母性のレビュー・感想・評価
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湊かなえさんの謎解き
面白い。
湊かなえさんの謎解きらしく、すべての出来事に意味があって、少しづつ解かれていく。
最後は少しスッキリして終わる。
"母と娘"がキーとなっているが、私的には大人の汚さが良く分かる作品だった。きっとこの作品に"親"という存在はいなかったんじゃなかろうか…
まず先にやっぱり告白の様な衝撃は感じられなくて残念ではあったけども、それ以上に内容が私にブッ刺さった作品だったと思います。本当に観に行ってよかったです。3.5かなと思ったけど、4.0にしときます。
ずっと母ルミ子は「母親に愛されたい"娘"」のままで、娘清佳は「母親に愛されたい娘(子供)」で一方通行でしかなかったのはよく理解出来た。
その上で私は「大人って嫌な生き物だな、やっぱ嫌いだな」と思えた作品だった。
多分私の親は毒親で、共感してしまったり、胸糞悪い思いをしたシーンが多々あって、レビューなんてあまりやらないんだけども、感想というか感情を自分の為にも整理したくて、そう思えたシーンを綴っていきたいと思います。
・義母が祖父母の参観日におもてなしをされて「鼻が高かったよ、流石田所の娘だ」発言。大した家でもない癖にw
・2番目に印象的だったのが、清佳「だったら子供の前で言わないでよ」と反論した際に徹底的に追い詰めようとした義母の存在。「うわ…これだから大人は嫌いだ…」と思った。そして機嫌の悪い時の私の母の顔によく似ていて、言っていた内容は違えど、私の運転について口うるさくなっていた父の言い方とも似ているなと思った。あと途中りっちゃんの「だって私働いてるもん」の発言が「私は関係ない」と言ってる様でちょっとイラっときた。幼かった頃の私の家と似ているなとも思った。
子供がやっとの思いで紡いだ言葉を頭ごなしに力で潰す大人の様が本当胸糞悪くて大嫌い。
・1番に印象的だったのがやっぱり浮気がバレた所。
ドラマ「わたしたちはどうかしている」を原作と共に見ていた私的に、冒頭で中村ゆりが出てきた時既に「あっ、察し…」と察した通りの展開で笑ってしまった。
その中村ゆり演じる浮気女が「あなたは世間を知らない、大人は大変なのよ…」と物凄い上から目線に胸糞悪い思いをした。何言ってやがんだ不倫してる癖に…どの口叩いてんだよ、大人なら大人の大変さを教えるのが大人だろ、面倒くさがって「大変なの」で片付けんなや、「小さな絶望の積み重ねが人を大人にするのです」とナナミンの如く教えてやれやクズが。と、僕は思いました、まる。
父親も父親で清佳の事は愛していなかったろうし、あれも"父"ではなくて"息子"のままだったのではないかと思う。
あと気づいたのが、母の実家の玄関を開けると赤い薔薇の暗い絵はまあ火事で無くなってもおかしくはないだろうが、それに相対する様に水色の紫陽花の明るい絵が飾られていた事。
あの場で、あの状況で、清佳はよく立ち向かったと思うし、「よく言った!」とも思った。酒の瓶を割るんじゃなくて、浮気女に投げつければ良かったのよ…!!というか「子供」と思っている子の前でタバコ吸うなよ…そういうとこだよな…"お前ら"…
あの場だけに限った事ではないが、"親"と言う存在はあの場どころか、この作品自体ににはいなかったように思える。
・まあこれは誰もが思ったであろう事だけど、母ルミ子の証言の曲げ方だな。
ルミ子目線…
「お弁当落としちゃった☆」「小鳥さんにしたら?」「(抱きしめて)愛してる♡」
清佳目線…
「え、母お弁当床に叩きつけた…??」「え、お弁当ほっといて父のとこ行く…?『小鳥さんにしろや』あ、うん…(怖…」「(首絞めて)『愛してる♡』」
こういうことってルミ子みたいに歪んでいなくてもやる人はやるよね…
あとなんかあったかなぁ…?
思い出せないだけであるかもしれないしないかもしれないけど、とりあえず最後に駆け落ちした男とりっちゃんが幸せそうでちょっと救われた。そして清佳ちゃんも前を向いて歩いて終わってなんか…「…うん…うん……!」となった。
やっぱり1度きりの人生なんだ、誰かに献身して生きるのなんてゴメンだ。他人に献身するくらいなら自分を大事にして生きていきたいと再び思えた。
私自身、「母か娘か」と聞かれれば圧倒的に"娘"です。というより、生涯どう足掻いても"母"というものにはなれないと思ってます。それは私の母が"母"ではなかったり、姉も"娘"のまま母親になっているからとか関係ないしそもそも2人ともちゃんと"母"であるかもしれないし…"娘"というか「見た目は大人素顔が子供」の私には分かりません。
あと、疑問に思ったのが、大人になった清佳が聞いた自殺した子の母親の証言とルミ子やルミ子の実母が言っていた事「愛能う限り娘を育ててきました」がなぜ一致するのか、腑に落ちません。そんな有名な台詞?これからなるかもだけど…
あと、個人的にこの作品に"親"はいないって私は思うけど、同時に「じゃあルミ子の実母は?」とも思うけど……ルミ子の実母は「娘に愛されたい"娘"」だったらしっくりくるかなぁ…って。あんな無愛想な田所と結婚の話が出てきても、ゴリゴリに後押ししていたし、結婚した後も娘にべったりで、清佳が産まれても尚まだまだべったり…あんなもんか?…私の母と姉以上のベッタリ具合だったな。
りっちゃんの如く誰かにお金を借りようともせず、自分の力だけでお金貯めて、早く実家脱出しよ。
(毒親であったとしても職場の人達には恵まれている方だと思うし、なんなら職場の方が居心地が良いとさえ思える時もありますが、なんとかやれてます。がんばるます。)
原作を読んでませんが
原作を読んでませんが、楽しめたの半分、義母、ルミ子、夫には全く共感できずもどかしさやイライラが半分って感じです。
大地真央がカッコよかったこと、永野芽衣の熱演、そして、少し気持ち悪さが残るも戸田恵梨香の鬼気迫る表情も良かったです。
ただやっぱり、女・子供をターゲットとした、日本の弱いものいじめの構造には、共感できませんでした。
タイトルなし(ネタバレ)
親の子への接し方がいかに子供の親に対する感じ方やその子の考え方に影響するのかということをこの映画を見て学びました。
戸田恵梨香さん演じるルミ子は子供時代から大地真央さん演じる母親から無償の愛を受けて育ち、それに伴ってルミ子自身も母が大好きになり、その好意に応えようと振る舞っていく。
一方、ルミ子はその後母親となり、自分の娘を持つようになるが、その娘への接し方や思いはルミ子の母への愛情を伝えるための手段の要素が強くなってしまい(もちろん娘自身への愛もあるが)、娘も母の振る舞いをそのように解釈して。
母娘の同じ事象を別の視点から描いている部分がすれ違いがうまく表現されていて面白かったです。またある事件以降のルミ子達が義母の家で暮らし始め、義母のルミ子への接し方の理不尽さがすごかったです。
母親という存在
母の母と娘の母という二つの母親像から描かれる興味深い作品でした。
戸田恵梨香さん演じるルミ子の視点から描かれる世界と永野芽郁さん演じる清佳の視点から描かれる世界のズレを第三者の視点から見ることによって、人間の認知のズレや記憶の曖昧さが際立ち、それがこの作品を魅力的にしているのだと感じました。
ルミ子は確かに自分の母親を中心として世界を見ている人物で娘に愛情を注いであげられない人ですが、ルミ子の過去を丁寧に描く事で、義母に対する行動や、娘に対する行為の理由が理解でき、あまり否定的な感情を抱かずに観ることができました。(怖さを感じることはありましたが…)
劇中には考えさせられる台詞も多く、清佳が言っていた女性は母親か子どもどちらかに分けられるという言葉は子どもを産んでも(精神的に)母親になれない人もいるという意味で個人的に刺さる台詞でした。
だからこそ、清佳の最後の台詞の重みも出てきていると感じていて、
実際子どもを産んでみて自分が母親になるのか子どものままなのか、それはその時になってみないと分からない。そういう不安を見事に表現された言葉で、自分はどちらなんだろう、と考えさせられました。
脇を固める俳優陣の演技も光っていて、特にルミ子の義母役を演じた高畑淳子さんのザ・嫌な姑感は見事でした笑。
全体的に”母親とは”を描いていて、母親という存在を再認識する作品となりました。
観せ方が下手
冒頭で首を吊った女子高生はミスリードなわけですが、観せ方が下手だなと感じました。
大人になった永野芽郁を序盤で出してしまうと首を吊ったのは別人だと分かってしまうので面白さが半減。
はじめは、まさか別人だろうと思って混乱しました(笑)
ストーリーは面白いのに勿体ないなと思いました。
実際に親になっても、ずっと娘でいたい女性はいると思うのでリアルでした。
実の親が死んでも誰かの娘になろうとする戸田恵梨香は不気味でした。
大地真央の演技は圧巻。
男性と女性で感じ方は変わるかもしれません。
女優の無駄遣い
すごくガッカリだった。「母性」と言うタイトル、私が思ってたのと、なんか違うって感じ。
戸田恵梨香さん凄く好きな女優さんなんだけど、なんて使い方してくれたんだ!と言うのが私、個人の感想。でも途中退席しなかったのは最後にアッ!と驚く何かがあるのかも・・と期待して観てたけど・・・・(失笑)
結局、何が言いたいのかわかんない映画
私が脚本家なら
「マザコン娘の母性探し」とでもタイトルつけただろう
演技がすごい
戸田さんと永野さん、そして高畑さんの演技がすごい!
圧巻でした😳
母と娘の視点はそれぞれ違ってて面白かったです
母からの視点は抱きしめていたけど
娘からは視点は首を絞めていた、、
娘からみる視点はとても威圧的で怖かった、、
さすが戸田さんです!
柔らかい表現で言うと
母のルミ子が1番変わってる人😅
女は母か娘か
と言うのは個人的にちょっとわからなかったな〜
もっといろいろあるのではないかと思いますが、、
そして原作がどんな感じなのか読んでみたくなりました!
いろいろ考えさせられるとてもいい映画でした!
ありがとうございました😊
わかってた、しんどい
題の通り"母性"、ひいては"母娘"という関係をめぐるお話です。
「毒親」という言葉に収束させるにはあまりに複雑で屈折した思いが交錯し、祖母・母・娘へと連続する女の"性"がじめっと描かれています。
プロットとしては母視点、娘視点でそれぞれの心象を描写しながら物語が進行します。
お嬢様家庭で育った母視点ではお淑やかで丁重な娘への注意は、娘視点では非常に威圧的に映っていたのはかなりインパクトがありました。
娘にとっての母への畏怖や嫌悪、自身に対する愛の欠如を理解した原風景とも言えるシーンだと思います。
終盤の娘の自殺未遂は、これまでの登場人物たちの陰鬱とした感情が一気に発露されたような出来事に思えます。
事実、これを契機になんだかんだで登場人物たちの人生が次へ、前へ進みました。
各々の思想や感情がどれほど行き場を失い吹き溜まっていたのか。
傍観者である私からすると「一段落は着いたのかもしれないけど当人同士でめちゃくちゃ尾を引くんじゃ…?」と思わなくもないですが、そこを不思議と爽やかで前向きに終わらせるのが湊かなえ作品らしいなと思いました。
「女は母と娘の2種類」というセリフがとても印象的です。
母の母の娘は母
サスペンスなのかと思いきや、少し哲学的な人間ドラマでした。
母親が、子供を溺愛するが故に暴走するパターンは王道なれど、究極のマザコンの姿はあまり無かったかも。しかも、あからさまな洗脳ではない洗脳。3代の女性のどこにも悪意が無く人のために尽くして善良であるが故に、余計に残酷さが感じられる。
すべて母親の勧めにあわせて生きてきたルミ子。結婚相手も母親の意見になびいて決めるほど。やがて娘の清佳が産まれ、一家三人で幸せな家庭を築く。時折訪問してくる祖母に喜ばれるように清佳を躾けるルミ子だが、祖母の意向を汲み取らない清佳が許せないルミ子。そのあたりから、二人の関係が怪しくなってくる。母親が絶対のルミ子と、そんな母に振り向いて欲しい娘の清佳というややこしい闘いが始まる。
ルミ子の配役は戸田恵梨香、娘の清佳は永野芽郁、祖母が大地真央。なかなか妙味のあるキャスティングだ。特にルミ子、清佳はかなりの難役。おそらく、役者が変われば大きく違った解釈になるくらいの、深さのある脚本と思う。
母娘の一方通行の好意は、切なさより不気味さを感じさせる。キリスト教の「他人を愛せよ」の教えが並走し、ルミ子がそれをひたすら貫く事で、関係がより歪む。それが皮肉なく描かれることで、物語の異質さが浮かび上がる。そんな違和感を感じながらの鑑賞となるのだが、物語が進むのにつれ、居心地の悪さも感じるほどのストーリー運び。人には、母性は温かく、優しくあってほしいという願望があり、その隙間を的確に突いているのだ。心地よいものではないが、印象的であることは確かだ。
個人的な好みとしては、ラストは少し余計だったかな。ルミ子が部屋の電気を消して、ドアを閉じるところで終わったら、余韻が残ってよかったのではないかと思う。その後の清佳のシーンは、救いと含みはあれど、少し平板な終わり方に思えた。
内容の好き嫌いは分かれそうだが、映画としては良い作品だと思う。
母性
娘として愛されたい人のふたり
それぞれの解釈で人生を進める
女性は子どもを産む事が可能です
母性はどこから生まれるのか
よく「痛い思いをして生んだ子だから」みたいな言葉が
昔から語られる
私は男性なので娘から母になるその気持ちはわからない
物語はまるでおとぎ話のような「小さなおうち」
高畑淳子さんの演技は見事です
お菓子が唇につけっぱなしのところは少しクスっとなった
最後は
母から愛されたかった娘が母になることがわかるところで終わる
でも彼女は動揺のせずに
決意が感じられた
きっと未来は明るいはず
母性とは何なのか?
母性とは何なのか?
「娘を愛せない母」と「母に愛されたい娘」2人の半生を過去を振り返るかたちでそれぞれの視点から描いている作品。
同じ場面でも、母の視点と娘の視点では全く異なるように映る。思い込みや記憶の曖昧さ、それが愛情に関することだと不気味さを感じるなと思いました。
あと主旨とは離れてどうでもいいことなんですが、ルミ子の母が自殺した後、ルミ子が清佳を引っ張り出すシーンで「届くの??」と物理的な位置関係が気になってしまった 笑
ストーリーは、私が男ということもあり、母娘の物語という点であまり共感できませんでした。ミステリー要素も特にあるわけではなかったので、あまり自分には合わなかったかなというのが正直な感想です。
その言葉が刃になる
原作未読ですが、
湊かなえ原作のドラマや映画は無垢な子供に責任を負わせる悲劇がいつも興味深いので気になって鑑賞。
絵に描いたようなメルヘンなお家での生活と高畑淳子御殿との対比がよかった。
そして、淡々と描かれていく母の狂気。
わざとらしく狂った描写やセリフがないので、白けない…ある意味安心して見ることができます笑
娘が初めて帰宅が遅くなった日の涙の理由が、
なんだ父親か…母親か…えっそっち…やだそんな思いつめないで〜!と涙なしには見れない、、
あと、父親とその相手の嫌な感じが絶妙。
実の子に「不憫で見てられない」と他人事のように見切りをつける父と、
子供相手に必死になり、
それを聞いた子供がどんな思いを抱えて生きていくのかなど考えもせず、
簡単に傷つけられる真実でぽろっと突き刺す女と。
自分のことしか考えない大人がよく描かれていた。
それを聞いて謝る娘の涙に苦しくなるほど泣ける。
最後、娘が名前を思い出すシーンは小説ならではの言葉だと思ったけど、
本を読んでいる瞬間をそのまま持ってきたともいえる、
ジェンガの真ん中を抜き取ったときの倒れる前の静けさのような、引き込まれる一時だった。
ちょっと不服なことをあげると、
エンディングの曲が違ったら、もう少しもやっとした感覚を残せたのではと思ってならない…そこは感動映画でした雰囲気出さないでよかった…
母性という呪い
これは、ミスリードどころか完全な予告詐欺のレベルです。
序盤でいきなり大人になった永野芽郁が登場し、挙げ句に自殺した女子高生の話をしてる。
これも伏線で、何かしらの捻りが入るのかと思いきや、そんなこともなく。
あれは絶対、終盤まで出しちゃダメなやつだと思う。
戸田恵梨香による2パターンの演じ分けや、高畑淳子の老衰した喋り方などは目を瞠るものがある。
中村ゆりは、どうしてもラ行の滑舌が気になるが、その他の演者は良かった。
母の“つもり”と娘の“感じ方”の違いという部分で、小説では視点を変える必要があったのだろう。
でも映像なら、そして戸田恵梨香と永野芽郁なら、芝居でそれを表現できたんじゃなかろうか。
筋立てに影響を与えるほど効果があったようにも思えないから、余計にそう感じる。
深く考えず、そのまんま映画化した印象です。
呪いとも取れる『母性』の連鎖に空恐ろしさも感じ、田所家のそれとの対比も興味深い。
ただ、メディアの違いが活かされていないのが非常に残念でした。
『母性』は愛の性質ではなく、特質に入る?!
戸田恵梨香さん演じる『母』はお嬢様育ちでお母さんへの愛情が強く物事の判断が全てお母さんの感性で決めていた。結婚相手に関しても、趣味の絵画教室でたまたま一緒の男性の絵をお母さんの意見をもとに気に入り、結婚を決めるほど。いわばお母さん依存症。
永野芽郁さんはそんな『母』の『娘』を演じる。娘は上記の特質を持った母が育てるため、祖母が喜ぶことを母が望むみ、それをなす生物共生の関係である幼少期を迎える。
ある日嵐が原因で家の周りにある樹木が家を襲う。たまたま家に泊まっていた祖母と一緒に寝ていた娘の部屋に樹木が入ってきてしまい、箪笥の下敷きに。別室の母は家が引火している中、半開きで固定された扉から祖母を助けようとするも、娘より祖母を助けたい母に対し、母に娘を助けるよう指示する祖母の入れ違いが生じ……
物語は大きく3構成に分かれており、母親のサイド、娘サイド、母娘混合となっている。各サイドでは基本同じ構成の回想シーンであるが母、娘互いの見え方がズレており、見どころである。最終章では家が焼けた後の、夫の実家へ義母と未婚の妹との生活の内容になる。
やっぱ湊かなえさんの作品描写は、なんというか日常生活を送る私たちの痛いところを突いてくる。人間の他者への愛は備わったものとは限らず、むしろ親や友人など他社からの刷り込みが原因で成り立っている。愛という言葉はある意味何にでも姿を変えられる曖昧な性質であると思いました。そして今作の中核『母性』はその性質の中でも特に異質な感情なのかと思いました。
俳優陣の演じもさることながら特に文句のつけようがないです。戸田恵梨香さんはじめ、義母の高畑さんもかなりいいお芝居でした。
邦画ならではの小さいフィードに対して、かなり濃く深い、根が太い物語です。あと個人的ですが、もう少し母娘の入り違い幅があったら、又はそれにちなんだエピソードが増えると見ごたえあると思いました。
母と娘、深い関係
戸田恵梨香と永野芽郁と言うと人気のTVドラマがあったが、いつもの事ながら…。
でなくとも、綺麗で可愛くて実力もある二人の共演は惹かれるものあるし、何より湊かなえの小説の映画化。いつまでも『告白』級を期待するのは酷だが、それでもやはり期待してしまう。
この秋、実は結構気になってた邦ミステリー。
だけど本作、ドラマファンは勿論、湊かなえ印のミステリーとしても、アレ?…と思うのではないか。
勝手に先入観を抱いてしまった方も悪いが、本サイトの的外れの解説も悪い。
女子高生の首吊り自殺遺体が発見され、これが永野芽郁。
発見したのは、母・戸田恵梨香。
事件は何やら謎めき、この母娘の間に何があったのか…?
食い違う母の証言、娘の証言。真実は衝撃と大どんでん返し…。
…っていう、THEミステリーだと勝手に思い込んでいた。
そもそも自殺した女子高生は永野芽郁ではない。あくまでこの事件は本筋へのきっかけ。
この事件を知った永野芽郁演じる若い女性が、自分と母の関係を回想していく。
母の証言と娘の証言と二人の証言から。
戸田恵梨香演じるルミ子。お上品なお嬢様。時代設定は定かではないが現代ではなく、昭和後期辺りか。
出会いがあって、結婚。娘・清佳も産まれる。
お洒落な家で絵に描いたような幸せな暮らし。
が、ルミ子から幸せさを感じられない。夫や娘と触れ合っていても。
彼女が幸せを感じる時。それは、実母といる時。
男だったらマザコンと言う所だが、この母娘の関係性は何と言うのだろう。
とにかくルミ子の実母への愛が異常なほど。母を愛し、愛され、喜ばれ、奉仕するのが何よりの幸せ。
一方、自分の娘に対しては…。妊娠した時、お腹の中の生き物が私の血肉を奪い、お腹を破って出てくるなんて言うからして、自分が母親になるなんて思ってもなかったよう。
実母は初孫の清佳を愛してくれる。それに嫉妬すら滲ませる。市販のプレゼントが欲しいと言った時、実母お手製のプレゼントが拒まれているとさえ思い込む。
私は永遠に母の娘。それは確かにそうかもしれないが、度を過ぎている。
特に驚愕したのは火事のシーン。タンスに挟まれ、身動き出来ない実母と清佳。ルミ子が助けようとしたのは、実母。子供は死んでもまた産める。お母さんはお母さんしかいない。…いやいや、娘だって同じ娘は産まれない。
助かったのは清佳の方。記憶が朧気。
しかしこの時、衝撃的な事が…。
これ以降、母と私の関係は…。
夫の実家に身を寄せる事に。
義母は口うるさく陰湿な鬼姑。ルミ子には冷たく当たり、こき使い、清佳にも厳しく、自分の娘には甘い。
高校生になった清佳は意地悪な祖母や堪え忍ぶ母に疑問や不満。
母を庇おうとして祖母に口答えしたら、母から叱られる始末。
もっとおばあ様を敬いなさい。
実母を亡くしたルミ子の母親への献身は、義母へ。
あからさまに嫌われ邪険にされても、尽くして尽くして尽くし尽くす。
一方の清佳も母の愛情を欲す。母の教え通り誰かに親切にするが、母からの心底の愛は…。
義母の実娘が駆け落ちして家を出た事から、家の中の雰囲気はさらに険悪に。
助け船すら出さない夫。そもそも結婚当初から愛情はあったのか疑問。清佳は父の浮気を知る。浮気の理由は、堪え忍ぶ妻の姿がしんどいから。
清佳は火事の時何が起きたか知る。私を助ける為、祖母が…。
あるシークエンスが、ルミ子の証言と清佳の証言では食い違う。ルミ子は娘を抱き締めたと思い、清佳は母に首を絞められた、と。
先入観で抱いていたミステリー要素でここがポイントかなと思ったが、そうでもなく。
主軸は、愛憎渦巻き、息が詰まるような母と娘の関係。
“イヤミス”の女王と呼ばれる湊かなえ。本作はイヤミスらしいイヤミスではないが、それとはまた違う心地悪さがあった。
本作には様々なタイプの母や娘が登場する。
聖母のような愛溢れる母。それ故に、娘はその愛を異常に欲し…。
ステレオタイプのような意地悪姑。しかしあるシーンでのルミ子への叱責に、ルミ子より母親らしさがあるとも思わせた。
実母を愛し、我が子を愛せない母。いつまでも誰かの娘でいたい。
そんな母との関係や愛に苦悩する娘。大人の顔色を窺う。
戸田恵梨香のくたびれ感や内に秘めた複雑な感情、永野芽郁の純真さ、大地真央の愛情深さ、高畑淳子の強烈インパクト…女優陣の熱演/怪演は見応えあり。
清佳の少女時代の子役は、ひょっとしたら永野芽郁以上の巧さ。
本当に何度も忠告するが、事件絡む本格ミステリーを期待してはいけない。
期待外れとかつまらなかったとかではないが、どうしても拭い切れぬ思ってたのとは違う…。
おそらく、男が見たらいまいち分かり難いのだろう。ましてや妊娠などしないし。
女性だったら抉るほど何か感じ、響くのかもしれない。
その監督に廣木隆一はちと合わなかった気がする。作品にムラがあるは元より、女性を主人公にした作品は過去にあっても、本作の描くテーマとはまるで違う。それに、サスペンス/ミステリーにも乏しい。
本作が女性監督だったら、例えば男女の主人公問わず人を深く描く演出に長ける西川美和監督とかだったら…?
女性ならではの視点で、おそらくまるで違う作風になっただろう。
劇中の印象的な台詞。
女には二種類いる。母と娘。
母でいたいか、娘でいたいか…?
誰かの娘として産まれる。愛される。妊娠/出産し、今度は自分が母になる。愛す。
ここが本作の要だろう。湊かなえが“これを書けたら作家を辞めてもいい”とまで言った突き付けたテーマ。
単純な男とは違う女性の心情。
母性とは何処から来るのか。持って生まれたものか、育まれていくものか。
父性なんかよりずっと深い。
母性とは深い。
共感まではできない。
同時期に公開された「ある男」と「母性」。
両方とも家族の内面をえぐり出すような内容であるが、軍配は「ある男」かな。
自分が男だから母性を汲み取れなかったのも原因かもしれない。
愛情が祖母⇔母←娘 という構図で進んでいく。愛情のかけ方が過剰になると、その喪失は母の無関心や攻撃にもなっていく。その怖さがどのシーンにもにじみ出ている作品。
母性
人の娘でもあり、人の母でもあるので公開前から気になっていた映画。
母娘それぞれの視点からそれぞれの抱く思いを観ていくのはとても考えさせられました。母の想い、娘の想いどちらにも共感が出来、どちらの苦悩にも納得できました。
いつも認めてくれる、欲しい言葉以上の言葉をくれる大地真央演じる実母の喜ぶことをしたいと思う戸田恵梨香演じるルミ子。
ルミ子のやること全てが実母を喜ばせることに通じていて娘時代はそれはそれは幸せそうな…。交際や結婚も自分の印象や想いではなく実母の評価で180度考えを改める。並の娘ではありません。永野芽郁演じる清佳を授かるも自身が母になることを受け入れられない。出産も母を喜ばせるため、だから生まれてからも清佳が実母を喜ばせる行動は褒め称え、そう行動するように教育していく。
総てにおいて実母が中心に居るかのような行動に異常性を感じましたがそこが良かった。
目上の人に認められたい、喜んで欲しい。この気持ちが痛いほどわかります。私自身そんな子供時代を過ごした記憶が呼び起こされました。
娘の清佳に対してルミ子目線では優しく、諭すように、道を示すように語りかけて育ててきた。そんな視点がなんとも辛い…
その後、自宅での災害で実母が亡くなるとルミ子の心の安寧がなくなり、更に清佳との心の距離が離れていく。
第3者として端から観てると何故清佳の気持ちに気がつかない?と思われるシーンも当事者ともなればこうなるのかもしれないと思わせる戸田恵梨香の演技に私はすっかり引き込まれてしまいました。幸せな娘時代、穏やかな新婚生活、災害をきっかけに荒んでいく容姿疲れきった姿それでも自分の置かれた環境に順応しよう、お世話になっている高畑淳子演じる義母に認められよう、好かれようとしている姿にルミ子とはこういう人間なのだと見せつけられました。とても良かった。良いか悪いか正解や間違いではなくルミ子は一つ芯の通った人間だと。
一方ルミ子の娘、清佳。清佳からすればおばあちゃんである大地真央は無償の愛を与えてくれる存在。しかし大好きな母(戸田恵梨香)は…言葉を繋げないところに幼いながら感じるものがあったのでしょう。母が何をすれば笑い掛けてくれるか、どうすれば優しく接してくれるか、母が大好き過ぎた故に感情を汲み取りすぎたのか母の顔色を伺う子供へとなっていく。
子供の頃にはよくありがちな自分の考えが大人には伝わらない現象。私も子供時代には何度かありました。大人になってからあれは…と思い返せますが、その時は何故母の機嫌を損ねたのかわからない時があったりもしました。映画では小鳥の刺繍とキティちゃんが描かれていてとても共感できる部分でした。このシーンでルミ子が絶望したかの様な驚きの表情と手元から誤って落ちてしまう弁当箱、打って代わって清佳の回想でのルミ子鬼の形相と叩きつける行動の違いに双方の主観がこの差を生んでいるのだろうと思われます。
おばあちゃんが亡くなってからの清佳もまた苦労の連続。母が話を聞いてくれるとかわいそうな同級生を助けてあげた話したり、住んでいる田所家の祖母から酷い仕打ちを受ける母を助けようと口論になったり。「かわいそうな子は助けてあげなさい」の母の言葉に従い従姉妹を助けてあげたら…。
やること為すこと全てが裏目にでる、どうして母は喜んでくれないのか、愛されないのか、どうすれば、何をすれば。娘の清佳の気持ちも痛いほどわかります。やはり母を追い求めてしまうものなのでしょうね。その根底にはただ愛されたい。清佳の愛とは撫でてもらうや優しく微笑んでもらったり話を聞いてもらったり。そんな小さなことで良かったのでしょう。自分が幼かった頃思ったことと一緒でとても切ないです。
どこまで行っても愛がすれ違う母と娘。
辛い。どちらもどちらの視点もその立場ならそう思うのではないのかと納得してしまう。ただ辛い。どこまで行っても辛い。
しかし、ふとルミ子がこうなってしまったのは実母のせいなのでは?と思ったり。極度のマザコンでしたから…中々娘のマザコンはいないです。
ルミ子にしても清佳にしても母を求めていました。まるで呪いのように。だからこの作品は私にとってはとても良く、母と娘の見えない関係を形にしてくれた素晴らしい映画でした。清佳も映画終盤母になろうとしていました。清佳はどんな母になるのか?良くも悪くも実母の教えは引き継がれます。そして自分がして欲しかったことをしてあげたくなりもします。子供の頃の自分を慰めるように。
私も母としてそうです。他の方はどうかわかりませんが、この作品は自分の事を描かれているような錯覚を起こし、感情移入の激しい作品でした。辛くしんどい内容ですが、心に余裕と力があるときならば呑まれることなく観れるのではと思います。
1つだけ気になったのはルミ子の懺悔の時の最後、私が間違っていたと言った言葉が引っ掛かり原作を購入しました。
その事に関しては原作になかったので映画のオリジナルかな?と思っています。
感情移入出来なくても惹きつける力
感情移入出来る登場人物が
殆どいないのに惹き込まれる作品の力。
ホラーでは決して体験出来ない
人間の残酷さを丁寧に届けて頂きました。
もし自分が当事者だったら
二度と母親とは思えなくなる
ルミ子役戸田恵梨香さんの
完全にアウトな発言や行動。
でも理解も納得も出来てしまう。
それが人間。
本作で唯一圧倒的な陽を纏う
母親役の大地真央さんを観ながら
湊かなえさんとは真逆な性格のキャラ?
そんなことを思ったりしました。
瀬戸の花嫁
時代ははっきりとはわからなかったが、ルミ子と言えば「瀬戸の花嫁」。ヒットしたのが1972年。同じ年には映画『母性ドン・アドベンチャー』もヒットした。すみません・・・想像では新婚時代は1972年頃でしょうか。
母であるルミ子(戸田恵梨香)と娘である清佳(永野芽郁)、それぞれの視点から過去のことを語る手法。とは言え、予想していた展開とは違い、二人ともほとんど真実を示していたような気がします。母性とは何か?自分が産んだ子なら何がなんでも守るといったこと以外に、本能的ではなく後天的で学習するものじゃないかという疑問も投げつけてくる。
お嬢様育ちだったルミ子がバラの絵を通して田所哲史と知り合い結婚。ほどなく清佳が誕生して、森の中の一軒家で幸せな家庭を築くのだが、ある事件が・・・といった過去映像。母親(大地真央)を愛し、娘・清佳にも祖母に気に入られるように教育するという異常な愛。娘よりも母親が好き?といった関係は興味深いけど、違和感ありすぎてついて行けない。
そんな新婚時代の風景はまるで童話の世界。壁や衣装などがパステルカラーで、絵画や小物が対照的でリアルに浮かび上がっている。どことなくティム・バートンの世界。中島哲也監督でいえば『告白』というより『パコと魔法の絵本』の雰囲気だ。会話も何か不自然さが目立ち、英語を直訳した日本語のような気がした。
結局は田所の実家に世話になることになった家族だったが、ここではキツい嫁姑問題が溢れていた。義母となる高畑淳子の異様なまでに嫁をこき使う姿は昭和のドラマそのもの。夫が助けてあげてもいいのにと思って見ていても、彼は徐々に空気のような存在に。長男哲史よりもその妹・律子(山下リオ)に愛情を注いでいる様子も異常だ。学生運動やってたり、父親に反抗できない性格だったことが原因なのだろうか。
まぁ、イヤミスの女王の作品なので期待していたけど、驚愕するほどの展開じゃなく、拍子抜けしてしまいました。母と娘の視点で語られながらも、ルミ子の親友(中村ゆり)の視点というか台詞からの方が面白く、そこまでお嬢様扱いされていたんだとビックリ。また、飲んでいた居酒屋が律子の店だったという意外性もあった。個人的感想としては、抱きしめたのか首を絞めたのかという食い違いよりも面白かった。そして、一本調子で怒ってばかりの高畑淳子さん。最後には素晴らしい演技で締めてくれた。
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