「更に進化した映像に圧倒される」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5更に進化した映像に圧倒される

2023年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 前作は様々なスパイダーマンが登場するというマルチバースという設定が斬新だったわけだが、今回はそれが更にスケールアップし、登場してくるスパイダーマンは実に240体にもおよぶというから、もはやカオスである。
 映像はポップで鮮烈。タッチの異なるビジュアルを同一画面に混在させながら、更に刺激的で実験志向の強いアーティスティックな映像が突き詰められている。前作でも凄まじい映像の洪水に驚かされものだが、それを軽々と越えてくる情報量の多さには、ただただ圧倒されるばかりである。

 まず、グウェンのパートを描くアバンタイトルからして、月並みな言い方になるが”物凄い”映像である。一気に画面に引き込まれた。

 そこから物語はマイルスのヒーローとしての葛藤を描くドラマに入っていく。
 前作がヒーローとしての”使命”に芽生えるドラマだとしたら、今回はそこから更に一歩ステップアップし、ヒーローとしての”覚悟”を持つに至るドラマとなっている。
 「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というベンおじさんの言葉は余りにも有名であるが、ここにきてその意味が本格的に問われ始めるのだ。

 但し、本作は前後編2部作の前編である。マイルスの戦いは後編へ持ち越され、どうしても物語としての締まりは今一つ弱い。この辺りは致し方なしという所か…。色々と問題が山積みになっているので、次回でこれらがスッキリと解消されることを願うばかりである。

 尚、当然のことながら前作から物語がそのまま続いているので、前作の鑑賞は必須である。
 また、画面の端々にイースター・エッグが仕込まれているので、他のスパイダーマンの映像作品やコミックを知っていると更に楽しめるだろう。そういう意味では、何度観ても新しい発見が得られそうである。

ありの