「そこそこの予備知識が要求されるが、それでも今週はおすすめ(参考知識入れてます)」デリシュ! yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
そこそこの予備知識が要求されるが、それでも今週はおすすめ(参考知識入れてます)
今年259本目(合計535本目/今月(2022年9月度)2本目)。
ここの紹介などにあるように、ある程度は着色はされていると思いますが、史実に基づくものなのであることないこと描けず、淡々とストーリーは進みます。
去年だったか、モロッコかどこかでパンを作る映画(名前忘れた…)があったと思いますが、それに近い「料理映画」というところです。
ただそれだけでなく、やはりひねりは入っていて、「とある理由」で宮廷から追い出された主人公の元にある女性が料理を学びたいと訪れ、最初は何だろう?と思いきや、実はこの女性に秘密があり、また追い出した宮廷側にもいろいろな思惑があり…と進みます。
ちょっと高めの知識が要求されるかな…というところです(映画内での説明がない)。全般通じてフランス語なので、フランス語が聞き取れれば何とか補えるのかもしれませんが、そこまでできるのはかなり限られるのでは…というところです。
やや気になる点もあるものの、この点を減点対象にするとネタバレになる上、引いても0.2程度でそれでもフルスコアあるので、減点なしにしています。
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(▼参考/映画内で求められる知識)
・ ジャガイモやトリュフが貴族に好まれなかったのはなぜ?
→ フランスは今日にいたるまで典型的なキリスト教文化がありますし、当時はだれもが信じていた時代でした。一方で現在にいたるまでの科学技術はなくても、ルネサンス時代以降に芽生えた、「初歩的な科学技術・知識」というものは当然存在はします。
それでもやはりキリスト教文化が優先されたのがフランスです。キリスト教文化では、「地上と空とでは空のほうが高貴な存在」として扱われます(このことは、イタリアのダンテの「神曲」に顕著にあらわれます)。したがって、クロスボウでも何でも使って撃ち落とした鳥類のほうが「貴族にあう食材」であり、逆に映画内でも登場する「ジャガイモ、ニンジンやトリュフ」は非常に「下品な食品」として扱われていたのです(ジャガイモは、毒の処理という論点もあった)。特にトリュフにはじまる「キノコ類」はジャガイモにも満たない存在で、「食いたいなら好きにしてもいいし誰も文句は言わない」というほどの扱い(逆に、この当時は農民などが普通に食べていたし、税金を取るだの何だのという話すらなかった)でした。
※ ただ、15世紀ごろになると、イタリアでも「これは美味」ということで、貴族でも「宗教と食事は考え方を分ける」という人もでてきました。これはイタリアからトリュフ文化がわたったフランスでも同様で、圧倒的にキリスト教の教えが徹底されていた当時でも、「宗教と食事を分ける」という考え方を持った貴族がお抱えシェフに命じて調理させ、こっそり食べていたこともあります。ただし、ジャガイモと同様、一般的に認知されるには、さらに数十年を要しています。
・ どの貴族もカツラをしていたのはなぜ?
→ 当時は、髪の毛がどうであろうが(ツルツルでもフサフサでも)、「カツラをする」というのが貴族のステータスで、(ツルツルでもフサフサでも)それを取ろうとする行為自体が、貴族を侮辱する行為として扱われていた、という事情です(国は違っても似たような文化は当時の各国にありました)。
※ ですので、世界史の教科書などで貴族を描いた絵画などを目にする機会は結構ありますが、「ハゲた人」がほとんどみたことがない、というのはこうした事情です。
・ 映画のあと、レストランの文化はどうなったの?
→ 映画内でも出るように、当時はレストランという概念が存在せず、いわゆるシェフやそれに類するものは国王にせよ貴族にせよ、お抱えの存在でした。
しかしフランスでは(この映画にも出るように)まもなくフランス革命がはじまり、ナポレオン戦争を経て混乱期を迎えると、貴族もシェフを経済的に雇い続けることができなくなり、このころ(ナポレオン戦争が終わった当時ごろから少しずつ)から、シェフがフランスはもちろん各国に散り散りになり、今でいう「本格的に」レストランという概念が「実際に」(お店を構えるなどの現実の行為)できるようになりました。
土の中にあるトリュフを探し出すのは、豚のような記憶があります。故に貴族が豚扱いするなと怒ったと私は解釈しました。或いは、じゃがいもは豚の餌だったかも。
史実と脚色を入れ交えて、面白くしています。弟子入りの理由が復讐するためとは、多分創作ですね。
立ち読みしたパンフレットに、山本益博がフレンチレストランは、旅籠屋(オーベルジュ)から始まったと解説していました。
いろいろ、勉強になる映画でした。