アントラーズのレビュー・感想・評価
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空想の悪魔と現実の悪魔
古の悪魔と現代の悪魔
劇場公開は見送られた本作、ディズニー+でこの度鑑賞。序盤からダークな雰囲気で仄暗いシーンから始まり、個人的にだが掴みはOKだった。
場面が変わり小学校と移るのだが、明らかにネグレクト等に遭っている風貌の少年がいる。本作はその少年が自宅で監禁している「何か」との対峙を描いた作品となる。得体の知れないそれは、「ウェンディゴ」と呼ばれる古くから伝わる森の怪物だった。先住民らの教えで、現代までそれが生き続けているとの事だ。R-15+指定であり、襲撃シーンや、「それ」が生まれるシーン等の描写はキツめである。ディズニー配給だからと言って侮るなかれ。
仮にその生物が生きながらえていたとしたら、そういう残虐な事件が前から発生して騒ぎになっているのではと思うが、そこは気にしてはならないのだろう。 扱うものはギレルモ・デル・トロが好きそうな古の存在。だが幼児虐待とそれを見放す学校や、過去父親から暴力を受けていた主人公。そのせいでアルコール依存症の治療中と思しき描写も存在する。それが古の悪魔と現代社会の悪魔である。その世代を超えた人々を恐怖に陥れる存在の物が、姿形は違えど存在するという大きなメッセージを読み取る事が出来る。だがそれ程説教臭い作品ではない為、ホラー好きならば楽しめるだろう。
すぐれた雰囲気
リザベーション(インディアン保留区)が舞台になっている映画は暗い。スコットクーパーやテイラーシェリダンの雰囲気。
『ほとんどすべての保留地は産業を持てず、貧困にあえいでいる。また、保留地で生活する限り、そのインディアンにはわずかながら条約規定に基づいた年金が入るため、これに頼って自立できない人々も多い。失業率は半数を超え、アルコール依存症率は高い。』
(ウィキペディア、インディアン保留区より)
リンカーンの言った人民のなかにインディアンは含まれていない。なぜアメリカではリンカーンを持ち上げるのかよく解らない。研究者の解釈ではなく、いっぱんの肌感にすぎないが、かれは平等ではなく平等をスローガンに巧く立ちまわっただけの人だった。
スコットクーパー監督のたぶんはじめてのホラー。ぜんぶ見ているわけじゃないが一貫して酷薄な世界をえがいてきた人だと思う。ローカルの気配、やつれた生活者の吐息感がリアル。それはとくべつな補正なしでホラーに合性する。暗鬱な雰囲気がいい。
ケリーラッセルとジェシープレモンス。リザベーションゆえ名優グレハムグリーンもいた。懐かしいエイミーマディガンもいた。痩せ、うらぶれた感じの子役JeremyT.Thomasもよかった。過去作いずれも配役にズラリとドル箱俳優を揃える監督だったが、ここでも役者がそろっていた。
伝承を翻案した話も悪くないし、クリーチャーの造形もいい。
なのにIMDBがぜんぜん伸びていないのはなぜだろう。5.9だった。
国内映画レビューサイトの値(評価点)は信頼できないがIMDBの値は信頼できる。わたしは小市民なので、映画を見る前や見た後にIMDBの値と、じぶんの評価点をくらべる。おおむね合致しているが、ときどき齟齬がある。
ごぞんじのとおりIMDBのK点は7だが、ホラーなら6でも佳作。5.9はわるい値じゃないが、個人的には6.7±0.3を予測していた。この映画はとてもよかった。
本作を見てテイラーシェリダンがウィンドリバーやシカリオの空気感でホラーをつくったらすごくいいのにな──とやはり思った。定見だが、ホラーは映画監督の基礎演出能力を如実にする。
歪んでいることへの違和感
ネイティブ・アメリカンに伝わる伝承 ウェンディゴ
この暗さが好み
ややグロ。
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