「愛の原動力 ことばにする意味」シラノ humさんの映画レビュー(感想・評価)
愛の原動力 ことばにする意味
まるで、薄暗い古本屋で手にふれた本を開いたとたん、乳白色の絹に黄金色の光がさす中世ヨーロッパの世界が目の前にあらわれたようだった。
冒頭からそんなふうにこの映画の中へ放りこまれた。
隙のない細やかさで再現された歴史ある町の様子に目をみはる。
そのいたるところで繰り広げられるやわらかで華麗でユーモアに富んだダンス。
歌声にあわせ生命力いっぱいにシンクロする躍動感。
クリスチャンからの手紙を受け喜びをかみしめるロクサーヌのシーンの綺麗なこと。
落ち着いたブルーの部屋とブルーのドレスが画面いっぱいに映るなか、天真爛漫なロクサーヌが感情のままに舞う。
透き通るような白い肌に赤らむ頰。気持ちの高ぶりがわかりどのカットをきりとっても絵画のような神々しい色彩感だった。
一方、シラノは剣士としての腕前には自信と実力があるものの、容姿ゆえに恋心はおしころしてきた。
その瞳はあまりにも切なすぎる。
運命の人ロクサーヌに出会ったクリスチャンの恋文を代筆することになるが想いを綴るにつれ心の葛藤は増す。反比例して、それがクリスチャンの文章だと信じるロクサーヌは輝きを放っていく。
なんとも気の毒なシラノ、演じるピーター・ディンクレイジの表情はさまざまな人間臭さにあふれていて見るものを惹きつける。
たとえば、ロクサーヌと会い誤解ながら束の間のよろこびを味わったときは純真さがほとばしる笑顔を光らせる。
たちまわりのときは達人剣士のすごみや勘の鋭さなどを目や口の細やかな動きからも表し、わかっていながら実際よりおおきな体格を想像してしまうほどの存在感がある。
ロクサーヌへのきもちをクリスチャンに気づかれたときの複雑にただよう哀愁感もそうだ。
前線で命がけで約束の手紙を渡すときの責任感にみちた顔は立場を静かに貫こうとする意志の固さをみせ
剣の技、語彙力に長けた頭脳のキレに忍耐力の男らしさを加味し勇敢で魅力的だった。
私たちには感情を表す言葉がある。
コミニュケーションと言う手段がある。
なのに手段もない悲しい戦いのニュースが今このときも世界を轟かせている。
世界は進歩した便利な技術とひきかえに何かをてばなしてきたのか。そのひとつは無垢な愛で対することかもしれない。
〜世界情勢を感じるにつけ、
きもちが揺れているので脱線しかけました🥲〜
原動力は愛だよ。
純粋な気持ちは今言葉にせずどうする?
かつて愛を込めた瞬間を忘れてはいないか?
明日何があるかわからない世界を今も人はいきてるんだよ。
そんなことをも問われてるような気がした。
シラノは飾り立てた言葉が得意だったけど、死の間際、愛する彼女によくやくつたえた言葉は一番ストレートだったのがこころに染みた。
もう飾りたてることなどいらず、天に召されながら魂が語った愛と誇りそのものの言葉だったんだな、きっと。
(修正済み)
コメントいただきありがとうございます。
確かにそうですね。指導者は少年たちと違い、世界を終わらせるスイッチまで携えている。背景にある世の中のしくみにある弱さをどこまで悪用するか…あり得る崖に立っている。いつの時代も穏やかに美しい桜と青い空を前に、そこに続く地の哀しみと私たちがとりこぼしてきた何かがつきささる春です。
ネットの普及でコミュニケーションの機会も手段も増えたのに、却ってそれを遮断することに注力する指導者が増えてるのが本当にこわいですね。
ついこの前まで、テロリスト集団の洗脳的な少年たちへの教育に暗澹たる思いをしていたはずなのに、いまは、強権的な指導者が率いる大国の情報操作のほうが、遥かに大きく広く悪影響を及ぼす事態になっているのが、とても嫌な感じです。暴力的手段に訴える前に、言葉というものがあるのに、なぜ順番を間違えるのか。本当に辛いです。
コメントいただきありがとうございます。
⚫︎映画館ならではのスケールで
はいりこんでいく時間、いいですよね。そして余韻が続くところ^_^
⚫︎孤高の境地…本当にそんな最後でしたね。。。じーんとします。
乳白色の絹、黄金色の光・・・に始まるレビューでまた映画の世界に戻ることができました!ありがとうございます。照明、ドレス、頬の色、質感も色も本当に美しくあの時代に行くことができました。でも私達は歴史から相変わらず何も学んでいないのか、と驚き悲しくなります。