「過去の作品へのリスペクトが一切感じられないチープな作品」チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ くわととろさんの映画レビュー(感想・評価)
過去の作品へのリスペクトが一切感じられないチープな作品
まず最初に個人的に良かったなと思った点を挙げておきます。
ひとつに映像表現と世界観描写。今主流の3Dキャラクターや昔ながらのカトゥーンキャラクター、そして現実世界の人間たちが共存してる世界観の映像表現はすごく良かったです。
次にとあるキャラクターの救済。
予告にも出ているところからある程度予測できるかもしれませんが、ある不遇のキャラクターが活躍する展開は観ていて楽しかったです。
……これ以外にもいくつも「いいな」「楽しいな」「面白いな」となったシーンや描写、表現は沢山ありますが、それらを台無しにするくらい酷い要素がてんこ盛りなのがこの作品です。
以下、悪かった点。
・安易な外見弄り
先程挙げた、とある不遇のキャラクターに関係することなのですが、とにかく外見に対するいじりが酷い。具体的に言うならキャラクターの名前に「ugly(醜い)」という単語が入ってるくらい酷いです。
昨今のディズニーの過剰なまでのポリコレ、或いはLGBTQ団体への配慮は確かに疑問視されても仕方がないことだと思います。ただ、今回の映画は観客に求められているポリコレに左右されない、自由な表現というのを完全に履き違えているような印象を受けました。時流の逆を行けばいいという話では無いと思います。
・とある有名ディズニーキャラクターを安易にヴィランにしたこと。
個人的にはこれが一番許せません。まだ未視聴の方に配慮するため名前は出しませんが、きっと実際に観れば誰を指しているかはすぐにわかると思います。
ヴィランと言っても色んなヴィランが居ますが、この映画のヴィランはとにかく凶悪でいい所なんてひとつもありません。最後も特にフォローされることなく物語から退場するような悪役なのですが、なんとこの悪役、誰もが知ってるようなディズニーキャラクターの末路という設定を持っているのです。
と言っても厳密には本人では無いのですが、ファンとしてはやはりそれで割り切れるものではありません。
ヴィランになったことは百歩譲って許容するとしても、そのキャラクターがヴィランになった理由が非常に大雑把かつ安易だったのも嫌悪感を抱いた大きな要因でしょう。リスペクトというものがまるで読み取れませんでした。
・チップとデールである意味がほとんど無い。
今回の映画は1989年に放送されていた「チップとデールの大作戦」のリブートという触れ込みで宣伝されていました。ただ、蓋を開けてみれば主役は「チップとデール」本人ではなく「チップとデール」を演じていた役者。つまるところ、私たちが知っているチップとデールのキャラクター性とは乖離した存在である、という設定で物語は進みます。確かに別人とは言え、本来の「チップとデール」に通じる要素は持っています。しかし、全くの同一人物では決してありません。
正直なところ、物語を展開させていく上で主人公たちが「チップとデール」である必要性が一切感じ取れませんでした。
この映画は下品なパロディやギャグがかなり多いですが、そのような作風にするのなら、オリジナルキャラクターでやればよかったのでは? と思うのは、やはり「チップとデール」である必要性があるように思えないからでしょう。
……とまぁ、ここまでボロクソに書きましたが最初に書いた通り映像表現は素晴らしかったですし、笑えるシーンも沢山あったのも事実です。若干滑ってる感はありますが、テッドやデッドプールなどのコメディ映画が好きな人は十分に楽しめるのではないでしょうか。
逆に昔のディズニー映画が好きだった人、アニメ「チップとデールの大作戦」に思い入れがある人などには受け入れ難い部分も恐らく沢山あるであろうことをここに明記しておきます。
そういう意味では私には合いませんでした。