劇場公開日 2022年12月9日

「希望というテーマが一貫して描かれている」ラーゲリより愛を込めて 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0希望というテーマが一貫して描かれている

2024年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 今作は劇場公開時に観たのだけど、レビューを書いていなかったため再鑑賞した。前回観たときには感動したが、改めて観てどう感じるかと思ったが、やはり胸を打つ傑作だ。

 シベリア抑留の過酷さは山崎豊子の小説『不毛地帯』でも描かれていた。懲罰として営倉に閉じ込められ南京虫に食われたり、ラーゲリ内で共産主義運動が起こり日本人にもソ連側におもねって特権を得るものが出てきたりしたのは今作と同じだ。また、『不毛地帯』では過酷な労働から逃げたいあまり、自ら身体障害者になる者もいて、シベリア抑留がどれだけ凄惨かを物語っていた。それでも収容者達が生きていけたのは、今作のテーマでもある希望があったからだ。二宮演じる山本の言動を通じて、その希望というテーマが一貫して描かれているところが、今作の秀逸なところだ。彼の信念は、絶望の淵に立たされている者達に対してさえ希望を芽生えさせた。

 前回鑑賞時と同様に、特に印象に残っているのは野球のシーン。抑留者の荒んだ心を癒やす一時で、スポーツを通じて人と人とのつながりの温かさを感じられたんじゃないだろうか。そんな彼らの希望でもある野球の権利を守るために、体を張って抗議した山本の信念の強さに頭が下がる。

 また、今作の魅力は二宮の演技力に依るところも大きい。『硫黄島からの手紙』のときの演技も素晴らしかったが、今作でも熱演していた。

根岸 圭一
レントさんのコメント
2024年10月20日

コメントありがとうございます。本作はテレビドラマとして見るぶんにはいいのですけどね。若い人があの時代に興味を持ってもらう上での入門的な作品としてはアリだと思います。

レント