「瞬きも呼吸することも忘れて、最後まで見入ってしまいました.」バブル エリ子さんの映画レビュー(感想・評価)
瞬きも呼吸することも忘れて、最後まで見入ってしまいました.
レビュー本文
久々のアニメ映画でした。
背景美術のクォリティの高さに脱帽。
それに負けず劣らず、キャラクターの動きのアングルやスピード感が良かったです。 ほとんど無呼吸で瞬きを忘れて、最後まで見入っていました。
ストーリー的には説明不足や観客を置いてけぼりな感じは否めませんが、謎めいたところは自分の勝手な想像力で補いながら。
志尊淳くん、良かったです。 この映画のキーワードは、歌と音です。 ひびきの病気は、聴覚過敏?全ての音が同じ音量で聞こえてくるのでしょう。 ひびきがイヤマフをしていることで、自分と自分の聴覚を、外界(の音)から守っているのです。 そのひびきにしか聞こえない歌。 これが何を意味しているのか…。
そして、ひびきが言葉を知らない、命の恩人の少女に「ウタ」と名づける。
ひびき、ウタ、ひびき、ウタ…というシーンが、ほっこりして良かったです。
ひびきは、音に敏感なので、優しい音にも敏感です。 貝殻のペンダントウタに贈るシーンも良かったです。 自分にしか聞こえないはずの波の音を、歌にも聞こえる事を知った時が、ひびきが自分の殻になっているイヤマフを手放す第一歩でした。
「人魚姫」のアンデルセンの原作は、本当に切ないです。
「リトルマーメイド」が人魚姫のお話だと思って育った若い人達に、アンデルセンの原作と、アンデルセンがこの物語に込めた思いをぜひ読み取ってから、このアニメーションを見てほしいです。 美しい人魚姫の絵本を見て、ウタは人魚姫に自分を重ねる…。
でも、原作の王子は、人魚姫が嵐の海で自分を助けてくれた恩人とは気がつかないけれど、ひびきや仲間達はウタを救いに挑んで来てくれる。
そして、人魚姫ウタは、王子ひびきに見守られて逝ってしまいます。 が、また、バブルになって、ひびきのそばに漂っている?のです。
ウタは、歌であり、泡沫(ウタカタ)のウタだったのですね。
ひびきは、自分からイヤマフを外して、みんなの声を聞き、みんなの中に笑顔で入っていくのです。 ウタに会えたから本当の自分になれた。
この映画をイヤマフを離さないRくんやTくんにぜひ見せてあげたいと思います。 あの子達のイヤマフを外してくれるステキな出会いが、この先の未来に訪れますように🙏