「世界はまだOZAWAを知らない。」BAD CITY 高橋直樹さんの映画レビュー(感想・評価)
世界はまだOZAWAを知らない。
日本には小沢組というチームがあり、小沢仁志という映画人を支えている。武骨で知られるこの俳優は、数多くの映画やVシネマに出演している。基本とするのはガチであること。還暦を迎えても尚、身体を張ってフロントラインに立つ。その為には、身体をいじめ抜き、範となる動きで臨まなければならない。現場で叩き上げられた彼の精神は、全く揺るぐことがない。
倉田アクションジムで武闘芝居の経験がある園村健介監督は、千葉真一や倉田保昭が作った日本のアクションを、香港で異次元へと昇華させた谷垣健治らとの現場経験を活かしたガチな次元へと導く。端的に述べるなら、身体と身体がぶつかり合う格闘をベースに、時にアクロバチックな小技を盛り込み、世界スタンダードの表現を目指す。現場一徹、叩き上げの小沢と次世代の監督が出会ったとき、新たなるDNAが発芽する。
共演者たちが嬉々としている。周りを心配させる新米刑事を演じた坂ノ上茜、チームを組む三元雅芸、勝矢。特にヤクザの波岡一喜の表情がいい。
誰もが体力の限りを尽くし、暴れまくってやると気合い充分。画面から溢れ出さんばかりの気概が、無茶を承知で身体を張る刑事たちに更なる緊張をもたらす。
街を牛耳る財閥、権力者に子飼いにされたコリアンマフィア、幹部を殺られて黙ってられないヤクザ、三者の睨み合いに刑事たちが割り込む。
三つ巴ならぬがっぷり四つの絡み合いが、猛スピードで激走する。世界よ、今こそOZAWAという映画人がいることを知れ。
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