劇場公開日 2022年1月14日

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「2度と裸足で海は歩きません」ザ・ビーチ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 2度と裸足で海は歩きません

2022年7月22日
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鑑賞方法:VOD

原題は「The Beach House」。ズバリ浜辺にある主人公の恋人の父が所有する別荘に2人でやって来る所から始まる。若い2人なら真っ先に海へ行くかベッド直行なんだろうが、後者の方を選択した様だ。一見仲の良いラブラブカップルに見えるが、どこか心ここにあらずで"無機質"な雰囲気を醸し出している2人なのである。それにもきちんとした原因があるのだが、後半にその設定が生きる事は特に無く、少ない登場人物の中での最大限のドラマパートである。オフシーズンの為別荘地には誰も居ないかに思えたが、2人のやって来た家には何と熟年夫婦が先に着いて生活していたのだ。ベット直行の故にそれに気が付かなかった2人だったが、その夫婦もどこか哀愁漂う夫婦で、物悲しい人物ばかり登場する作品となっている。少しネタバレだが、妻の方は病気であり、「もう良くなる事は無い」という台詞がある事から、余命幾ばくも無いのか、認知症や精神疾患で主人の事も忘れていくのか分からないが、夫の方はというと明るく振る舞っているように見せかけて海に入水自殺してしまう。ゆっくりと歩いていき、段々と岸から遠ざかっていくシーンは何故か印象深い。少し怖いシーンだった。
本編88分程度に対して、ドラマパートが長いせいか、登場人物らの心情はこれでもかと言う程丁寧である。その代わりいざ事が起きてからは展開が早く、理性を失ったゾンビの様な人が現れたり、「遊星からの物体X」の様なぐちゃぐちゃの得体の知れない"元人間"らしき生物だったり、マニア心をくすぐる描写が後半で盛り上げてくれる。出来ればドラマパートが後半に生きないのならそちらは程々に後半パートをもっと描いて欲しかった気もするが、これはこれでそれなりに気に入っている作品である。

グロさ等を求めるような映画ではないが、海岸に打ち上げられた巨大ギョーザみたいな物を踏んづけた主人公の足の裏からミミズの様な生き物が侵入するシーンは思わず顔を背けてしまう強烈っぷりである。それをピンセットで取り出すのだから苦手な人は失神物である。絶対に裸足で歩く様な海なんかに行く前に観る作品ではない。

明確に何がこうなってこういう理由でこういう事が起きたと説明は無く、それよりかは得体の知れない存在と遭遇し、逃げ場もあるのかも分からない、どこまでこれが及んでいるのかも分からないという絶望感、終末感を感じる作品である為、勝手にこちらが考察する必要があるが、実は主人公が大学院に進む事を検討しているという設定であり、「宇宙生物学」を専攻している。これはエイリアンの研究ではなく、宇宙に近い環境、つまり深海に潜む生物がいかにして進化を遂げているのかという物が主な研究内容であるのだが、中盤でこれでもかと丁寧に老夫婦に説明をするシーンがあり、それがそのまま本作の"元凶"の説明になっていると思われる。冒頭を適当に観ていると何のことだか分からなくなりそうだが、なんせスローテンポなので退屈に思える人も多々いる筈である。観客の評価は悪くて、評論家(例えばロッテマントマト)の間では評価の高い作品になりそうな、何とも不思議な作品である。

Mina
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