「数々の試練を友達と共に乗り越えていく展開はグッとくるシーンも多くて、大切な物事を色々と考えさせられる作品だ」ゴーストブック おばけずかん 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
数々の試練を友達と共に乗り越えていく展開はグッとくるシーンも多くて、大切な物事を色々と考えさせられる作品だ
特撮や作品で、今や日本を代表する映画監督となった山崎貴監督の最新作が本作の『ゴーストブックおばけずかん』です。
どんな願い事も叶えてくれる一冊の本である“おけずかん”を手に入れた子供たちを待ち受ける、数々の試練に立ち向かう強い絆と、どんなに絶望的な状況でも諦めない勇気が印象的でした。
「大人が知らないベストセラー」として子供たちに愛される児童書「おばけずかん」の世界を圧倒的なVFXで映像化して、手に汗握る冒険と、子供たちの成長物語が描かれていきます。
物語は、ある悩みを抱えた小学生の坂本一樹(城桧吏)が寝床につこうとしたときに、白い布をかぶった謎のおばけが突如現れて、「願いを叶えたいか?」と枕元で耳元でささやいたことから動き出します。翌日親友の工藤太一(柴崎楓雅)や飯田サニー宗佑(サニーマックレンドン)に打ち明けたら、3人共に同じオバケを見て、「願いを叶えたいか?」と囁かれたことを知って、3人ともビックリ。心当たりとなるのは、以前3人でいったことがある野仏のあるところを目指すのでした。実は3人の子供たちには、どうしても叶えたい願いがあったのです。
行ってみると、その場所は古本屋に変わっていました。恐る恐る古本屋に3人が忍び混む姿を偶然見てしまった臨時教員の瑤子先生(新垣結衣)も子供たちの後を追い古本屋へ。そこには白いおばけ、昨晩囁いていたどんな願いも叶えてくれるという「おばけずかん」があり、その図鑑を手に入れた子供たちは瑤子先生と共に、あやしい店主(神木隆之介)のいる迷路のような古本屋から脱出します。しかし古本屋から出た外の世界は、何かいつもの日常とは違う世界でした。建物の屋根が90度ねじれていたり、看板の文字は変な書体で読めやしません。何よりも自分たち以外だれ一人として見かけない世界だったのです。そんな違和感だらけの世界に怯えながらも知恵と勇気を持って立ち向かおうとする子供たち。そんな混乱する子供たちの前に、突然クラスメートの橘湊(吉村文香)も迷い込んできます。
このおかしな世界の唯一の手がかりは、図鑑の秘密を知る「図鑑坊」(声:釘宮理恵)の存在。「図鑑坊」の力を借り、おばけたちを相手に命懸けの試練に挑むことになる子供たち。瑤子先生は最初こそ見下されていましたが、子供たちの強い信念に感銘を受け一緒に戦うことを決意します。
試練となるのは図鑑に載っているおばけたち。彼らはとても強力で、子供たちは何度も挫けそうになります。果たして試練を乗り越えて、彼らは願いを叶えることはできるのか?そして運命を変えることはできるのか?というお話しなんです。
子供たちが主役で児童書が原作の本作は、子供向けの作品と思われるかもしれません。 願いを叶える為におばけずかんを求め、数々の試練を友達と共に乗り越えていく展開はグッとくるシーンも多くて、大切な物事を色々と考えさせられる作品だと思いました。
特に子供たちが、どんな切実な願い事をもって、おばけずかんの試練に立ち向かっていたか、ネタバレされるとき、ホロリと泣かされました。『ALWAYS三丁目の夕日』や実写版『どらえもん』で、多くの観客の涙を誘ってきた山崎監督だけに、本作でも大人が見て泣けてくるヒューマンな展開がてんこ盛りなんです。
友達や仲間、何か叶える為には努力が必要不可欠な事を訴えるテーマは、親子で見るには最適な作品ではないでしょうか。
そして戦うとはいえ殺し合うわけではないところも安心感があって、むしろ頬笑ましい仕上がりになっています。
子供目線でいえばまさに主役の子供だちと自分を重ね合わせることでしょう。一緒に悲しみ、一緒に喜び、そして感動して、それらの感情を共有することは間違いありません。
主題歌は星野源。同じ作品に夫婦共演していることも、なにやら本作の展開を暗示しているように思えます。主題歌全体がポップで『逃げ恥』調。サビのフレーズが、一度聞くと頭から離れなくなるので、自宅で聞き直して踊りたくなってくることでしょう。もう少しで始まる夏休み。家族や友だちと一緒にワクワクドキドキするのにちょうどいい作品でした。
古本屋の謎の店主役として出演している神木隆之介もいい味出していました。「髪で袴を穿いてるあの容姿は、一歩間違うとコスプレになっちゃうけど、神木くんだったら日常のシーンに出てきても大丈夫だという期待があって。それに神木くん、怪しいのが上手ですから。ジワッと怪しい感じを醸し出していくというか」と神木の起用の理由を山崎監督は明かしたのです。
最後に、本作もエンドロール後に古本屋の謎の店主が再登場して、「図鑑坊」に次の対象者を探しに旅に出ようと持ちかけます。続編にやる気満々の終わり方でした。(ネタばれでははありませんあしからず)
。