「6点つけたい。劇場で公開されているうちに早く見たほうがいい。」BLUE GIANT みなとさんの映画レビュー(感想・評価)
6点つけたい。劇場で公開されているうちに早く見たほうがいい。
原作は未読。
最初は面白い青春映画だな、くらいの感じで見ていた。
そもそも「風が強く吹いている」とか、「けいおん」とか、日常のやりとりが多い作品で、その世界観がうらやましいな、と感じさせるほどの青春傑作はそれほど多くない。
若者の青春をテーマにした作品は、セオリー立てて作るのが難しく、感覚的に紡いでいく面が多いからだ。
例えばミステリものでは、事件を最初に起こして、関係者の話を聞いて矛盾を突いたりして、最後に解決するまでの道筋を立てるという大まかな流れは決まっている。
しかし青春ものはそれがない。
仮に、大会で優勝する、というゴールを設定したとして、主人公が一生懸命メニューをこなして成長するだけでは面白くない。主人公の生い立ち、仲間との出会いと衝突、そして別れ。ライバルとの試合、環境の変化、いろいろなものを自由に組み合わせつつ、やりとりの充実さで勝負し、なおかつ見る人の共感を得なければならない。
そういった、感覚で面白い作品を作ることができる人はそういない。
なので始めは、素敵な青春作品を鑑賞できて嬉しいな、と思いながら見ていた。
しかし、見進めていくと、さらに別の感情が出てくる。
この映画を、始め、単なる若者の青春劇という印象で見ていた私はとても反省した。青春なんて言葉だけで形容されるべきものではない。冗長な場面が一瞬もないほど濃密な展開と、エネルギーの塊をぶつけられたようなジャズサウンド。いつの間にかスクリーンに魅了される私は、すっかり作り手の掌の上だった。
主人公の声優は山田裕貴が務めている。これがまたいい。
主人公の宮本大は、主人公なのにまったく容姿がスマートじゃない。他の作品ならモブキャラにいそうな、ごく普通の見た目をしている。また、性格的に全く繊細ではない。
山田裕貴の声は、いい意味でこの普通の人間っぽさを表している。これが妙にかっこいい声だったり、心の機微を表しがちな声優みたいな上手さがないところが、宮内大としてリアルでとてもいい。
誰が声優を務めているか知らないまま鑑賞したが、山田裕貴の声以外はわからなかった。エンドロールで間宮祥太朗と岡山天音が務めているのを知ったが、この両者ともとても上手い。
この作品は自宅でイヤホンを付けながら見るのと、映画館で見るのとではまた印象が大きく変わるような気がする。
映画館のスケールで、あのサウンドで、もう一度鑑賞しようと考えている。