「お金で買えないものがあることを実感。ワンピースと共に生きてきた幸せを実感する作品。」ONE PIECE FILM RED うたやまくんさんの映画レビュー(感想・評価)
お金で買えないものがあることを実感。ワンピースと共に生きてきた幸せを実感する作品。
この作品の評価の差が、正に表題を表していると思います。ワンピースは現代のように、気楽にリアルタイム以外でTVアニメを見られない頃から始まりました。もちろんジャンプ連載でもそうですが、一週間に一話ずつ、長い年月を掛けて話が進んでいきます。その歩みの遅さで、一つ一つの話や一人一人のキャラクターが心に沁みこんでいくのです。
前作もそうですが、今作でもかなりのキャラが出てくるのですが、かなりの脇役レベルでも色々なシーンが思い出されて胸が熱くなります。これだけ膨大なキャラ一人一人に心を揺す振られる作品はありません。更にワンピースではルフィや仲間が敵をやっつけることがあっても殺すことはなく、敵にも思いや生活があることまで丁寧に書かれています(倒した後に説教したり正義感を押し付けて改心させたり手懐けるのではなく、負ける中で相手が自ら感じて必要な部分だけ変わるので、そのキャラの良さや芯の部分は変わらず残るようなところがまた凄い)。それらは後半は複雑すぎて批判が出るほど作品に思いを込めてきた作者と、それについてきた読者、そして長い年月があってこそです。お金を出せば一気に読んだりアニメを見られる現代ですが、それでは毎週楽しみに観てきた人が得られる感動には遠く及びません。現時点で評価の低い今作ですが、低いほど自分が如何に幸せであるかを実感します。
UTAが中心であることに対する批判が多いですが、シャンクスの娘という事実は、ファンにとってそれだけの重みが十分にあります。そしてシャンクスの戦闘シーンは短いですが、ファンが何十年も待ち続けた夢のような時間です。赤髪海賊団としても同様です。あれ以上長かったら贅沢すぎて逆に毒なくらいです。ルフィやウソップに関しても、ファンならそれだけでご飯何杯でもいけるような嬉しい描写が出てきます。
そして極めつけはエンディングです。秦基博さん提供の楽曲“風のゆくえ”とUTAの歌声の組み合わせと、懐かしい面々の現在の様子が流れるシーンとの組み合わせが素晴らしくマッチしています。エンディングだけでも映画鑑賞料金を払う価値を感じるほどです。