「もう一度歩き出すために」やがて海へと届く あらP★さんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度歩き出すために
すみれは真奈を愛していたのだと思う。そして、真奈も。大切な人がいるか問うすみれに、「フフ、秘密」と誤魔化し仄めかしたのを、勘違いして遠野の所へ出て行ってしまったのだろうか。引っ越しの時は気まずかったけど、そのまま別れてしまったのではなくて、少し大人になってから再会してはいる。けど、わだかまりはあったのかな。
それが引っ掛かっているから、真奈は先に進めなかったのだろうか。何度も探しに行って、見つからなくても諦めきれなくて、そのうち何を探しているのか、本当は何を見つけたいのかわからなくなって、探しに行くのをやめて、でも踏ん切りはつかなくて。遺品の整理も納得できなくて、悶々と過ごしていた。
身近な人の突然なできごとをきっかけに、もう一度、真奈の心が動き出す。大きな喪失で喪失感を埋めるかのように。他の遺された人々、地元に伝わる童歌で、生命の循環を知る。輪廻転生。止めていた録画をもう一度回すことで、すみれの知らなかった一面を知る。そうして自分も、もう一度歩き出すことができる。
人間の感情は単純ではなくて、辻褄も合わないし一貫してない。その揺れが物語をわかりにくくしていて、深く考えるきっかけをくれる。良く出来た映画。素晴らしい。
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