「わたしはすべてを覚えているのか。」百花 mamiさんの映画レビュー(感想・評価)
わたしはすべてを覚えているのか。
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認知症の母と息子の現在の関係を、過去のわだかまりや未来に生まれる息子の子ども、過去や未来に繋げつつ静かに丁寧に描く。
全体的に暗いし、淡々としていてそれほど盛り上がりもない。母が男と逃げていた期間がとても長く描かれているのだが、あんな小さな子を置き去りにして行ったところにどうしても共感ができないし、戻った後の親子関係をもっと描いてほしかった気もする。
しかし印象的な台詞がところどころあった。職場の後輩の(認知症のイズミの母の話の後で)「俺たちだって大したこと覚えてないじゃないっすか」とか、イズミの妻の「親だからっていつも正しいわけじゃない。わたしだっていつか投げ出したくなることがあるかもしれない」などの台詞にはハッとさせられた。そして認知症に関わらず人と人とを結ぶ記憶に思いを馳せた。
そして縁側で「半分の花火」の謎が解けた時、その謎自体はそれほど大したことではないが「認知症の母が覚えていても、健常の自分が覚えていないこともある、親を憎んではきたが、かけてもらっていた愛情のことも自分は覚えていなかった」ということ、その誰しも思い当たることがあるはずな事実を思い知らされて涙が溢れた。
原田美枝子さんの認知症の人独特の表情のない感じや、菅田くんの感情を抑えた常に何か思いを抱えているような表情はとても上手かった。
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