劇場公開日 2022年1月21日

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「二つの世界にいる主人公=BothSideNow」コーダ あいのうた さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5二つの世界にいる主人公=BothSideNow

2022年3月1日
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「Both Side Now(青春の光と影)」この映画を一言で語るとしたら、本作に登場するこの曲のタイトルがふさわしいでしょう!

聾唖者の家族で生まれ育った健聴者の主人公が、「歌うこと」を夢みて奮闘する物語。アカデミー賞のノミネート作であり、日本でも話題の青春音楽映画。
自分としては珍しく、観賞前に予告を観てない映画なのですが、評判を聞き付けた親に誘われて一緒に観賞しました。

結果、「グッバイ、ドン・グリーズ!」に続いてまたしても大きな感動を呼ぶ映画でした!!

正直に言うと、子供や高校生が主人公の音楽映画はストーリー展開が似てる作品が多いので、そこまで高い期待値で挑みませんでした。実際、ストーリー構成における主人公の家族や学校との関係の変化は最近の「カセットテープ・ダイアリーズ」やイギリスの名作映画「リトル・ダンサー」等と対して変わらないです。
なので、ストーリー展開における驚き等はさほどありません。

では何故それでも感動したか?
それは、演出の上手さにあります!

これほどまでに心揺さぶられる演出が出来た理由は恐らく、監督のシアン・ヘダーが徹底的に聾唖者の視点に立ちながら製作したからだと思います。
その演出は終盤で特に上手く表現されていて、聾唖者と健聴者との隔たりやそれによって生まれる絆等、切なくも感動する場面が非常に多かったです。

監督のインタビューによると、脚本の段階から手話の専門家の協力を行い、自らも手話を学んだそうです。
また、主人公の家族に実際の聾唖者の俳優を起用したことで他の作品と比べてより現実的に描かれていました。
(なので、両親二人とも平気で下ネタを言いますw)

なので、主人公の家族を演じた父親役の俳優はオスカーにノミネートされただけあって非常に良かったですし、母も兄も非常に良かったです。
主人公を演じたエミリア・ジョーンズも歌と演技の両方上手かったです。
ちなみに、主人公の想い人を演じた男の子がまさかの「シング・ストリート」の主人公を演じた子だったのは結構ビックリしました!(笑)

また、主人公と音楽の先生との絆も非常に良いです。
どこか浮いていて非常に厳しくてたまに怖い先生ですが、主人公の実力をちゃんと評価して、だんだんと主人公の良き理解者になっていく様は非常にハートフルでした!

この映画では、常に健聴者と聾唖者の両方の視点で描かれています。特に、主人公は健聴者でありながら家族は全員聾唖者なので手話が出来るという、ある意味どちらの世界にも立っている存在です。
そこで生まれる葛藤や成長が描かれており非常に胸熱になれます。

だからこそ、この映画は「Both Side Now」の曲が主人公をこれでもかというくらいマッチしていて、それが終盤で非常に上手く表されていました!
この曲がこの映画の全てを表しており、良い内容を更に感動を生んでいます!

音楽映画は傑作が多い!
それを証明づける一つであり、またしても素晴らしい映画が生まれました!

さうすぽー。