「尾田氏の世代交代」ONE PIECE FILM RED ヒノトリさんの映画レビュー(感想・評価)
尾田氏の世代交代
賛否両論あるワンピースRED、先入観無しに観てみました。
シャンクスとウタの関係性を縦軸に、ウタと民衆との関係性を横軸に、ウタが何故歌うのかを物語の主題として展開していく。
元はシャンクスへの恨みを原動力に歌い続けたウタ。しかし秘密を知ってしまった時を境にシャンクスに会いたい気持ちが歌う原動力になってしまった。しかし、それを隠しつつもいつしか民衆の期待に応え新時代を作る事を使命として歌い続ける。
そう、あくまで表面的にはウタ、民衆と海賊の対立、そしてシャンクスとウタの親子の感動物語だ。
Adoの歌も素晴らしい。
一方でルフィが脇役、プリキュアちっくに見えてしまうってのも分かった。
ただ、なんと言っても今回の総合プロデューサーに名乗りを挙げているのは尾田先生だ。
この映画を見る次の世代に何を感じて欲しかったのだろう。
尾田氏はウタを今の若者の象徴としてキャラを作り上げたが、同時に現実世界と理想世界を用意し、その世界をつなぐ役割をトットムジカという存在に投影した。
そして映画の本質を歌詞というツールに込めた。
映画より歌詞の方がメッセージがダイレクトに広く伝わるって知っているのだろう。
新時代って自分達の理想の世界を別に作る事じゃないんだぞ。
現実には辛いことが多い。
だからこそ新時代は自分達の手でそれを変えていかなければならないんだ。
人類の普遍の歴史である世代交代は既存勢力に立ち向かう事によってのみ叶えられる。
若者達よ頑張れ。君たちに仲間はいるぞ。オレたちも手を貸すぞって言う、世代交代を意識し始め、どうクロージングしようかとワンピース最終章に向かっていく尾田先生の強烈なメッセージが込められた映画だったんじゃないかなって思いました。