「そこそこ」ONE PIECE FILM RED いまいさんの映画レビュー(感想・評価)
そこそこ
単行本をバラバラに読んできた程度のONEPIECE初心者です。
ウタが作中で大量虐殺を図ったというネタバレを見かけ、可愛らしいキャラクターデザインとのギャップに惹かれて鑑賞しました。
ウタは、世界人口の7割を自分の世界に未来永劫連れ込もうという壮大な計画を実行せんとしていたにしては、良くも悪くも人間味のある普通のキャラクターでした。信念を貫くダークヒーローでもなく、何らかの事情でダークサイドに堕ちてしまったタイプともやや違い。表面上は天真爛漫ながらも(ネズキノコの影響もあってか)やや不安定で、ファンからの批判に怒ってしまったり、目の前で人が傷つけられれば焦ったりする、至って人間的なキャラクターでした。「Tot Musica」のPVのイメージからもっと徹底した暗さを期待していた者としては残念でしたが、このあたりは好み次第かと思います。
ただし、ウタの人格の全体像がどうであれ、海賊に虐げられるファンの苦しみに同調していくウタの心情は描写不足だったように思います。ウタがシャンクスを恨む理由も、エレジアを滅ぼしてしまったのが自分自身だと知っていたために、説得力に欠けるように思いました。
ルフィに海賊をやめるよう要求した直後からウタが本性を顕にしていく展開は好みでした。歌唱シーンの映像も「逆光」が最も良かったと思います。「新時代」の歌詞が映画のストーリーを知っている者にはウタの犯行予告であるように読み取れる仕掛けも良いです。作中で歌われる楽曲が強力にプッシュされている作品だからこその斬新な面白さだと思います。どの楽曲も気に入っているのですが、「Tot Musica」は画面の明るさが曲に合わず、「世界のつづき」は口の動きと歌声が合っていないことが気になりました。
最後に、第一話の前にウタが存在していたという設定は、ウタにハマれなかった長年のファンには受け入れ難いものなのではないかと気になりました。半分公式、半分パラレルくらいのイメージで良いのでしょうか?