劇場公開日 2022年3月4日

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「3.11を題材に喜劇? 難題に挑む姿勢は買う」永遠の1分。 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.53.11を題材に喜劇? 難題に挑む姿勢は買う

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

東日本大震災に限らず、大勢が犠牲になったり人生に深刻な影響を受けたりする震災や事故や事件について、当事者以外が論じる、語る、作品化することは“はばかられて当然”のような空気が、確かにこの国にはある。曽根剛監督も、被災者でもない自分が3.11を描くことに後ろめたい気持ちがあったと語っている。

3.11を題材に劇映画を作ることだけでも並の創作に比べハードルが高いのに、さらに笑いの要素を入れてポジティブなエンターテイメントを作ろうというのだから、相当な覚悟をもって臨んだはずだ。脚本は、「カメラを止めるな!」の監督・上田慎一郎が担当した。

曽根監督と同様、「自分は3.11の部外者という感覚」があった上田は、自分たちの立場を反映させて「3.11の部外者である人間が、3.11を題材にしたコメディ映画を創ろうとする」話を書いた。映画の作り手を震災後に来日したアメリカ人に設定することで、“部外者”としての立ち位置を強調するだけでなく、カルチャーギャップから生まれる笑いも加えている。

ただまあ、頭が禿げている人にハゲの自虐ネタを言わせたりするなど、笑いが軽いというか、比較的あたりさわりのない笑いにとどまっているので、コメディとしては中途半端かもしれない。

また、津波の被災者しか取り上げておらず、原発事故で土地を追われたり生業を失ったりした人たちについての言及がほとんどないのも、より難しい題材を避けたように感じられた。しいて挙げるなら、ロサンゼルスに移り住んだ日本人シンガーの麗子が、職場で「放射能がうつる」と言われる場面があったくらいか。麗子を演じたラッパーのAwichによる歌唱はとてもよかった。アカペラから歌い始めるシーン、バックトラックが入るタイミングをもう少し遅らせ、ワンコーラス分を伴奏無しで聴かせてもよかったのでは。

高森 郁哉