「感情の繊細さがよくわかる映画」やがて海へと届く 毒キノコさんの映画レビュー(感想・評価)
感情の繊細さがよくわかる映画
浜辺美波さんが出演しているから見た映画でしたが、私はとても好きな映画でした。
冒頭・終わりにアニメーションがありますが、東日本大震災という難しいテーマを描く上では、生身の人間が演じてしまうと恐怖しか残らない映画になってしまう。「なるほどな」という作りだと思いました。そして真奈が死に納得できなかった理由も、「津波」というワードで腑に落ちる感覚があります。
最初は真奈がすみれに偶然出会い、偶然新歓で助けられた、そして親友までに発展するという感じだと思いました。
しかし最後のすみれの視点で見ると、すみれは拾ってくれた猫のポーチをきっかけに、真奈に一目惚れと同じような興味が湧いており、その後も真奈に自分から近付きに行っているように見えます。あの日猫のポーチを返して欲しいと素直に言わなかった理由は、真奈と関係を持つ理由を残しておくためだったのかな、と。
そして明らかになっていくすみれの真奈への恋の気持ち。だけど、打ち明けられない。すみれは母親に標準を求められて育ったからこそ、恋の気持ちが辛くなる。いつか真奈に恋人ができる前に、自分から離れて普通の女の子として遠野と生きるほうがマシだと思う。
すみれの感情の揺れ動きと、真奈のピュアさ&鈍感さが対比していて面白かったです。
実際に東日本大震災の被害に遭われた方々のインタビューの場面がありますが、見ている時は「すみれに関係あるの?」という感じでしたが、それを聞いて真奈はすみれが亡くなったということを自分の中に落とし込む事が出来たという意味なのかな思いました。
すみれが真奈の洋服を着てみたり、こっそりビデオを撮っていたり、バスに乗り込み去り際にエールを送ったりするシーンは、愛おしくて、切なかったです。