ロシアン・ソルジャー 戦場に消えた18歳の少女兵士のレビュー・感想・評価
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祖国のため従軍した女性とスターリンの関係性の強調するもの
最初に述べておくとこの映画はプロパガンダ映画に等しい。愛国心を掻き立てるストーリーもさることながら、指導者スターリンが戦争に対してやむなく強硬な手段を使っており、ソ連人民を気遣うような描写がある為である。しかしながら、こう述べて仕舞えば戦争を題材にした映画なんて、ほとんど愛国的義侠心を祖国のために捧げることを良しとした映画ばかりなのだが。
観ていて印象的だったのがスターリンが主人公のことを思うことや実際に会って会話するというシーンから、スターリンと純真無垢なソ連人民という構図も読み取れなくもない。第一次世界大戦のセルビアを主眼に作成された『セルビア・クライシス』にも同様の関係性が表れているのは興味深い現象だ。
史実に基づいているとはいえ、フィクションであるからスターリンが「ソ連人民の父」のように優しい印象で描写されていても一つの表現として許容されるべきなのかもしれない、しかしながら、その美化されたスターリン像は残忍さを微塵も感じさせない(むしろ正当化しているような)姿は「スターリンだからナチスを打ち任せ、彼に人民が答えたのである」といったようなメッセージを暗に示しているのではないかと思えた。
旧日本軍にも軍神はいました。どこの国もしているのですね。
独ソ戦でナチスに捕らえられた少女の過酷な運命を描く物語。
先の大戦時に、プロパガンダで『軍神』と祭り上げられた少女を描く映画ですから、プロパガンダを覚悟しての鑑賞でした。
確かにその色の強い映画でしたが、それでも思いのほか良い映画でした。
恋人の戦死を受けて軍に志願する少女。その少女を、主演のアナスタシア・ミシナが良く演じ切りました。
軍神でも、ヒロインでも、特別でも何でもない少女。
最初の作戦で人の死を目の当たりし、苦悩する少女。
拷問に耐え抜き、でも恐怖と苦悶の声を上げる少女。
スターリンによる閲兵シーンの彼女の表情が秀逸でした。覚悟と使命感と恐怖と・・・そして高揚と。そんな入り混じった表情がとても印象的です。
非戦闘員がいる村を焼く描写をしっかりと入れるなど、プロパガンダ映画に留まらないところは好感が持てました。
ただ、やはりプロパガンダ映画でもあります。特にスターリンの描写。粛清で何千万人と殺し、スターリングラードやレーニングラードでは、市民を退避させずに犬死させたスターリン。辺境の村人が焼き出されることを躊躇するとは到底思えません。その彼が逡巡するシーンを描くのに、どのような意図があるのでしょうか?
映画全体を通してみれば、4や4.5を付けたくなる映画でした。しかし、このようなシーンがあると、高い評点は付けにくくなります。ウクライナ侵略戦争の情勢も、このようなプロパガンダ描写に大きな不快感を覚えてしまいます。とても残念な描写でした。
評点は3.5にしました。
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