「極寒での過酷さが足りない」ラーゲリより愛を込めて TRINITYさんの映画レビュー(感想・評価)
極寒での過酷さが足りない
実話を元にした今作
戦争捕虜として極寒のシベリアで過酷な年月を過ごした人達の実話なので、ストーリー的には当然泣けるのだが、泣かされながらも何故か白ける不思議な映画だった
演者の皆様の芝居はとても素晴らしかったです
主人公は二宮くんで、語り部は松坂桃李
脇を固める重要人物として安田顕と桐谷健太、中島健人
語り部である肝心な松坂桃李の人物描写が足りないせいか、途中から出番の増えてくる安田顕と桐谷健太の濃いキャラに語り部が食われてしまっていないだろうか
松坂桃李が卑怯者を脱却する大事な場面での説得力が不足して、気持ちが盛り上がりそびれたのが残念だ
そして何より極寒での過酷な環境の描写が足りなさすぎるせいで、色々もったいない事になっている
極寒の過酷な状況で苦しみ苛まれ、多くの人が精神を病むほどの荒んだ状況だったのではないか
そんな過酷な状況にも関わらず希望を捨てずに生きるからこそ主人公が輝く映画であるはずなのに、過酷さが足りないせいで輝きが鈍ってしまっている
捕虜が小綺麗で、寒そうにしてないのが何よりも気になってしまった
マイナス40度を超えないと作業は中止にならない、そんな説明台詞の中作業する人々
マイナス20度の手足も凍ってしまいそうな寒さの中で働いている過酷な状況を人が倒れだけの演出ってどうなの?
マイナス20度の野外で働いてる人達に全然見えなかったよ
リアリティ足りなさすぎません?
往年の名作「八甲田山」のリアリティさを知ってると、どうもね
二宮くんの芝居は素晴らしかったが、皆から慕われる人物である場面をもう少し入れて欲しかったな
それぞれのキャラクターの描写はしてるのだか、なんだか平面的で二宮くんとの関係性の深まりがいまひとつで残念だ
それぞれが遺書を持って家に来る大事なラストのパートで泣かされながらも、演出が気になって気持ちが白けていると言う摩訶不思議な状況
一番盛り上げてくれたのは犬のクロだったかも
夏に観た野田秀樹先生の舞台「Q」のエンディングパートにて、ロシアの収容所で精神が荒んで行く人々の見事な様とどうしても比較してしまってあれこれ上げてみましたが、きっと、とっても泣ける良作映画ですよ