「爽やかな少女の成長物語」コーダ あいのうた 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかな少女の成長物語
2014年のフランス語映画『エール!』(フランス・ベルギー合作映画)の英語リメイク。『エール!』で農家だった主人公一家が、本作では漁師に変更されている。
リメイク元からの変更点でいうと、『エール!』で主人公の弟がいた設定が、本作では兄に変わっている。何気に地味ながら、主人公の旅立ちを後押しするのには、お兄ちゃんのほうが説得力あるよなと思った
要は、両親と兄が聴覚障害で、自分だけが健常者という女の子が、声楽の才能を認められ、音大への進学を目指すようになるが、自分が必要とされる家族との間で葛藤しつつ、夢の実現に向かって羽ばたく物語。
これを、主人公の一家が漁師という設定で、主人公以外の登場人物を、変わり者だが愛すべきキャラクターとして印象付け、面白おかしく、でも、下品になり過ぎず、爽やかな家族のコメディドラマとして描き切った手腕は、おおいに評価したい。
結局は、よく言えば鮮やかで、清々しいハッピーエンドといえるのだが、それを素直に受け取れるかどうかが、本作の評価の分かれ道かな。好感度の高い作品だが、障害という要素を除外すると、よくあるホームコメディと言えなくもない。
本作は、障害者を取り上げ、米国における漁師という労働者、ブルーカラーの世界を取り上げつつ、潔いほど明確に、娯楽色に振り切った映画だ。『サウンド・オブ・メタル』のような、心をえぐり取るようなシリアスさは全く無い。
また、両親が聴覚障害で、娘が健常者、しかも音楽の世界を目指す話というと、インド映画『Khamoshi: The Musical』(1996年)や、ドイツ映画『ビヨンド・サイレンス』(1996年)などの先例があり、特に本作が画期的というわけでは無い。
ただし本作では、障害者に関して、性に対してオープンで闊達な人達として、あるいは、漁師仲間の中でもリーダーシップを取り、苦境を脱そうと起業を目指す、バイタリティ溢れる人物として描かれている点は、目新しさを感じた。
主人公以外の家族が、みな性に奔放。性病に関するユーモラスな会話や、コミカルなセックス描写などがあるけど、胸の露出など直接的な性的描写は無い。レイティングもPG12で、理解があれば、大抵の方におすすめできる映画だと思う。
俳優陣は、みんな良い味を出している。主人公のエミリア・ジョーンズも良いのだが、父親役のトロイ・コッツァーが秀逸。
個人的には、1人の少女の成長物語として見れば、優れた作品だと思うし、どなたにもおすすめできると思う。物語自体に奇抜さや鋭さは無いが、みずみずしい描写もあり、安心して見ていられる映画だ。
こんにちは!
共感&コメント&フォロー、どうもありがとうございます♪
レビューもコメントも苦手ですが、映画は大好きですので今後ともよろしくお願いします。
本作もエールも、大好きな映画です。
涙なしでは観れません。
こちらこそ返信コメントありがとうございます。
瀬戸口仁さんのレビューとても勉強になります。また随時読ませていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。