「求めているものとの乖離」ONE PIECE FILM RED 霧乃さんの映画レビュー(感想・評価)
求めているものとの乖離
今回は歌姫が主役との事で事前情報と合わせ音楽を前面に押し出した映画になるだろうとは覚悟していた。
そして主役として据えられたウタというキャラクターに命を吹き込むために多くの尺が割かれるだろうとも何となくは思っていた。
事前情報からも周知されている通りシャンクスの娘でありルフィとは幼馴染。
どうあがいても今からでは異物感が否めないだろうなと思っていた。
チキンレース(食)とズル。勝ち負けの何連勝。両手にぎにぎ「負け惜しみぃ」。
この時点でどう見てもわかる麦わらのUTAマーク。
いやかわいいなぁウタは。
中盤はメンヘラすぎィとも思ったが劇中の説明や配布された巻40憶をみると
本当に丁寧にウタの心境と症状の進行が描かれていると分かる。
限定的に見えてしまう世界の情報だけでこうだ!と決めてつけてしまう現代にも通ずる闇。
だが何故ウタはルフィだけ自ら手にかけようとしたのか。
ルフィだけは現実から消しておきたかったのか。
それとも絶対に夢の世界へ連れて行きたかったのか。
とてもエモい。
今作は今までにないビターな雰囲気の幕引き。
エンディング後サニーの鼻をなで考え、いつもの決め台詞。めでたしめでたし。
違うだろ!?
俺はワンピースを見に来たんだよ!?
こんな現実から逃げた少女の逃避を見送る悲しい物悲しい映画を見に来たんじゃないんだよ!?
キャラクター的にどうあがいたって本編に出せないから殺すしかないなんて整合性元々映画版で考慮されていないでしょ!?
ナミを助け、ビビを助け、ロビンを助けたルフィのわがままが見たかったんだよ!?
お前の夢の世界を見たけどつまんねぇな!今度は海に冒険に行こうぜ!って
ウタを強引に連れ出す待つだけの子供じゃない、海賊になったルフィが見たかったんだよ!?
世界を敵に回したって一回失敗したって「新時代」を私が作るんだって、
ルフィに胸を張って勝負を挑む、もう一回立ち上がるウタが見たかったんだよ!?
赤髪海賊団音楽家のウタが見たかったんだよ!?
チョッパーもトラ夫もホンゴウも医者が3人もいるんだよ!?
チョッパーやトラ夫を現実に残して脚本的にどうにでも余地あったでしょ!?
歌がテーマなのにソウルキングのブルックに音楽的な出番ないのおかしくない!?
理不尽な現実に「いやだ!」って真正面から叫べるわかりやすい男だったはずでしょルフィ!
エースほどの身内じゃなかったとしてもどうして涙の一つだって流さないんだよ!
なんでそんなあっさり何もなかったかのように空しく最後に叫ぶんだよ!
尺的な問題が所々に見えるせいで歌を売るための売名映画にしか見えないの勘弁して…。
ルフィがルフィらしくない違和感(主観)が所々に見えるせいで結末も相まって本当にすっきりしない。
絶対に無いとは思うがウタが今後出てくる予定があって死んでいない事をルフィが知っているなら自分の中での話の筋は通るけれど…まあないだろうなぁ。
映画としては面白い。アクションシーンは凄いし楽曲も…まあ素晴らしいけど7曲は流石に多い。
だけどこれをワンピースでやる意味はあったのか?とそういう感想が残る映画でした。
「本編に出せないから殺すしかない」まったく同じ事を鑑賞中に思いました。
島耕作の娘、ナンシー・アレン(ニャッコ)という歌姫を、原作中にてやはり整合性の為に殺すしかなかった件がオーバーラップしていました。
「医者が3人もいて」
確かに!ごもっともですね。
ルフィらしくないのも、仰る通りだと思いました。
ストーリーや新キャラをすべて受け入れた上でのご指摘、お見事!非常に納得です。