「よくも悪くも蜷川実花監督らしい作品」ホリック xxxHOLiC おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
よくも悪くも蜷川実花監督らしい作品
原作未読ですが、華やかで怪しげなキービジュアルとキャストに惹かれて鑑賞してきました。蜷川実花監督作品ということで、一抹の不安はありましたが、鑑賞後の率直な感想としては、思ったほどダメダメではなかったです。
ストーリーは、子供の頃からあやかしが見える特殊な目を持つため、周囲と積極的に関われず、生きる意味さえ失いかけていた高校生の四月一日君尋が、不思議な蝶に導かれ、怪しげな「ミセ」の女主人・壱原侑子と出会い、その店を手伝いながら暮らすうちに、大切なものや自分の居場所を見つけ出していくというもの。
端的に言えば、主人公の四月一日の成長譚ですが、そこに不思議な力を持つ女主人・侑子、暗い過去を持つ同級生・ひまわり、祓う力を持つ同級生・百目鬼、四月一日を付け狙うあやかし・女郎蜘蛛、彼女に付き従うあやかし・アカグモなど、個性的なキャラが登場し、物語に味わいを加えます。人気コミックが原作だけあって、個性的なキャラと興味深い設定が、作品世界を魅力的にしています。
しかし、これらがストーリーにうまく落とし込めていないような感じがしました。どのキャラも掘り下げが足らず、四月一日への関わりがやや中途半端で、立ち位置が微妙でした。例えば、侑子はなぜ四月一日を選んだ? 侑子の召使いのような2人は何者? 女郎蜘蛛はなぜ四月一日の目にこだわる? ひまわりは何がしたかった? などの疑問がわいてきて作品世界になかなか浸れませんでした。そのせいか、後半で描かれるループシーンやVFXを駆使したクライマックスシーンも、なんだか冗長に感じてしまいました。
とはいえ、神木隆之介くんをはじめ、柴咲コウさん、松村北斗くん、玉城ティナさんら、俳優陣の演技には何の不満もありません。中でも、新たな一面を見せてくれた吉岡里帆さんは秀逸でした。また、蜷川監督ならではの映像美は、本作でもしっかり堪能できます。異彩を放つ映像表現は、本作のようなダークファンタジーとの相性のよさを感じました。
今回は上映後に舞台挨拶中継があり、こちらも楽しむことができました。撮影裏話として、こだわりのメイクや色気の演技指導などの話を聞くことができ、ビジュアルへのこだわりの強さが伝わってきました。こんなところからも蜷川組らしさを感じました。
というわけで、蜷川実花監督の作品であるということをしっかり理解し、ストーリーよりも映像美を楽しむというスタンスで鑑賞すれば、それなりに満足できるのではないかと思います。