劇場公開日 2023年12月15日

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「前作で判断しないで」屋根裏のラジャー 芋と餅さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前作で判断しないで

2023年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

正直、スタジオポノックの前作、『メアリと魔女の花』は、見るに堪えない訳じゃないし苦痛なく見られるんだけど、気持ちが高揚するわけでも感動するわけでも印象に残ったわけでもつまらなかったと憤怒するわけでもなく、見終わった瞬間に「いい作画だったね」以外特に思い浮かぶ感想が無かった作品だったので、今作は期待半分・不安半分という状況でした。

が。
気持ちの半分を占めていた不安は、杞憂に終わりました。

アニメーション技術については言わずもがな。
メアリの時より更に進化した、今までに体験したことが無い新しい感覚のアニメーションがスクリーンで繰り広げられます。
美術も本当に素晴らしく、開始早々、その美しさに涙がでました。

ネタバレは避けますが、空想することが好きな人、昔よく想像して遊んでいた人、創造することが好きな人、そんな人たちにささる作品なのではないかと思いました。
ストーリーの展開には驚かされるところや、泣かされるシーンもあり、秀逸な児童文学が原作ということもあり純粋に楽しめました。

しかし、少し状況説明をセリフでやらせすぎなところと、脚本担当者の削る勇気があったらもっとテンポの良い作品になったんじゃないかと思えるシーンや演出がいくつかあったのが、惜しいなと思ってしまった原因だと思います。
翻訳した文章のような、少し違和感を感じる日本語も気になる人は気になると思います。

途中ホラーのような、怖い表現がちょくちょく出てきます。
ホラーがとても苦手な私としては、子供の頃見てたらトラウマになってたかもしれないと思うレベルでしたので、そういうのが苦手な方は少し心構えが必要かもしれません。

因みにですが今回、主要キャラを全員俳優さん・女優さんが演じています。
個人的には見るのに支障があるほどの違和感は感じませんでしたが、気になったという口コミも目にしますので、人によるのかも知れません。

スタジオジブリを見て育った身としては、やはりその意思を継いだスタジオポノックには是が非でも存続し続けて作品を世に出し続けて欲しいという想いもあります。
今回の作品は、ジブリという殻を破って、でも大事なものは手放さずに、大空へ羽ばたこうとするポノックの意志のようなものを感じました。

このレビューにも書いている通り、欠点と感じる部分もある為、文句のない万人向けの傑作だ!と伝えるつもりはありません。
でも、前回のメアリが合わなかったな、という方も、是非一度、先入観抜きで劇場に足を運んでみてください。

もしかしたらこの映画との出会いが、いつの間にか忘れてしまっていたキラキラワクワクしたものと再会させてくれるきっかけになるかもしれません。

その可能性があることは胸を張って言えます。
私がその一人でしたから。

芋と餅