劇場公開日 2022年8月6日

「全てはウタの為にある」ONE PIECE FILM RED 笹本さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 全てはウタの為にある

2025年12月4日
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人気歌手の採用、劇中歌に割かれる尺の長さ。それらを批判する声が多いようですが、私はそれらが悪かったと思いません。何故なら、ウタというキャラクターが抱える、未熟さや憎しみ、空虚さを描く上でAdoさんは最高の適役であり、劇中歌はウタを表現する為にそれぞれ意味がある、無駄な歌や歌詞は1つとして無いものだからです。この映画をウタの物語として見た際、歌は完成された演出と言えます。

ただ、批難されるのも分かるのは。ウタの映画なんですよね、ONEPIECEの映画というよりは。主人公はルフィではなくウタだと思いましたし、ONEPIECEのキーパーソンであり物語の根幹に関わるシャンクスというキャラクターでさえ、この映画においてはウタの物語を彩る要素として使われている。ONEPIECEを観に来たのに、ウタという知らないキャラクターの物語を見せられた、そう感じてしまった人も多かったのではないでしょうか。

私は、ONEPIECEの面白さの1つとして、悲劇を描く巧さを評価しています。Dr.ヒルルクやくまのエピソードのような、人々の思惑が絡んだ結果生まれた、悲しみ、苦しみ。この映画も正しく、ONEPIECEらしい美しい悲劇の話でした。ですから、私としてはこの映画が大きくONEPIECEから逸れるものとは思わずに楽しめたのですが。勧善懲悪やピカレスクロマン、小気味よいルフィの活躍といった部分を期待して観に行くと肩透かしを食らうかもしれません。

笹本
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