「思ってたのと違うし、難しいけど…沁みてきます。」やがて海へと届く コータローさんの映画レビュー(感想・評価)
思ってたのと違うし、難しいけど…沁みてきます。
違う作品を観る予定だったのに「Primeでの配信は3日以内に終了」フラグが立っており、大好きな女優さんのひとり浜辺美波さんが出演していたので予告だけ観てみようと思ったら気になってしまって、3日以内で消えるんなら今しかないと何か縁さえ感じて、何の予備知識も持たず半ば急いで観始めました。
浜辺美波さんを好きになったきっかけは実写ドラマや映画の『賭ケグルイ』の蛇喰夢子役でのミステリアスな美しさです。本作の予告を観る限りではその夢子に通じるというか、序盤お母さん役の鶴田真由さんが「近くにいても遠く感じるところがある子だもんね」って評している部分が魅力的というか、そんな彼女演じる突然いなくなった謎めいた親友の足取りを、岸井ゆきのさん演じる主人公真奈が残されたビデオカメラの映像を頼りに追っていくミステリーだと勘違いして観ていたら、折り返し辺りでまさかの東日本大震災の津波の話に繋がるとは。。。あまりにも意表を突かれました。思ってたのと全然ちゃうやん。。。
「私たちには世界の片面しか見えてないと思うんだよね」津波によってすみれが行方不明になったと判明してから、見えなかった片面を我々にも観せてくれます。その片面がビデオテープに録画されているのかと思っていたのですが、それも読みが外れました…。
真奈が被災地に赴き復興途中のその映像、特に陸前高田市にあんな高い防波壁が造られているとは知らず胸が痛みます。家族を亡くされた人達の証言を中嶋朋子さんが撮影するシーンでの証言内容や表情がリアル過ぎて観終わるまでこの部分はドキュメンタリーかと思っていました。特に女子高校生羽純役の新谷ゆづみさんの語り口や涙はあまりにもナチュラルで思わず涙を誘われました。彼女の話に出てくる祖母はもしかしたら一人旅で駅に座るすみれに声を掛けてきたおばあちゃんと同一人物なのでしょうか?
すみれが旅に出る前のバス停での別れのシーンでようやく語られるかと思った「猫のポーチ」の話がバスの到着で遮られたり、「自分が思ってるよりずっと強い人だよ。じゃあね。」ってあれが最後だと思うと確かに振っ切れないとは思うけど、そこからのアニメーションでの表現、その美しさ、決して美化しようとしている訳でもなく冒頭のものとも相まって何か「安心」させてもらえます。
東日本大震災の直前に病気療養中だった父を亡くし、弱り切っていた自分の心に当時の津波の映像はとても重く圧し掛かりました。観賞した前の日にはミャンマーで大地震により1000人以上が亡くなり、海外だけに留まらず日本でも各地で山火事が相次ぐなど大規模災害が世界中で起こっています。
あらためて、大切な人達との時間、そして自分のことを大事にしていかなくてはと思わせてくれる作品でした。