「三者三様お見事!沁み入る余韻に考えさせられる…」PASSING 白い黒人 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
三者三様お見事!沁み入る余韻に考えさせられる…
満足している人なんていない --- 私はしてるわ。本当に?白人のふりして生きる黒人を描く白黒ドラマ。レベッカ・ホールがカメラの後ろ = 監督・脚本として素晴らしい映画人であることを証明する監督デビュー作。
ファーストカットから引き込まれる。その後もみるみるうちにこの作品に魅せられていく自分がいた。けどそれは決して居心地いいものからは程遠く胃のキリキリするようなもの。繊細なタッチで社会の根深い暗部と、そこから生き抜く術・対処法として生まれざるを得なかった苦肉の策に大胆に踏み込むよう。誰がそれを責められようか、非難などできようか。感情の機微に寄り添うように、共感や同情を持ってして丁寧に描く。監督はこれまで役者として培った経験か、それとも生まれ持ったストーリーテラーとしての才能か、効果的な術を心得ているようだった。
しっかりと困らされていて悩み葛藤する主人公テッサ・トンプソン × ルース・ネッガ = 二人のべらぼうに素晴らしい演技が引っ張る。二人が最初に出会うシーンとかも凄かったな。二人ともその社会において裕福な暮らしをしている。演技、演出、脚本(脚色) --- 多分どこから切り取っても見事な作品で、賞レースに絡んできそうな注目の一本。自らを偽り生きることや、それによって揺らぐアイデンティティーをどうにか繋ぎとめるための帰属意識みたいなもの、その象徴・拠り所としての友情。自分にとって大切な作品にはなりにくいかもしれないが一見の価値あり。
色素の薄い黒人(本作におけるテッサ・トンプソン)は黒人社会からも白人社会からも除け者にされるみたいなことを聞いたことがある気がして、それを思い出した。白人のフリしたまま妊娠して出産したクレアのこと考えると素直にものすごくすごいなと思った。妊娠しているって気づいてから生むまでずっと肌の色が黒人だったらどうしようという恐怖に怯えながら過ごしていたのかと思うと驚愕。自分には到底耐えられそうにない。