「青く輝く」BLUE GIANT ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
青く輝く
原作の存在は知っていましたが、未読のまま映画を観ました。鑑賞形態はDolby-Atmosです。
なんつうパワーを持つ作品なんだ…!と興奮と感動に一気に襲われました。ジャズという音楽のジャンルををここまで体感できるとは…!
とにかく演奏シーン含め音楽のクオリティが素晴らしいです。サックスの演奏シーン、息をもつかせないスピードとパワーの持った演奏、ドラムとピアノに合わせて溶け込む演奏、ソロでの爆発力、演奏するシーン一つ一つに圧倒されっぱなしでした。ピアノも手先から生まれるメロディーの数々に翻弄され、アニメの線が濃くなると同時に音も豊かになっていくシーンは身震いしました。ドラムも最初はシンプルなビートだったのに、終盤になってくると技術の上達を身をもって感じることができ、滲み出る汗は観ている側もかいてしまうくらいの情熱がそこにはありました。映画内の観客たちと一緒に声を出して盛り上がりたいと思えるレベルの演奏が最高でした。
ストーリーも原作の第一部をぎゅっとまとめているはずなのに、物語としての完成度が高くて、きっと製作陣の取捨選択が上手いんだなと思いました。宮城から上京してきた主人公・宮本大がジャズバーで圧倒的なプレイを見せた沢辺雪祈と、上京して転がり込んだ家の家主の玉田俊二と共にジャズバンド「JASS」を結成し、ジャズミュージシャンの目指すべき舞台へ向かい邁進する物語になっています。とてもシンプルかつ王道ですが、これが青年3人たちの成長譚として抜群に面白くなっています。
キャラクターも熱血感の大、天才のように見えて努力の塊の雪祈、0からドラムを始めて仲間との絆を大切にした俊二と3人の個性が良い具合にぶつかり合っていて良かったです。この作品を観て思ったのが、ジャズのバンドってそこまで聞かないなと思いましたが、メンバーは入れ替わり立ち替わりが多いからロックバンドのように一つの形で長く続けていくものとは違うんだなと同じ音楽でも形の違いを感じることができました。大の独り立ちを見送る2人も相当な決意だったんだろうなと思います。
なんとなく雪祈の事故のシーンは予測できたのでやっぱりかという感じはありましたが、命があるだけでも他の作品よりも救いがあったのは良かったです。
劇中でおそらくその後の俊二や恩師たちの映像が流れるのは、第二部以降の物語とバランスよくくっ付けているのも巧みな作りだなと思いました。これは第一部を見てから第二部にまで手を出してしまいたくなるレベルです。
少し残念だったのが、モーションキャプチャーを用いて作られた演奏シーンが少し前のゲーム映像のような古臭さがあったのが残念でした。せっかくの演奏シーンよりも映像の粗さに目がいってしまうシーンが多く、1人だけを映すシーンとかはまだしも3人全員が映るとどうしてもそこが気になってしまいました。もちろん手書きが難しいのは重々承知で贅沢な事を言っている自覚はあります。
映像化されるかされないかで少し前から騒がれていましたが、最高の形でのアニメ映画になってくれました。製作陣の熱意には頭が上がりません。ジャズ体感ムービー、これはぜひ劇場へ。
鑑賞日 2/21
鑑賞時間 10:00〜12:10
座席 P-14