「ギリシャ彫刻かナウシカか。シャラメくんの崇高な立ち姿に見惚れる!」デューン 砂の惑星 PART2 ドミトリー・グーロフさんの映画レビュー(感想・評価)
ギリシャ彫刻かナウシカか。シャラメくんの崇高な立ち姿に見惚れる!
IMAX試写会にて鑑賞。
前作『DUNE/デューン 砂の惑星』を東京・丸の内ピカデリーのドルビーシネマで鑑賞したのが、2021年秋のこと。あれから2年半。待ちに待った続篇です!
前作では、辛くも落ちのびた母子を除く一族郎党ほぼ全滅。超巨大な砂蟲と共生する砂漠の民のもとに身を寄せたシャラメくん(予知能力あり)は復讐を誓うのだった——と至ってざっくりとしか覚えておらず。
香辛料を巡る争い、女だけの秘密結社、母の妊娠、予知夢に現れたゼンデイヤ…等々すっぽり失念。さらにジョシュ・ブローリンはモモアと共に憤死したものと思い込み、ハビエル・バルデムのことは記憶から完全抹消。ゴメンなさい…。
こうした事前情報は、続篇鑑賞前に「ベネ・ゲセリット」「クイサッツ・ハデラッハ」など一連のデューン専用語と併せて再確認されておくことを強くオススメします。
さて、「砂漠」を舞台とする名作は『イングリッシュ・ペイシェント』『シェルタリング・スカイ』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』…といろいろ思い浮かびますが、本作のように、果てしなく広がる「砂漠」の魔力的な美しさをひたすら大画面に焼きつけた作品は皆無に近いのでは。「砂漠」が第二の主人公と思えるほどです。この点では、かの『アラビアのロレンス』に迫る映像美と言えるかもしれません。
ビジュアル的なところでさらに言うと、今回は前作以上に『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』の“実写化”感(?)が強まっていますね。「迫力」に絞っていえば、やっぱり実写スゲエな、と(CGだけど)。
一方、前述の砂漠シーンがひたすら続く結果、前作が帯びていたギリシャ悲劇のような重厚さは薄まったようにも感じました。さすがに、シャラメくんが砂丘にすっくと立つ姿を捉えたフルショットにはギリシャ彫刻の如き崇高感が漂い、思わず見惚れましたが。
ギリシャ出身でいま世界のアートシーンを席巻する演出家/振付家のディミトリス・パパイオアヌーが創った前衛劇を以前観たことがあるのですが、その舞台は、具現化された強烈なイメージが次々と立ち現れ、美と醜悪、崇高と低俗が錯綜するものでした。この前衛劇に相通ずるモノを、前作『DUNE/デューン 砂の惑星』は持っていたように思いますが、今作はそれほどでもない。
いやむしろ、前作のキャストに加えて、フローレンス・ピュー、レア・セドゥ、アニャ・テイラー=ジョイといった一癖も二癖もある女優まで迎えながら、複雑な人物相関図を俯瞰で解き明かすことに追われていた——そんな印象が残りました。166分という長尺にもかかわらず、「コレちょっと端折ってない?」と感じたシークエンンスも1つや2つじゃなかったです(前作でも若干感じてはいましたが)。
終盤の決闘シーンでは一瞬、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のラストが頭をよぎりましたが、それ以上になぜか(!)思い浮かんだのが『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。胸騒ぎがしてたんだ。王はつらいよ。何にせよ、みんな幸せになってほしいと切に願います…。
もう一つ。本作にはノンクレジットでアニャ・テイラー=ジョイが出演していますが、本編上映前に流れた『マッドマックス フュリオサ』(アニャの主演最新作)の予告編を見ていなかったら、彼女がどこに出ていたか気づかなかったかも。あれこれ詰め込んだストーリーに圧倒されて、彼女に関する記憶はしばらく吹っ飛んでたくらい「さりげなく」登場してます。
とにかく、はよ第3弾を! そしてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、『ボーダーライン』みたいな中規模の傑作も撮ってくれよと切望!!