劇場公開日 2023年6月2日

「主人公のブチ切れる様に同調できない」渇水 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5主人公のブチ切れる様に同調できない

2023年6月2日
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水道料金は、生きていくために必要な最低限度の費用だから、それを払えない者は、ほとんどの場合、本当の生活困窮者なのだろう。
そのため、料金未納で水道を止める係の人が、仕事とはいえ罪悪感を感じてしまうというのは、そのとおりなのだろうと思う。
主人公は、「流される」まま、機械的に仕事をこなす水道局員で、表向きは料金未納者の事情には立ち入らないようにしているが、内心では葛藤を抱えていることが伝わってくる。
そんな主人公だから、母親からネグレクトされた幼い姉妹には救いの手を差し伸べるのだろうと思って観ていると、なかなかそういう展開にはならず、少しイライラする。
ラストになって、ようやく行動を起こす主人公だが、「流れを変えたい」という気持ちは理解できるものの、なぜ、ブチ切れたのか、なぜ、あのような行動を取ったのかがよく分からない。
主人公が、それほどまでにフラストレーションを溜め込んでいたようには見えなかったため、その突然の爆発に、共感することも、納得することもできないのである。
主人公の行動にしても、そこは、お金をあげたり、水をまいたりするのではなく、「まずは児童相談所に通報だろう」とツッ込みたくなる。
「火垂るの墓」や「誰も知らない」を彷彿とさせるような姉妹の姿が胸に迫るだけに、大人たちの描写が歯がゆいだけなのは残念だった。

tomato
humさんのコメント
2023年9月21日

こんにちは。岩切がなにかを感じていても、ある程度の安定のなかで不満を置き去りにして流されるように生きているだけの様子を姉妹の母は見透かし〝水のにおい〟がするといったように思いました。姉妹との出会いが、自身の家族への思いに重なり見放せなくなり、こどもながらに精一杯に生きる姿はそれまでの半端な自分を揺さぶったのかもしれませんね。鑑賞中は、ぼやけていた部分が皆さんのレビューをみて考えているうちに胸に落ち始めました。

hum