非皆さんの目で確かめていただきたい。
全145件中、101~120件目を表示