「「負け惜しみ?…取り消せよ今の言葉ッ!!」」ONE PIECE FILM RED 立風さんの映画レビュー(感想・評価)
「負け惜しみ?…取り消せよ今の言葉ッ!!」
フィルムシリーズ最新作にして最低の作品でしょう。ストロングワールドを最低でも20回は観ている私が言うから間違いありません。
まずこの作品はミュージカル寄りの作品なのでミュージカル作品として評価しますが、ミュージカル映画としてもかなり酷いです。
まず私はミュージカル映画があまり好きではないです。理由は映画は映像でキャラクターを感情を表現し、受け手が感じとるものだと思いますが、ミュージカルは主人公が楽しい時は明るい曲、悲しい時は暗い曲という曲調で表現することで受け手の受け取り方がかなり受動的になるからです。ですが素敵なミュージカル映画はたくさんあります。
ララランドやグレイテスト・ショーマンなどの劇中曲は思わずウキウキしたり、うっとりしてしまいます。それは曲にかなり特徴があり、感情のジェットコースターにより映画にライドしているような気分になるからです。他にアナと雪の女王の『let it go』はキャラクターの成長を曲と映像で表現する事で世界で沢山の評価を得ました。
ですがウタの歌は違います。楽しい曲なのか、悲しい曲なのかあまりわかりません。理由は曲によって作曲家の個性がケンカしているからでしょう。特に一曲目のナカタヤスタカとミセスの提供曲の違いがほぼないです。勿論曲自体は違いますが、表現としての違いがないです。どちらも明るく突き抜けた曲であり物語、ウタにライドできません。ミセスのライブに5回以上行った私だからわかりますが、ミセスの曲ならもっと劇中に合う曲がある筈です。
そしてキャラクターアーク、ウタの成長がありません。「私は海賊が嫌い!だってシャンクスは私を捨てたから」→「私の能力の中で永遠に暮らすの」
は??????
なんでウタが無限月詠を使ったのか経緯が謎すぎます。
物語終盤にて「シャンクスが本当は捨ててないの知ってた」
コイツはマジで何がしたいんだ???
ルフィのやることや信念は一貫して「自由なやつが海賊王」です。夢の中で縛ろうとするウタを許しません。一方ウタはブレブレです。
いや分かりますよ?「ウタの歌を求めてる人が沢山いた描写あったじゃん!」と。ですがそれだけで「ああ〜なるほどね!」とはならないでしょう25年ルフィの信念を描いてきた一方でウタは映画一本で感情移入させなければいけないのにこんなに情報てんこ盛りの映画だと無理があるでしょう。
さらに敵キャラがウタである為物語の爽快感がありません。敵キャラに同情させる物語だと観客は本当に倒して良い者か動揺します。ドラゴンボールのキャラは徹底的な悪者です。だから爽快感がありますし、本当に倒せるのか?とワクワクさせます。もう一方でワンピース本編ではドフラミンゴやアーロンのバックグラウンドを見るとなぜあんな行動に出るのか"納得できるが、理解はできない"というキャラがいます。でも人を殺しちゃダメでしょうというくらい悪者にしなければ爽快感はありません。今までのフィルムシリーズの悪者はそのどちらかの属性を持ち合わせたキャラでした。一方ウタは微炭酸くらいの爽快感です。なんとも言えないやるせなさで映画は幕を閉じます。
製作陣には爽快感と同時に突き抜ける感動を与えるフィルムZを30回は観ていただきたいものです。
最後にこれは邪推になりますが、メディア展開や曲提供、ウタの3Dモデル等のお金の関係上かなり作画が悪いように感じました。特にルフィが途中で繰り出すガトリングはカット割、作画枚数も酷く、アニメ版和の国の方ができはいいです。エンドロールに外国人の名前が多くあったように、かなりの枚数を外注しているように感じました。特に塗りは酷いです。
とあげればキリがないですが、おそらく
シャンクスのバトルシーン×シャンクスの娘×ado×ルフィの幼馴染という設定を投げたらこれができたくらいの無理矢理感があり、正直どれかの要素を抜けばかなり良い作品だったのでは?という疑問が残ります。ホントスタンピードってよくできた作品なんだなと改めて実感しました。
最後に。あの「負け惜しみ〜^^」って演出全然良くないし、腹立つからやめろって何回も思いました。それに対して「敗北者じゃけぇ」の語感のよさですよ。そりゃエースもキレますわな。