「見渡すばかりの海と島民の優しさに抱かれ、少女は己の、そして周囲の人々の痛みに向き合う現代版"世界名作劇場"」凪の島 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
見渡すばかりの海と島民の優しさに抱かれ、少女は己の、そして周囲の人々の痛みに向き合う現代版"世界名作劇場"
前半はとにかく、まるで『サザエさん』のような事件性に乏しいホームドラマ調ののんびりした展開に若干不安を覚えましたが、登場人物に肩入れする中で徐々にそれぞれの抱える問題も描かれ、全体としての柔らかなトーンを保ったままハッピーエンドを提供してくれました。
父親のアルコール依存症が原因で両親の離婚と自身のパニック障害という心の傷を負った少女が東京から母の故郷である山口県下松市の小さな島に移り住み、そこで出会った級友や大人と触れ合い、彼らの真心や苦悩を目の当たりにする中で人間として成長し、家族を再生させていく物語。
あらためてあらすじを文字にすると本当に連続テレビ小説のような非常にピュアなストーリーですが、監督デビュー以来ほぼ一貫してピュアな作品を手掛けている長澤雅彦監督の作品。
自分だけでは生きている甲斐が無いから人を助け人に助けてもらい、そのことで自分の至らない点と他人の新たな魅力に気付き、心の空白を埋めていく・・・島での生活の知恵がそのまま人生哲学に昇華されていくかのような展開はまさしく心が洗われるようでした。
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