「何かを"愛する"すべての人へ」ハケンアニメ! サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
何かを"愛する"すべての人へ
予告が安っぽそうだけど、面白そうで割と楽しみにしていた本作。吉岡里帆、中村倫也、尾野真千子、柄本佑という華のあるメンツに加えて、アニメを作るお仕事ムービーだという。期待しない要素がない。「大河への道」「五等分の花嫁」と今週もまた楽しみな映画が多いが、公開日には期待値が高い本作をチョイス。さてさて、どんなものを見せてくれるんだい??
こんなにも拍手が送りたくなる映画はそうない。
こんなにも感謝をしたくなる映画はそうない。
こんなにも胸に刺さる映画はそうない。
ありがとう、こんなにも素晴らしい作品を届けてくれて本当にありがとう。最高だった。大袈裟ではなく、私の映画史に残る神作でした。。。
主人公の斎藤(吉岡里帆)は国立大学を卒業し、公務員として勤務していましたが、アニメ会社に就職を決意します。彼女は幼い頃からアニメが大好きだったけど、真面目な両親の教育により勉強ばかりの人生で、親の反対を押し切ってここに来た、というそんなベタな設定ではなく、幼い頃は絵を描くことは好きだったけれどアニメは好きじゃなかったというのです。
しかし、公務員時代にたまたまつけたテレビに映し出されていたアニメに衝撃を受けます。そのアニメをきっかけに「見ている人に魔法をかけるような作品を作りたい」と思った彼女はアニメ会社に就職をし、新人監督としてアニメ制作に勤しんでいくのです。
紙が机に降り注ぐシーンから始まり、斎藤が面接をするシーンから動き出すこの映画。冒頭の掴みはカンペキで、クギズケというものを体感しました。人物を捉えては離して、追いかけるようにグルグルと回っていくカメラワークが最高。ひとつの作品の完成に向かって慌ただしく、忙しなく動いていく制作陣の様子が一気に伝わってくる。こういうのが見たかった、これはもう傑作だ。開始3分でそう思いました。
気合い抜群の妥協を許さない新人監督・斎藤瞳。
作品を売るためには手段を選ばない、瞳を抜擢した柄本佑演じるチーフプロデューサー・行城理。
華やかな容姿とは裏腹に奇抜な言動と行動を行う、中村倫也演じる伝説の天才アニメ監督・王子千晴。
監督を支えながらも引っ張っていく、尾野真千子演じるチーフプロデューサー・有科香屋子。
他にも、古舘寛治、前野朋哉、六角精児、徳井優、工藤阿須加、矢柴俊博などの胃もたれしそうな個性派俳優勢揃い。こんなにも多くの役者を使っているのに、文句なしの配役で本当に楽しませて貰えました。
主人公がアニメ制作に注げる思い、そしてアニメ制作を通じて監督としてだけでなく、人としても成長していく姿を丁寧に見せてくれる吉岡里帆。
その名の通り身振り素振りで王子っぷりを発揮しながらも、支えてやらないと崩れてしまうような弱さを垣間見せてくれる中村倫也。
時に優しく、時に厳しく、人に頭を下げる姿までも美しくて頼れるプロデューサーをちょっとしたシーンの中でも見せてくれる尾野真千子。
そんな3人よりも魅力的なのが柄本佑。
この人、ほんと毎回最高の演技をするよね。
独特なオーラを放ちながら、できる男を最大限見せつける。冷酷そうだけど、実は他の誰よりも監督のことを思っている。カリスマ性を感じさせながら心優しさを見せれるのは柄本佑しかいない。超ハマり役でした。
話の展開は絶妙なスピード感だし、内容は詰め込みすぎてないけど何度見ても楽しめるような要素がいっぱいあって、どこを取っても素晴らしい作品に仕上がっていました。大量の笑えるシーンと美しい伏線回収。最高かよ。この作品ってアニメの映像をどう見せるのかというのが肝になっていくかと思うんですが、そこら辺もよく考えられていて、両者どちらとも制作を通して良さが伝わるし、どちらとも放送してくれないかなと思いました。真剣に見たい。
アニメ制作に火がついた制作陣にテンション爆上がり。それに追い打ちをかけるかのような2作品の最終回。異常なまでに泣いてしまいました。今まで映画で流した涙って、泣けるな〜と思いながらの涙だったのに対し、本作の涙って「え、頬濡れているんだけど」という涙でした。気づいたら泣いている、今までにない感動の仕方。余命10年で過去一泣いたなと思っていたけど、まさかそれを超えるとは。ハンカチ無くて困りました笑 感動と同時に興奮も止まらない。全部見ているわけじゃないのに最終回はまるで今までずっと追いかけてきたファンのように気分が高まりました。
私って、今までこの映画に出会うために映画を見続けていたのかもしれないと思うほどに、笑って泣けて興奮して、面白くて最っ高の作品でした。前を向きたくなる。夢を追いかけたくなる。そんな風に思わせてくれるんですよ。これ以上何を求めるっていうんですか。この映画に携わってくれた全ての人に感謝申し上げます。ありがとう!
語りたいことはまだまだまだあるんですが、それはもう一回映画館で見た時に改めてレビューさせていただきます。愛が凄すぎるが故に、長々と書いてしまいすいません。皆さんもぜひ、最高の映画体験を。
宮崎駿監督は、冒頭5分で見るべき作品かどうか判断するらしいですが、まさに『ハケンアニメ!』は、姿勢を正したくなるくらいの完璧な掴みでした。
僕もこの作品に出会えてホントよかったです。