ゴヤの名画と優しい泥棒のレビュー・感想・評価
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名作「ノッティングヒルの恋人」監督の長編遺作。今見たい1961年に実際に起こった不思議な実話を描く優しさに溢れた作品。
本作はまさに今見るべきイギリス映画だと言えると思います。
それは2021年9月に亡くなったばかりの名作「ノッティングヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル監督の長編遺作であること。
そして、本作は「1961年を描いた作品」であること。
この「1961年」というのは、まさに今「旬」な映画版「ウエスト・サイド物語」が世界的に公開された年で、本作でも主人公が奥さんを映画に誘っています。
その際の作品解説のセリフが「歌って踊る『ロミオとジュリエット』」と的確です。主人公が戯曲家を目指していることが伺えるセンスの良いセリフが多くあり、会話劇としても楽しめます。
さらには、今から61年前の「1961年に実際に起こった国宝のゴヤの名画盗難事件」の真相が分かり、この物語が、2000年以降のイギリスにつながっている、という意外な現実を俯瞰して眺めることもできるのです。
平坦なカット割りではなく、当時のイギリス映画のようなオシャレな音楽やカット割りも取り入れるなど、実話の物語として時代背景を上手く活用しています。
しかも「法廷モノ」としても面白い作品で、ロジャー・ミッシェル監督も悔いはないのでは、と思います。
観る者の口元を緩ませる絶妙な空気感
『ノッティングヒルの恋人』などで知られる故ロジャー・ミッシェル監督が遺した最期の劇映画ということで、もしかすると彼の演出が弱りゆく様を目の当たりにしてしまうのではないかと見る前は多少不安だったが、そんなことは全然なかった。それどころかこれは彼の代表作と言えるほど、賑やかで幸福感たっぷり。二人の名優を配した語り口が素敵で、60年代特有の英国の空気感もたまらない。最初は主人公の主張に誰も目と耳を貸してくれなかった状況が、いつしか逆転していく様のなんと皮肉的で、なおかつ痛快なことか。妻はそんな偏屈な夫に振り回されつつも、彼がそっと差し出すティーとビスケットにふっと表情を緩ませる・・・。かくも噛み合ってなさそうで実は硬い絆で結びついた夫婦愛が絶妙だし、二人が密かに抱えた悲しみの記憶も奥深く作品を彩る。単なるドタバタコメディではなく、庶民の”尊厳”すら感じさせる実話ベースの物語に最後まで魅せられた。
メイド・イン・UKのペーソスと反骨精神を秘めて監督は旅立った
ロンドンのナショナル・シアターにゴヤの名画"ウェリントン公爵"を展示する費用があるなら、それを日々の楽しみが少ない高齢者や退役軍人のためにBBCの受信料を無料にすべきだ。それが、名画を強奪した罪で逮捕されたニューキャッスルのしがないタクシー運転手、ケンプトンの言い分である。
1961年のことだ。盗んだことは犯罪だが、動機には共感する部分がある。そう感じた陪審員や傍聴人、そして、ケンプトン自身に、家族が抱え込む秘密も含めて、イギリス人独特の気骨とユーモアと優しさを感じて、思わず心の中で小さくガッツポーズを作ってしまった。かつて、『ウィークエンドはパリで』(13)で出会って以来、意気投合した監督のロジャー・ミッシェルと主演のジム・ブロートベントが2度目のコラボ作で目指したのは、それだろう。
そのミッシェルは映画完成後、あっけなくこの世を去った。他のどこの国でもない、メイド・イン・UKのペーソスと反骨精神をその胸に抱いたまま。ここ数年、国情と同じくその立ち位置があやふやになりつつあるイギリス映画の現状を思い起こさせる1作である。
A Funny, Literary Story in History
An I, Daniel Blake caper, the story of a bus driver, once imprisoned for not paying his TV tax, conducting a Robin Hood-style act of stealing a treasured painting from the British museum. It's the kind of forgotten tale that's perfect for a modern movie, holding a mirror to our time and seeing the parallels to an era that if not for movies we'd be compelled to think was completely unalike.
あたたかい気持ちになるいい映画でした。
NHKの受信料問題を考えてしまいました。NHKは、映らないから払わないとか、勝手にお宅の電波が入ってくるので、迷惑しているとか言って集金人とバトルしていた人がいたのを思い出してしまいました。
しかし、この主人公は、社会正義のために戦っているので共感できました。最後は英国らしい解決だったと思います。日本では、こんな判決はあり得ないと思います。
主人公一家の家族愛とても心を打たれました。この映画は、家族の物語ですね。
英国の闇を描く
ゴヤの一枚の作品をナショナルギャラリーから盗み出した初老の男(実はその息子)の実話に基づいた作品で、政府に身代金を用意させ貧しい労働者階級のBBCへの受診料未払いによる刑事罰などの貧困層への弾圧を告発した作品。近年郵政システムとの不正でもイギリスで大問題となり文化相が受信料撤廃を示唆したことでも知られる古くて新しい問題。日本もBBCを参考にしてつくられたNHKは近年そのシステムが問題視されている。
テンポがよい
犯罪の裏にある個別の人間性が描かれている。/最初はN国みたいな人かと思って警戒したが、BBCを潰せ、ではなくて、BBCをみんなが見られるようにしよう、ということで全然方向性が違う。みんなの宝・ゴヤの絵はみんなが見られた方がいいよね、というのとパラレルなのである。
実話なの!
そしてバントンの役作りの完璧なこと。エンドロールの実物写真が主人公と似過ぎてて、実話という体の物語なのねと納得しかけたけど念のためwikiを見たら実話でした。登場人物がいいね、みんなたってて。嫌なヤツもそこまで漫画的に描かれてなくて、パン工場の上司はちょっと短絡的な描き方でしたがあれは登場時間が少ないからギリギリ許容範囲、パメラの中途半端なアバズレ感とかもホントにちょうどいい。あと何しろヘレン・ミレンです、締めるよね~。はしゃがない、いつもへの字口、いかにもイギリス人おばちゃんて感じ、見たことないけど。裁判中に書記とか判事の女性が共感の態度を示すの、もちろん気持ちはわかるしバントンのユーモアに引き込まれるのだけど、それに反応するのが女性だけってのが気になりました。
他の例に洩れない「ほっこり映画」
<映画のことば>
私はあなた、あなたは私だ。
あなたが私を存在させ、私があなたを存在させる。人類は集合的なもの。私は一個のレンガで、あまり役に立たない。小さな一個だが、無限に積めば、家ができ、家は日陰を提供できる。そして、世界が変わるんだ。
初老の一人の庶民に過ぎず、息子の素行の悪さなど、家族的にも市井によくある問題を抱え、その意味でも本当に庶民的な庶民に過ぎなかったをなかったケンプトンが、その粘り強い運動の結果、ついには年金生活者について、放送受信料の無料化を勝ち取るなど、他のイギリス映画の『フルモンティ』、『ブラス!』『天使の分け前』『ウェイクアップ!ネッド』などと同様に、「社会は庶民が主役」というポリシーで、本作も貫かれた一本であったと思います。評論子は。
観終わって、気持ちが「ほっこり」という点で、充分に佳作と評することができるとも思います。
(追記)
【放送受信料問題のイギリス版?】
邦題からはまったく予期していなかったのですけれども。
しかし、いざフタを開けてみたら、なんと某国営放送の放送受信料問題のようなお話でした。
あちらの国では、本当に調査機器をクルマに積んで、テレビの有無を調べて歩いていたのでしょうか。
日本でも、某国営放送関係者は、衛星放送のアンテナが上がっているかどうか、双眼鏡を片手に実地に見て歩いているという話もありますけれども。
(追々記)
【イギリス映画なのに、いかにも東洋的な正義感?】
彼が将来を信じている息子の罪に、ケンプトンが多くを語らず、小言の一つも言うでもなく、その身代わりを引き受けたこと、本作がイギリスで製作された作品であるにも関わらず、評論子には、極めて東洋的な正義感が看て取れるようで、面白いと思いました。
「葉公 孔子に語げて曰く、吾が党に直躬なる者有り。其の父 羊をぬすみて、子之を証せり、と。孔子曰く、吾が党の直なる者は、是に異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直は其の中に在り、と」(論語・子路篇13/18)
(葉公が自慢して孔子に、こう言った。私の村には正直者の躬という者がいて、その父親が羊を盗んだことを、子である自らが証言したのですよ。どうですか。正直者でしょう、と。
それを聞いて、孔子は、こう答えた。私の村の正直者は、そうではありません。仮に父か子かが盗みを働いたとしても、父は子のためにその事実を隠し、子は父のためにその事実を隠すことでしょう。人としての本当の正直さというのは、そんなことではないでしょうか。)
外国育ちとのことですけれども。それでもイギリス人の監督が、こんな、いかにも東洋的な考え方(正直さ)の映画を作ったことを、評論子は、面白くも思いました。
なお、ついでに言えば、裁判長の警告にも関わらず、ケンプトンに対する名画窃盗疑惑のくだんの陪審の結末か、こんなに「浪花節的なもの」だったことも、ずいぶんと東洋臭いと思われました。実際「誰でも芝刈機を返すのは遅くなりがちなものだ」という理屈がもし本当に通用するなら、今の日本でアタマの痛い刑務所の超満員問題はたちどころに解決して、これに悩んでいる法務省矯正局の幹部は、さぞかし枕を高くして安眠できるようになることでしょう。
本作はイギリス映画ということですが、そんな、いかにも東洋的な正義感が垣間見えることも、興味深いと思いました。評論子は。
ケンプトンの魅力だけで牽引する
ものすごく面白いということはないが笑えてなんだか晴れやかな気分、というか気にさせられる作品だ。物語が明るいという意味ではない。あくまで錯覚なんだな。
それは、なんといってもジム・ブロードベント演じるケンプトンのキャラクターによるところが大きいだろう。
ケンプトンは立派な人物とは言い難い。どこまで本気でどこから冗談かも分からない。ただ口がうまいだけのペテン師のようでもある。ヘレン・ミレン演じる妻はほとほと呆れているようだ。
しかしケンプトンの軽妙な語り口と飄々とした振る舞いは嫌でも惹きつけられ虜となる。愛すべきロクデナシだ。
気がつけば、ケンプトンが少しでもいい方に転ぶように応援している自分がいる。
冒頭とラストにある法廷シーンで、具体的な理由がなくとも、その場にいた人たちがケンプトンに寄り添おうとした気持ちが分かってしまうんだな。
ジム・ブロードベントはいい俳優だ。話し方がインチキくさいのがいい。
すでにレビューを書いた「キング・オブ・シーヴズ」にも出演していて狙ったわけではないがブロードベントの連続視聴になった。全く違うキャラクターで感心するんだけど、やっぱり本作のケンプトンのような道化師役が似合う。
なかなか行動的なケンプトン
ジムブロードベント扮するケンプトンバントンは、ゴヤの名画ウエリントン公爵を盗んだと裁判にかけられていた。
どこかとぼけた感じの主人公だね。この年でタクシー乗務員となはね。はたしてこのしょぼくれたおじさんが泥棒なのか。でもなかなか行動的なんだよね。盗む瞬間は観られなかったけどさ。変な人を家に取り込むからつまらん事になったのさ。
邦題がピッタリ
「?」な邦題の作品が多い中、今作は邦題がピッタリでした
中盤までは偏屈なおじいさんに思えていた主人公に、「奥さんのためにももっとちゃんとしてー」と思いながら観ていました
冒頭の裁判シーンで無罪を主張する主人公に、「泥棒しといて無罪はないわ」って思ったけど、終盤になっての裁判シーンの主人公の返答には子気味良さを感じるようになっていました
出てくる人みんなが優しい
涙ポロリ
これが実話なんて、陪審員とラストの警察官の寛容さに驚きました
刑務所から出てきた主人公と奥さんの会話、家の中でご機嫌でダンスとか、そういうの良いなぁと思いました
後半は秀逸な法廷劇
1960年代。ゴヤの名画を盗み出し、社会福祉を要求する老人を描く物語。
実話を基にしたお話のようですね。
前半は冗長。コメディテイストですがまったく笑えません。
特に、主人公とその妻の相性が最悪で、両者に対して嫌悪感を持たざるを得ないものだったことが残念でなりません。
後半は法廷シーン。テンポも良くなり、ユーモアを交えた問答も秀逸で、楽しい気持ちにさせてもらいました。嫌悪感を感じた夫婦についても、好感を持って観ることが出来るようになりました。
後半だけならとても高い評価になるのでしょうが、前半の嫌悪感の印象も残り、私的評価は普通にしました。
なんか拍子抜け
もっと実話に焦点を当てた重厚な作品を期待したけど
なんか軽いノリですんなり終わった感じ
裁判のやりとりも英国の人にしか理解できないユーモアで
観て損したとまでは言いませんけど
邦題詐欺、の一つだわ
ただ、ヘレンさんは相変わらず好きです
変わり者だったんだろうな
こんなお年寄りが盗むのは現実的でないと思ったけど、そういうことだった。
実在していた人物とのことだけど、劇作家で、正義感はありながらも思想強めの人、変わり者だったんだろうな。
脇役で出てきた人らの立場がよく分からず、少しストレスだったけど、後半に一気に挽回。特に裁判中に夫婦で話すシーンにグッときた。こんな夫婦感は良いと思った。
評価:3.7
やむなく 愛の力です
前半、主人公の短絡的行動にイライラする。妻には同情を禁じ得ない。後半の裁判では一転コミカルで主人公の面白さ機転の効いた部分が現れ応援したくなる。市民の応援する気持ちも何処から来たのか分からなくもない。
鑑賞動機:ヘレン様8割、ブロードベント2割
オーラ極小の珍しいヘレン様。なのにばっちりはまっているのはさすが。おとぼけブロードベントとの掛け合いが喧嘩も込みで…よきかな。
後ろ暗いことを誤魔化すためとはいえ、二人がダンスするところの微笑ましさ好き。
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