「映画としての出来栄えはあまりよろしくはなかった」スターフィッシュ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
映画としての出来栄えはあまりよろしくはなかった
正直に言ってよくわからない映画である。2018年の製作で、主演のバージニア・ガードナーはまだ23歳だった。主人公オーブリーは、その精神性からして、高校を卒業してそれほど経っていない19歳か20歳くらいだろう。電話がダイヤル式ということは1960年代か、せいぜい70年代だろう。まだCDもMDもなく、音楽を聞くのはカセットテープや円盤レコードが中心だった時代だ。
今みたいにSNSもない時代だが、本作品は亡くなった友達と目に見えない繋がりの中で展開するところが、そこはかとなくSNSを想起させる。
出現する人間大のモンスターは、オーブリーの弱さであることは途中でわかる。しかし巨大な怪獣はなんだろうか。当方にはどうしても戦争に思えてしまった。そしてラストのドームは、チェルノブイリ原発か、または核兵器が爆発した瞬間の熱球に見えた。その両方かもしれない。
死んだ友達からの伝言だけという限られた情報を信じて動いた結果が核戦争を招いてしまったのだとすれば、SNSに左右されてしまう現代を想起させる。それともオーブリー自身が世の中から人間が消えてしまえばいい、それが地球のためだと考えていたことが現実になったのか。
映画は結論を明らかにはしない。それが監督の狙いなのか、それとも監督の才能の不足のせいなのか、それもわからない。わからないことだらけの作品だ。
メタファーを想像しながら鑑賞しているときに、いきなり大音量が出たり、はっきり言って下手くそな歌が流れたりする編集には、かなり違和感がある。変な効果音や下手な歌を廃して、息遣いや足音や物音などが目立つような、静寂を中心にしたほうがよほど入り込めた気がする。映画としての出来栄えはあまりよろしくはなかった。