「記憶を失っていく生の中で"忘れられない記憶"と"忘れたくない記憶"こそがその人を形作る... 新たな命を迎える青年が老境の母の生と性に向き合う」百花 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
記憶を失っていく生の中で"忘れられない記憶"と"忘れたくない記憶"こそがその人を形作る... 新たな命を迎える青年が老境の母の生と性に向き合う
菅田将暉さん、原田美枝子さん、そして長澤まさみさんというスターキャストを擁して繰り広げられる親子の愛憎劇・・・原作小説も手掛けられている川村元気監督の長編映画初監督作品です。
プロデューサーや絵本作家としても活躍されているだけあって、登場人物とテーマを極限まで集約した観客に深く染み入り易い構成を取りつつも、過去と現在が瞬時に入れ替わる幻惑的で人を食ったような演出に作家としての自我や初期衝動も注ぎ込み、全体として話題性の高さのみに終わらないエネルギーを孕んだ作品に仕上がっていたように思います。
特に出色なのは、他の映画であれば若い頃の演技は年の若い別の女優さんに演じてもらうこともごく普通でしょうが、本作では泉を置いて恋人と神戸で一年間を過ごした若き愛の日々も原田美枝子さんが演じられています。
その媚態も厭わぬ変わらぬ美しさもまずもって凄いですが、一連の時間を彼女が演じたことによって、百合子という一人の女性の生涯がより強烈に意識されるようになったと思います。
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