「間違いなく、過去最高のワンピース映画。」ONE PIECE FILM RED wetさんの映画レビュー(感想・評価)
間違いなく、過去最高のワンピース映画。
今までの「伝説の男」と戦うワンピース映画とは全く違う。
マンネリ化していたシリーズの常識を見事に覆した。
この映画は全く展開が読めない。
だからこそ、すべての瞬間に張りつめた緊張感と新鮮な驚きがある。
それほどに、この作品は非常に挑戦的な作りをしている。
ゆえに、今までのワンピース映画を知る者からはもちろん戸惑いの声も出る。
確かにこれは私たちが作り上げてきたワンピース映画のイメージとは全く合わない。
しかし、それでも、ワンピースフィルム・レッドは不思議なことに今までのどの映画よりもワンピースの核心に触れる、最も原作との密着度が高い映画なのである。
加えて様々な登場人物の行動や舞台設定が異常なほどにリアルなのである。
ウタ・ルフィの理想は深堀りされていき、彼らは説得力を伴ってアニメの中でより鮮明に動き出す。
作戦中の海軍の情報通信の描写は現代の軍隊のそれにも近いもので、今までにない緊迫感を持って描かれている。
明るい画風のワンピース世界で、あえて一般人から見た戦争、略奪を焦点に当てるという、現実のドキュメンタリーのような要素さえ組み込んでいる。
もちろん家族や仲間との絆も存分に描かれている。
そして、最後のとあるシーンではおなじみの麦わら帽子が非常にドラマチックな舞台装置として作用する。
そういう意味ではこの映画は『大人向け』かもしれない。
裏に隠された様々な感情を、細かな仕草から読み取る。そうすることで何倍も深みを増すように、この映画は作られている。
そして様々な新しい要素と、元来のワンピースの要素をごちゃまぜにした上で、とっちらかることなく、綺麗にまとめ上げている点は、流石としか言いようがない。
さらに考察好きや、原作ファンからすれば、興奮で思わず声が出てしまうようなサービスシーンも各所に撒かれている。
約2時間、画面に釘付けであった。
新しく、繊細で、写実的。その一方でワンピースの本筋からは決して離れないどころか、よりその核心へと迫っていく。
今までにないワンピース映画を是非、皆さんにも見てもらいたい。