「さらなるスパイダー次元へ、アクロス(渡って)!」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
さらなるスパイダー次元へ、アクロス(渡って)!
OK、じゃあ説明するね。
『スパイダーマン』がアニメでやるって聞いた時、うんざりしたわけ。製作側の都合で何度もリブートされて、今度はアニメかよ。
でも、これが大当たり。黄金のおじさん像も獲っちゃって、スパイダーマン映画最高傑作なんて皆言ったり。否定的だった連中、ザマミロって感じ。(自分もだけど)
これだけじゃないの。今アメコミ界はこっち(マーベル)もあっち(DC)もマルチバースだらけ。それを流行らせたのも、そう!
『スパイダーマン:スパイダーバース』がどんだけ凄かったか、皆分かってくれたかな?
…という事で、待望の続編。この続編は周囲の期待やプレッシャーは相当だったろう。
斬新な映像表現や革命的な世界観もさることながら、後続の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『ザ・フラッシュ』がマルチバースを使ってさらに興奮感激させた。それを超える事が出来るか…?
興奮感激という点では旧作と絡めたその2作に軍配が上がるだろう。が、マルチバースという特異性を活かした点では、本作がまたまたやってくれた。
期待とプレッシャーを飛び越え、さらなる高み…いや、新次元へ!
情報量も半端じゃなく、どの角度から語ったらいいか…。
さらに進化した映像からか、それとも“スパイダーウーマン”ことグウェンのシーンから始まるのでそれに倣って…?(この冒頭だけでマルチバースや本作の設定を見事に説明している)
だけど、あくまで主人公はマイルス。なのでやはり、彼目線で。その方が分かり易い。
新たなスパイダーマンとして活躍中のマイルス。彼の経緯は…説明しなくても大丈夫だよね。
スパイダーマンあるある。ヒーロー活動を並行させての学校や進学の問題も。それを巡って最近両親とぎくしゃく。ホント、ヒーローって大変…。
その日もまたヘンな奴が現れた。
白い身体に黒い斑点の、牛かダルメシアンみたいな奴。それだけなら可愛いかもしれないけど、何か不気味。
序盤でサラッと倒されるザコかと思いきや、身体中の斑点は異空間に繋がる穴で、現空間にも自在に作る事が出来、あらゆる攻撃を交わす事が可能。思ってたより難敵。
あのキングピン事件の時いた科学者の一人だという。覚えてねーや。
“スポット”と名乗り、原作コミックでもマイナーキャラらしいが、マルチバース題材の本作にぴったり。
マルチバースを行き来するシーンで、レゴもさることながら実写の“ヴィラン作品”のある人物とリンク。もうマルチバース、何でもアリ過ぎっ!
掴み所がない感じのこのヴィランだが、不敵な事を言う。僕が君を作り、君が僕を作った。
表裏一体のヒーローとヴィラン。それだけじゃない。ヒーローというより、スパイダーマンとしての“宿命”が中枢を成す…。
父親が新署長となり、そのパーティーが開かれるも、マイルスは遅刻。例によって両親からお小言、喧嘩。
誰にもこの悩みや孤独を打ち明けられない。でも、“彼ら”なら…。
彼らに会いたい。特に会いたいのは…。
その思いが通じたのか、目の前に“現れた”のは…、グウェン!
夢幻じゃなく、本物。一体、どうやって…?
マルチバースを自在に行き来出来る装置を使って。今彼女は、あるチームに属しているという。
近況を話し合ったりして再会を喜び合うが、グウェンは何か秘密の任を帯びているよう。
グウェンの後を(透明になって)こっそり尾行。調べていたのは…、あのスポット。
スポットはある物を手に入れる為、別のマルチバースへ。
グウェンはこの世界とマイルスに別れを告げ、後を追う。
いたたまれなくなったマイルスもグウェンを追って。
前作はマイルスの世界に別マルチバースのスパイダーたちがやって来たが、今回は逆。マイルスが別のマルチバースへ。
そこはインドのような世界。
スポットを発見。後を追っていた事がバレ、共闘するも、ピンチに。
そこに現れたのは…、インドのスパイダーマン、インディア。
さらにもう一人。グウェンとはすでに何度か組んでいるイギリス人のギタリスト・スパイダーマン、ホービー。
闘いの最中、街に大被害。マイルスはインディアの恋人の父親の命を救う。
それは立派な行いの筈が…、“本部”から呼び出し。
一同が向かった先は…
“スパイダー・ソサエティ”。
別のマルチバースにある未来都市。
そこにはあらゆるマルチバースのスパイダーたちが集う。
グウェンの教育係の妊婦のスパイダーウーマン。
マイルスにとっては嬉しい再会。ピーター・B・パーカー! MJとヨリを戻したようで、何と今は一児のパパ。まだ赤ん坊の愛娘にも“スパイダー能力”が…!
他にもあのスパイダーマン、あれを彷彿させるスパイダーマン…性別も人種も様々で、中には捕まえたヴィラン(勿論様々な形態)や実写キャラも!
キャラデザやタッチも各々違う。前作の各々の描写もユニークだったが、本作は何倍、何十倍、いや何百倍…!?
って言うか、あらゆるマルチバースにスパイダーマンってこんなに居るんだ…!
独りでしょげていた自分が恥ずかしい。一人じゃない、僕らは“スパイダー仲間”だ!
…との喜びはものの見事に覆させられる。
皆のリーダーのスパイダーマン、ミゲル。
マイルスの存在や彼がした事を激しく咎める。インディアの恋人の父親を救うべきじゃなかった。
お陰で全マルチバースが危機に。
どういう事…?
スパイダーたちの宿命。全てを救う事は出来ない。
振り返ってみれば、確かにそうだ。
トビー・スパイダーマンはベンおじさん、アンドリュー・スパイダーマンはグウェン、トムホ・スパイダーマンはメイおばさん、そしてマイルスはアーロンおじさん…。
彼らだけじゃない。グウェンも彼女の世界でリザードになったピーターを救えなかった。ピーター殺しの容疑を掛けられ、警官である自分の父に追われている…。
ミゲルも悲しい過去が。いや、ここにいるスパイダー全員が。
誰か大切な人を亡くしている。そんな悲しみがあって、“スパイダー”として各々の世界を救っている。
大切な人か、世界か。どちらかしか救えない。それがスパイダーたちの宿命。
そうやって均衡を保ってきた。
それなのに…。マイルスがインディアの恋人の父親を救ったせいで、均衡が崩れた。
さらにマイルスはこれから起こるある悲劇を見た。自分の世界で、自分の父親が死ぬ…。
だが、これも宿命。変えてはならない。
冗談じゃない! 自分の父親が死ぬのを何もしないでいるのか…!?
救ってみせる。世界も、大切な人も。
マイルスは自分の世界に戻ろうとする。
こうなる事は分かっていた。だから彼を仲間に迎え入れなかった。
ミゲル率いる“スパイダーピープル”がマイルスを猛追。
たった一人スパイダーマンvsあらゆるマルチバースのスパイダーたちの“スパイダーバトル”が勃発…!
今回のアクションの見せ場はここ!
あらゆるスパイダーたちが入り乱れ、スピーディーでクールなアクション、映像表現はさらに“アクロス”!
このシーンを一体どう伝えたら…。私の文章力じゃ表現出来ない。とにかく、見て!
映像とアクションに最高にマッチした音楽、ユーモアもいっぱい。
だけどメインは非常にシリアス…。
グウェンもピーターBも事情を知っていた。信じていた仲間に裏切られたかのように、孤独感が募る…。
さらに追い討ちを掛けるのは、ミゲルに追い詰められた時、彼が言い放った言葉。
お前はスパイダーになるべきじゃなかった。お前がスパイダーになったせいで、お前の世界のスパイダーマン/ピーターは死んだ。
お前は“イレギュラー”。誰もお前を必要としていない。
そうかもしれない。自分だって望んでスパイダーマンになった訳じゃない。
が、スパイダーマンになった。それには何か訳がある。
大いなる力には大いなる責任が伴う。
大いなる悲劇も、宿命も、変えてやる…!
マイルスは元の世界に戻ってきた。
母親にスパイダーマンである事を告げる。
が、母親は“スパイダーマン”の事を知らない。
マイルスの身体を襲うあの“ビリビリ”。
マイルスは自分の世界に戻ってはいなく、酷似したマルチバースにいた。
目の前に現れたのは、まさかの人物。さらにもう一人。まさかまさかの人物…!
(実写ではまだ結成していない“ヴィラン・チーム”の名が…)
マイルスの世界にやって来たミゲルら。スポットも。
グウェンも自分の世界に戻されたが、ある方法でやって来る。その時、父親と和解を…。
そうだ。変えられないなんて事はないんだ。
まずはマイルスを見つけ出し、救出する。待ってて、マイルス!
グウェンを筆頭に、今回のメンバー、待ってました!の前作メンバー。
失われたと思われた絆。
父の命。
マルチバースの危機。
全ての宿命を変える。救ってみせる。
スパイダー新次元。
“アクロス”から“ビヨンド”へ!
into-across-beyond. Spider Verseに飛び込んで、向こう側に突き抜け、遥か彼方へ、と言うw
間違い無く、私的には歴史に残る3部作です!