劇場公開日 2022年6月17日

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「ファンタジー設定から派生した副次効果」恋は光 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ファンタジー設定から派生した副次効果

2022年6月18日
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鑑賞方法:試写会

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二十歳前後の登場人物らによる青春恋愛物に、ひとつファンタジーないしSF的な設定を加えた映画という意味で、「恋する寄生虫」にちょっと近いだろうか。

神尾楓珠が演じる主人公の大学生・西条は、恋をしている女性の全身からきらきらと輝く光の粒が見えるという特異体質の持ち主。幼馴染みの北代(西野七瀬)は、西条から体質のことを聞いているし、昔から彼に片想いしているのだが、「北代からは光が出ていない」と言われて諦めモード。西条は大学で出会った文学少女・東雲(平祐奈)のことが気になり、恋の定義を議論し合う交換日記を始めるなど距離を縮めていくが……という展開。

実はこの三人、このストーリーが語られる段階までの人生で誰とも一度も交際したことがない。もし全体的にリアルな設定の映画やドラマなら、こんな美男美女が大学生になるまでモテることもなく付き合ったこともないなんて嘘くさい、と興ざめするところだが、「恋の光が見える」というファンタジー設定のおかげで、漫画を原作とする虚構の世界、架空のキャラクターとして無理なく受け入れられるのだろうと感じた。

あと、平祐奈の出演作を観たのは2017年の「サクラダリセット」以来だったので、最初その体型の変化にちょっと驚いたのだが、多様性を尊重する今の時代らしいと思い直した。「美人は痩身でなければならない」といったかつての固定観念に縛られるのではなく、今の体型で恋愛映画のヒロインの一人として作品中に自然に存在することは、社会への、特に若い世代へのポジティブなメッセージになるのではないか。

不器用な男女の恋愛模様という点で、少し近い要素もある最近の公開作「私たちはおとな」には気が滅入ったが、本作の鑑賞後感はすこぶる爽やか。若いカップル、あるいは恋人未満の関係で観に行くなら、だんぜん「恋は光」のほうがおすすめだ。

小林啓一監督については、デビュー作「ももいろそらを」が大好きで、恋愛映画の名手という印象。三作ほど漫画原作が続いたようだが、そろそろまたオリジナル脚本での監督作をぜひお願いしたい。

高森 郁哉