「大日本沿海輿地全図の誕生秘話」大河への道 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
大日本沿海輿地全図の誕生秘話
原作は立川志の輔の創作落語。
企画は主演した中井貴一。
志の輔から2時間弱の落語のDVDを借りた中井は、映画化を熱望。
発案から足掛け6年遂に完成したのが「大河への道」です。
日本初の全国地図。
それが大日本沿海輿地全図です。
今から200年程前の1821年完成とあります。
それを完成させたとされる伊能忠敬は、千葉県香取市が生んだ偉人。
香取市市役所の地域振興策としてアイデアを出し合っていた際に、
市役所課長・池本(中井貴一)が苦し紛れにだしたのが、
“チュウケイさん(忠敬)を主役にNHK大河ドラマを作ってもらおう“
との企画でした。
しかし伊能忠敬は『大日本沿海輿地全図』の完成の3年前に死去していた
・・・と言う事実が判明。
この映画は忠敬死去から3年。
その死を隠して地図を完成させた弟子たちの苦労や紆余曲折を、
香取市役所の面々が現代の場面と江戸時代の場面を別の役で登場する
・・・面白いダブルキャスト(?)が効果覿面、最高の仕上がりです。
市役所職員の池本/江戸時代は高橋景保:中井貴一
同じく木下/又吉:松山ケンイチ
観光課の小林/忠敬の妻エイ:北川景子
安野/トヨ:岸井ゆきの
梅さん/医者の梅安:立川志の輔
ネギ抜きのネギ鴨蕎麦を頼む山上/忠敬の死を探る神田:西村まさひこ
和田/忠敬の一番弟子綿貫善右衛門:平田満
千葉県知事/徳川家斉:草刈正雄
脚本家の加藤/忠敬の墓のある寺の和尚:橋爪功
このダブルキャストが予想外に効果的で親しみやすかったです。
中井貴一の演じる高橋景保は伊能忠敬の20歳も年下の師匠(出てこない)の
息子。幕府との折衝に当たります。
50歳で隠居してからは趣味の暦や天文学や測量を極めた伊能忠敬は、
江戸で4度目の結婚をします。
忠敬が才女と認めたエイ(北川景子)は詩人であり書家でもあり、
地図の清書を実際に史実でも手伝ったとのこと。
北川景子はチャキチャキの江戸っ子キャラで鉄砲な性格。
(ため息が出るほど美しかったです)
この映画のハイライトはなんといっても『全日本沿海輿地全図』が
徳川家斉(草刈正雄)にお披露目されるシーン。
大広間(100畳とか200畳位ある)
その大広間に引き占められた地図。
その大きさ、美しさ、完成まで17年の苦難を背負った神々しさ。
圧巻でした。
大日本沿海輿地全図!!こそが「大河への道」の真の主役。
志の輔さんが言ってました。
“落語が映画になるなんて夢みたい“
中井貴一さんも言ってます、コロナで中断に次ぐ中断。
きっと予算も底をついて大変だったことでしょう。
(松山ケンイチはイキイキ魚のように跳ねてました)
(中井貴一の貫禄ある江戸時代と、調整型の市役所の何でも屋)
北川景子、橋爪功、西村まさひこ、岸井ゆきの。
申し分ない好演でした。
草刈正雄も素晴らしかったです。
ただひとつ文句をつけるとしたら、DJ梅ちゃんに小学生が問いかけます。
“どうして全国各地を巡って測量しないのですか?“
“CGもあるのに・・・“
ですよねー。
九十九里浜みたいな海岸線ばかりでしたねー。
歩測(一歩68センチなら100歩で68メートル)
伊能忠敬の歩幅は68センチ。
ちなみに中井貴一は歩幅99センチ。
(伊能忠敬は身長150センチ程だったのでしょう)
歩測ばかりでしたね。
伊能忠敬は暦と天体観測に詳しく《緯度》を空の天体観測から測り、
地図の実測に使用していたとの事。
(経度は江戸時代にはまだ無理だったのですが・・・)
断崖絶壁は船上から測量もした。
Wikipediaを読みますと、本当に蝦夷地(北海道)に始まり、九州まで、
歩きに歩いた17年。
70歳で1818年に亡くなりますが、現在なら90歳の高齢です。
余談ですが、全日本沿海輿地全図は、
大図=縮尺36,000分の1。
中図=216,000分の1。
小図=432,000分の1。
大図は214枚。
中図は8枚。
小図は3枚です。
徳川家斉公がご覧になったのは214枚の大図だったのでしょう。
だからあの大迫力。
「よう作り上げた!!どれほどの難儀が!!」
「大義であった!!!」
将軍さまならずとも下々のわたしめも、感嘆、感動、感涙でございました。
琥珀糖さん、「エルヴィス」の方にコメントいただき、ありがとうございます。
プレスリー自身の魅力が、バズ・ラーマンの映像マジックをも凌駕している気がしました。
中井貴一は、日本で随一の喜劇俳優だと思います。優れた俳優はコミカルもシリアスも完璧です。
草刈正雄の家斉の「これが余の国か。美しいのう…」という台詞が心に残ってます。
琥珀糖さん
フォロー&コメントありがとうございます。
そうですよね、『ふぞろいの林檎たち』山田太一さん原作に各回様々な演出家の方々がその力量を競い合う本気度合いが懐かしいです。
まぁ家庭用ビデオもあまり普及してなかった時代、毎週その時間帯は予定を入れないよう気をつけていたこと、思い出されます。
正直最近は毎週録ってあるのに観ていないドラマが貯まりつつあります。
最近ちょっと映画鑑賞&レビューをサボり気味ですが琥珀糖さんはじめ素敵なレビューに出会うたび「頑張らなきゃ!」って思う今日この頃です。こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。
共感ありがとうございます。
本作、終盤に登場する日本地図は非常に美しかったです。圧巻でした。
本では読んだことがありますが、
気の遠くなるよう地道に繰り返される地図作成作業には脱帽でした。
老婆心かもしれませんが、
最近、レビュー投稿数が減っているようですが・・・。
健康に留意して、映画生活をお過ごし下さい。
では、また共感作で。
-以上-
ダブルキャストと書きましたが、間違いです。
ダブルキャストはひとつの役を2人が日にちを分けて演じる事・・・
ですものね。
間違えました。
編集して追記とも思いましたが、コメント欄で失礼します。