「映像美を楽しむ作品」ホリック xxxHOLiC 一さんの映画レビュー(感想・評価)
映像美を楽しむ作品
映像美はさすがの一言でした。
鮮やかな色彩が織りなす艶っぽい映像は、摩訶不思議な出来事や人物が登場する作品とマッチしており、上映中ずっと映像に惹きつけられていました。
原作が持っていたコミカルな雰囲気は、この映像の方向性に合わせて拝されており、陰鬱な雰囲気が強くなっています。
しかしながら脚本が雑な印象を受けました。
冒頭の四月一日のアヤカシが視えなくなるようになりないという願いや女郎蜘蛛の美味しくなったらという発言が放置されていたり(美味しくなるのが原作では重要なポイントなので、明確に答え合わせがなされなかったのが残念)、会話が完結する前にカットが変わるなど切り替えが乱暴、登場人物たちがなぜそのような行動を取ったのか理由が不明など気になる点が多々。
四月一日はアヤカシが視えるせいで身近な人を傷つけてしまったという過去から、自分を愛せず他人と距離を置くキャラとして描かれています。自分で作った料理を食べるようになって自己肯定感があがってきたという描写はありますがその過程は描かれず、他人との距離についても強引に関わってくるミセのメンバーはともかく、ひまわりと百目鬼に関しては距離の詰め方が無理やり感があります。またふたりを呼ぶときもいきなり「ひまわりちゃん」と「百目鬼」で名前呼びと呼び捨てで、これまた無理矢理感がある。
また作中で何度か彼の自己犠牲が描かれていますが、百目鬼に対しての自分のせいで他人が傷つくのは嫌だったというのは理解できますが、ひまわりに対しての動機は、どうしてそこに至ったのか腑に落ちない。
ひまわりに関しても、他人と距離を置こうとするのに四月一日に自ら接近していたり矛盾がある。
ラストで四月一日がミセを継ぐことを選びますが、作品全体を通して侑子との関係やミセでの出来事を重点的に描いていないので、いまいち説得力がないなと思いました。
舞台版のホリックでは、映画と同じように長くはない尺でしたが、
オリジナル要素を加えつつもストーリー展開に無理はなく、小気味よい脚本でした。
映像がよく、また短尺でもまとまりのあるストーリーができるのを知っているだけに
ただただ脚本が残念だなと感じる1本でした。