「正統派ミュージカル映画」シラノ はまたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
正統派ミュージカル映画
産まれたときからその容姿を笑われながら、文武両道に育った騎士隊部隊長のシラノ。特に文筆の才能は傑出していた。
素直に思ったことを言い、周囲に迷惑をかけても気にしないシラノだが、同郷の幼なじみである没落貴族のロクサーヌに隠れた想いを寄せている。
ロクサーヌは子爵に想いを寄せられつつも、劇場で一目惚れした若者クリスチャンがシラノの部隊に配属されることを知り、シラノにいじめからの保護と手紙のやり取りを依頼する。
シラノは悲嘆に暮れつつも、もともと叶わぬ想いであったと想いを胸に秘め、クリスチャンのサポートをするが、クリスチャンは教養がなく手紙を書くようなレベルではなかった。シラノは代筆を買って出てロクサーヌへの想いを書き綴る。
手紙を通じて想いを通わせるロクサーヌとクリスチャンだが、ついにロクサーヌがシラノへ逢瀬を依頼する。シラノはクリスチャンに会話で教養のなさがバレてしまうと心配するが、クリスチャンは直接会えればもうシラノのサポートは要らないとロクサーヌのもとへ。
手紙の多様な愛情表現から似ても似つかないクリスチャンのシンプルな言葉にロクサーヌは幻滅する。その夜、クリスチャンとシラノは暗闇からロクサーヌへ声をかけ、シラノが愛情を伝えることで二人は結ばれる。
一方子爵は戦場の指揮を取ることになりロクサーヌの求婚承諾を待ちきれなくなり、無理矢理に婚姻または契りを結ぼうとする。子爵がロクサーヌのもとへ到着する前に二人は婚姻し、子爵は激怒する。シラノとクリスチャンは戦地の最前線へ派遣され、その後決死隊として特攻の命が下る。
クリスチャンはシラノがロクサーヌに送る最後の代筆の手紙を読み、手紙についた涙の跡からシラノの想いを確信し、シラノへ思いを告げるよう伝えて戦死する。
2年後、ロクサーヌは修道院に身を寄せ、生還したシラノは古傷を抱えながらロクサーヌへの思いを胸に友人として交流していた。シラノが死期を悟った日、シラノはロクサーヌに想いを伝えるため、クリスチャンからの最後の手紙を諳んじる。
ロクサーヌは薄々感じていた真実を受け、シラノへ口づけをするが、シラノは安らかな眠りにつく。
名作骨太舞台ミュージカルを映画にしているので話の流れに強引さはあるものの、歌の素晴らしさがすべて洗い流し、鑑賞後の「良いもの見たなー」感が強い。
すべての役者が素晴らしいが、ピーターディングレイジの演技が抜群。コミカル、シリアス両面が違和感なく演じられていて、苦労人としてのキャリアが光る。
それしか侮辱の言葉がないのか、それしか愛を表す言葉がないのか、と率直に話すシラノとロクサーヌの似た者同士が愛らしく、シラノの表現の豊かさはもっとゆっくり味わいたいと思うほどです。
上映館、回数が少ないのが残念ですが、良いものは良いのでもう少し話題になるといいなぁ。