劇場公開日 2022年1月21日

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「違っているけど、みんな同じ」コーダ あいのうた N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5違っているけど、みんな同じ

2022年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

今、注目のヤングケアラーと、そのろうあ家族の自立物語。

どうしても越えられない壁がある。
本作の場合、「聞こえる」主人公と「聞こえない」その家族という壁だ。
だからこそ理解できない、ゆえに信じきれない可能性をどう理解しあい、
相手を、自身を信じて、しがみついていた手を離し、互いに自立してゆくのか。
過程が見どころだった。
でなければやがては共倒れになる未来が待っているのだから
このあぶなっかしい駆け引きには、やきもきとハラハラのし通し。
(ああ、家族の犠牲になっちゃダメだとか。気を遣わないからって子供ばかりに頼らず、外の人にも頼ってとか。どちらも気持ちは分かるだけに!)

社会からの疎外は感じているものの、そこは日本とちがう海外気質?
鬱めくどころか、外へ外へと向かう主人公家族の自己主張力と、
駆使したサバイバル精神がとにかく痛快だ。

だからこそ導かれた大団円のような気もしたなら
「自立とは多くの人に少しづつ頼ること」である
という全ての人へ向けられた言葉がぴったりのラストには、
もしかするとこの作品は「ろうあ」という要素がなくても
成立する物語では? と閃いた。

いやつまり、ありふれたただの家族の物語をあえて「ろうあ」で再現したところに、
「私たちはちょっと違っているけど、みんな同じなんだ」
なんて多様性への共感、容認を
じつに軽やかに示す作品だったのでは、と感じている。

N.river