「あの頂上戦争を止めた男が…」ONE PIECE FILM RED creme.renverseeさんの映画レビュー(感想・評価)
あの頂上戦争を止めた男が…
【ネタバレ以外ありません】
何より理解できなかったのが、最終的に「ウタが死ぬ」という結末です。週刊連載中の少年漫画、日曜朝のアニメーションの劇場版として公開されたわけですが、主人公ルフィの幼なじみで、みんながあこがれる大海賊シャンクスの義理の娘として、何年も同じ船で過ごした大事な仲間=ウタの過ちを、だれも止められない…というか、「止めなかった」のは、原作に影響が出ちゃうから。つまり、企画段階から「死ぬ設定」で考えられていたということなんでしょう。
……そりゃ、本編が一番大事ですよ。だから、今までの劇場版でも本編と辻褄が合わないこともありました。そして今回同様に、敵が死んでしまうことが多かった。でも、それはそれなりの理由というか正義があり、お互いの正義と正義がぶつかり合ったのちの決着だったと思います。
今回のウタは、自分とは無関係に暮らす「世界の7割もの一般人」を虐殺しようとしたわけでしょう? しかも違法薬物を使って。そりゃ海軍だって怒りますし、五老星だって懸念を示しますよ。どう考えてもウタが悪い。そして、そんなことを幼なじみ(義理の娘)がしでかしていると分かったとき、ルフィやシャンクスってそんな生ぬるい対応するキャラクターでしたっけ? ルフィはかつて、大事な人が自分の命を粗末にしたとき(例えばナミやロビンに対して)ぶん殴ってでも引き戻しにいきました。困ってお腹を空かしている女の子がいたら、命がけで助けにいく人でした。てか、本作中であの名セリフ「当たり前だ」を言わせてこの体たらくですよ。シャンクスだって、あの時覇気で頂上戦争止めたじゃん。ワノ国も覇気で助けたわけですし、何より「ONE PIECE」本編は、人が死なない作品です。ウタも気絶させて薬のますなりなんなりできたでしょう。あんな取って付けのトットムジカ設定(一旦やっつけたのに人々が目覚めない!からのウタが歌をうたったら開放される)がアリなら、どうとでもできたでしょう。できたのに「しなかった」のは、冒頭に戻って「殺す前提で作ったキャラ」だったからとしか思えんわけです。でも、せめて一旦は助けて、きちんと謝罪させようよ…子ども向け番組で、悪いことして死んで逃げきる行為を「美しい」ように見せちゃアカンやろう…。あと、ルフィが、海賊たちが「歌」を愛してきた理由をないがしろにしすぎ。なんで「ONE PIECE」の海賊たちは、戦闘に不必要な「音楽家」に固執するのか? もちろん赤髪海賊団にだって音楽家がいる。いるのに、ウタウタの実がこんな無駄遣いされていいんでしょうか…。「ビンクスの酒」が別の意味を持ってしまうような、歯切れの悪い使い方をしないでほしかったなーーー。という思いです。