「明日のジャズ」BLUE GIANT 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
明日のジャズ
タイトルの“BLUE GIANT”とは、天体からの語源で、“青色巨星”の事。
温度が高すぎて赤色を通り越し、青く輝く星。
青が赤より熱い…? イメージ的には冷めた(ブルー)印象するけど…?
いやいや、分かるように言えば、ゴジラの熱線が赤ではなく青白いのと一緒。…寧ろ、分かりづらい?
原作は、同名コミック。
いつもの事ながら、読んだ事ナシ。
題材は、ジャズ。
映画などで聞けばいいなぁ…と思うが、全く詳しくない。
そんな原作未読者&ジャズ・ビギナーには分からない世界…?
否! 全く!
原作を読んでなくともジャズを知らなくても、思う存分見れ、浸れる。
あなたの中の“BLUE GIANT”が迸る!
まず、話が超ド直球。まさしく話が主人公そのものを表している。
主人公・大。夢は、世界一のジャズ・プレーヤーになる!
…どっかで聞いたような台詞。“海○王”的な。
地元・仙台の川辺や橋の下で日々サックスの練習。
やがて上京し、仲間と出会い、バンドを組み、一歩ずつ次のステージを目指していく…。
何かこれも“アレ”みたいな。猪突猛進、怖いもの知らずな主人公像も。
自分を信じて。
仲間を信じて。
まだまだ自分が未熟なのは知ってるけど、それでも自信を持っている。
俺たちの演奏は、必ずお客さんに響く。俺たちなら、やれる!
憎めず、人懐こい性格で、とにかく熱い!
ジャズを始めてまだ数年。が、才能があり、時々暴走しがちでもそれが自由と個性になり、彼の吹くサックスは聞く人を惹き付ける。
THE漫画的な主人公。しかしそれが、この作品にぴったり。
大、死ぬほどカッケェよ。
二人の仲間もしっかり個性。
たまたまとあるライブハウスで出会ったピアニストの雪祈。
幼い頃からピアノの練習を続け、こちらも才能があり、大学でも一目置かれている。
作曲も担当。性格はクールでドライ。
バンドを組むには、後一人。ドラムが必要。そこで大が抜擢したのは…
同郷の友人で、居候させて貰ってる玉田。
そのドラムの腕前はと言うと…、全くのド素人。ドラム経験ナシ。
大に感化されて参加。雪祈は反対するが、大は最初は誰でも素人だ。
自分のドラムはクソ。自分が足を引っ張ってる。
だからとにかく、練習!練習!練習! 少しずつ上達していく。
彼らの“セッション”と友情と青春のストーリーがドストレートだからこそ心地よい。
バンド名も決定。“JASS(ジャス)”!
本当に話はシンプル。時々ご都合主義とトントン拍子過ぎる所もあるが。
無論、若者の宿命。壁にぶち当たる。
大抵主人公が葛藤するが、本作は雪祈。
彼らのまず第一の目標は、日本一のジャズライブハウス“ソーブルー”での演奏。今のこの10代で。
そこの支配人が彼らの演奏を聞く。大を面白い、玉田を一生懸命と高評価。が、雪祈に対しては…。
小手先ばかりの演奏で面白くない。君はジャズだけじゃなく、人もバカにしている。
その言葉は的を射ていた。その通りだった。
JASSの足を引っ張っていたのは自分だった。
小手先だけじゃない、内臓をひっくり返すような、自分の演奏。それが見出だせぬまま、ひたすら練習を続ける。
そんな時、あの支配人から思わぬオファー。
まさかの晴れ舞台で演奏。自分だけ抜け駆けに気が引けるが、大も玉田も応援。ぶちかましてこい!
内臓をひっくり返すような演奏。雪祈が聴かせたのは…
ジャズ題材なら、実写でやれば…?
その方が演者や奏者を生で見る事が出来る。
では、アニメでやった意味は…?
アニメで何処までジャズを聴かせる事が出来るか。魅せる事が出来るか。表現する事が出来るか。
その描写一つ、演奏一つ、演出一つは、ひょっとしたら生以上にこだわりにこだわり抜いている。
演奏シーンが秀逸。演奏と感情が迸り、最高潮になると、画面が赤から青になる。そう、“BLUE GIANT”!
アップテンポ、クールでスタイリッシュ。光の演出も印象的で、斬新な表現。『コナン』の監督と知って驚き…!
そして言うまでもない、劇中奏でられるジャズ音楽の数々。作曲は世界的ピアニストの上原ひろみが担当。
ちょいと調べた所によると、まず作曲し、それに画を合わせたとか。だからこその臨場感と曲の魅力。その一体感。
演奏はたっぷりと織り込まれ、サントラ買うかダウンロードしたいほど。私だったら、今年の最優秀作曲賞に推すね。
山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音の声の演技も悪くない。
私も東北人なので、大や玉田の方言がしっくり来る~。
サブキャラでは、彼らに練習場としてバーを貸すママがいい。
遂にソーブルーへの出演決定。
が、その目前で悲劇が…。雪祈が交通事故に遭い、右腕負傷の重体。
急遽、サックス大とドラム玉田の二人だけの出演。
二人であっても、心は3人。見事、ライブを成功させる。
アンコール。そこに、雪祈が…! 左腕だけで演奏をする。
オイオイ、幾ら何でも…のツッコミ所ではあるが、それでもいい。
3人揃ってステージに立つ。
このラストシーンの興奮・感動・臨場感・高揚感は、『セッション』や『ボヘミアン・ラプソディー』など数々の音楽映画に匹敵。
最高の演奏。
そして彼らには分かっていた。これがJASS最後の演奏…。
てっきり3人でこれからもセッションとサクセスしていくのだと思っていた。
3人にはそれぞれ音楽の方向がある。
大は、世界一のジャズ・プレーヤーになる。
雪祈は、ジャズで勝つ。
玉田は、3人でやっていきたい。
固い友情でも、目指す方向はバラバラ。
ひょっとしたら3人共、内心は分かっていたのかもしれない。
JASSは今この一瞬だけ。行く行くは…。
これは終わりではない。始まり。
明日のジャズへーーー。
俺たちはその明日へ向かって、今、最高のジャズを聴かせる!
調べた所によると、原作コミックの序盤を映画化。
確かに劇中でもインタビューで大を知る者たちが応えるシーンが。
サラリと調べたが、大はこの後海外など、次のステージへ立つという。
続編作られないかしら…?
スマッシュヒットしたんだし、是非!
いやはや、思ってた以上に面白かった!
『SAND LAND』『マリオ』『スパイダーマン』と並んで、今年のベストアニメの一本!
午前中見たばかりなのに、もう一度流し見&聴きながら、私の“BLUE GIANT”が迸るまま、一気にレビューを書き上げてしまったよ。